優良取組事例

産休・育休等から復帰する人材が
育休前と同じように
業務に打ち込むため
幅広く研修や支援を実施


東濃信用金庫/多治見市

東濃信用金庫には、産休・育休中の職員を対象に設立した「カンガルーポケットの会(以下、「カンガルーP」という。)」がある。2カ月に一度、子どもとともにカンガルーPに参加し、金庫内情報等を共有。現在、58店舗のほぼすべてに産休・育休取得経験者がいる。会発足から9年を経た今、復帰者を受け入れる支店の支店長にカンガルーPを見学する取り組みを始めている。また、県内の異業種とも意見を交わしながら、多様な人々にとってより働きやすい環境の整備を進めている。

家事・育児と両立できる環境を
金庫内のイクボスとともに整備

 人事部人材開発課専任役の横山幸子さんが「出産を機に退職する人は、ほとんどいなくなりました」と話す通り、職員が産休・育休を経て復帰するための環境が約10年をかけて整備されてきた。きっかけは、横山さん自身の経験が大きい。入庫から30年以上が経つ横山さんは、仕事を続けながら3人の子どもを育てた。信用金庫の仕事が好きだったこともあるが、「がんばれ!」と背中を押してくれた上司の存在があって続けられたと振り返る。
 縁あって2009年に人事部人材開発課勤務となり、自身の経験を活かしてもっと女性職員が働きやすい会社にしたいと考え、2010年に育休者の復帰支援のためのカンガルーPを立ち上げた。昨年度、育児休業を取得した女性職員は42人である。
 その後、上司が「育児と仕事を両立している君がリーダーとして、今後、女性も管理職をめざせるように扉を開いてほしい」と言葉をかけてくれたことをきっかけとして管理職試験に挑戦し、現在は専任役として職員の教育に邁進している。

2カ月に一度の研修で悩みを共有
双方が復帰に向けた準備を進める

 カンガルーPは、2カ月に一度、約20人の育休者が子どもと参加して金庫内情報や育児の悩みなどを共有している。事務・規定など仕事で必要な情報の提供のほか、資格試験や通信講座の申込、復帰直前のオペレーション体験などを実施。理事長および理事のメッセージを伝える役員メールマガジンも回覧している。
 最新の取り組みとして、育休中に変更した規定などをまとめた資料を入れたパソコンを貸し出し、復帰に向けて事前準備ができる環境を整備。復帰前に資料に目を通すことができるので、変更点の理解の進度も早く現場への復帰に役立っている。

会発足から約10年で認知度アップ
産休・育休からの復帰経験者増

 現在、カンガルーP発足から9年が経過し、活動内容も広く知られてきた。また支店に1人は復帰者がいるため、女性の復帰について当事者もまわりも理解が深まっている。金融業界の現場は、常に即戦力を求めている。復帰前の勉強会は大きな成果を発揮し、参加者も意欲的だ。復帰者と受け入れ者の双方にとって、ストレスのないやりとりが展開されている。

支店との相互理解を深め
誰にも働きやすい職場に

 カンガルーPへの参加者が抱く不安は、「仕事についていけるか」、「育児と仕事の両立ができるのか」がほとんど。カンガルーPの参加者には2人目、3人目の母親もいて、経験者の話を聞くことで、前向きな気持ちを持つことができている。また、復帰した支店にも復帰経験者がいるため、大きな安心を与えている。
 「今後は、受け入れる支店の研修にも力を入れていきたい」と横山さんは展望を話す。「もちろん、復帰者が仕事や周辺に対して甘えを出してはいけません。双方が理解することこそ、重要です」と力を込めた。育児と仕事を両立させるのは、非常に大変であると経験者の横山さんは理解している。だからこそ、何かあったときは相談にのれる環境を整備していきたいと、優しい笑顔を見せた。「少しでも悩みを共有してあげたい。女性として、仕事の現場でも優しさや思いやり、共感する気持ちをもって、周囲の悩みにも耳を傾けられる人材を育てていきたい」としめくくった。