優良取組事例

「人財が競争力の源泉」
多様な価値観を認め、
働きやすい職場環境の整備で
社員一人ひとりが力を発揮


三井住友海上火災保険株式会社 岐阜支店/岐阜市

国内損害保険シェアナンバーワンの「MS&ADインシュアランスグループ」の中核事業会社として、業界をリードしている三井住友海上火災保険株式会社。「人財が競争力の源泉」という考えのもと、「働き方改革」「健康経営」「プロフェッショナリズムの浸透による専門性の強化」を推進。性別や年齢、ライフスタイルなどの違いに縛られることなく社員全員が活躍できる会社の実現を目指し、さまざまな取り組みを展開している。

2006年女性活躍推進をスタート
取り組みが認められ受賞歴多数

 厚生労働省による「えるぼし」認定、経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100選」受賞など、女性をはじめ多様な人材が活躍しやすい企業として評価されている三井住友海上火災保険株式会社。こうした活動が始まったのは、人事部に女性活躍推進チームを設置した2006年度のことだ。当時は、出産や育児との両立を中心に支援をしていた。しかし、2009年度の業績悪化を受け、2011年度から「役割イノベーション」を実施。社員一人ひとりの役割を見直し、生産性や競争力の向上を目指した。
 2年間の意識改革を経て、2013年度には人事制度を改定。総合職、一般職という職種を無くし、転居転勤の有無によって「全域社員」と「地域社員」に区分した。それまで営業は総合職の男性で、女性は一般職として事務作業を担っていたが、この人事制度の変更によって、女性社員の職域は拡大していった。
 現在地域社員は、原則転居のないエリア型と、隣接都道府県への転勤の可能性があるワイドエリア型の2種類から選べるようになり、より柔軟に働き方を選択できるようになっている。

ファミリー制度により
職場全体で新入社員を育成

 新入社員制度として、2019年度からファミリー制度をスタートした。これまではブラザー・シスター制度を導入し、新入社員一人に対して一人の先輩社員が付いて、業務指導やメンタル面でのフォロー役を担っていた。
 しかし、「指導役が固定されているので、担当の先輩社員が不在や多忙であったとしても、ほかの社員に相談しづらい」「負担が一人の指導担当に偏ってしまう」などのデメリットを踏まえて、職場メンバー全員を「ファミリー」と位置づけ、全体で新入社員を育てようと制度を変更。メインの指導担当者(ファーストブラザーシスター)を任命し、ファーストブラザーシスター以外の社員も役割を分担しながら教育へ関わる仕組みにした。
 新入社員からは「ファーストブラザーシスターの不在時は、ほかの先輩社員が声をかけてくれるので相談しやすい」「色々な人から意見を聞けるので、自分に合った業務方法を考えられる」、ファーストブラザーシスターからは「職場全体で指導業務を分担しているので、負担は増えたとは感じない」といった声が届いており、開始1年目ながら、すでに一定の効果を上げている。

原則19時前退社ルールが広まり
残業時間は全店平均で10%減少

 日本社会全体で働き方改革が進む中、2016年から働き方改革に着手した。翌年「遅くとも原則19時前退社ルール」を導入し、やむを得ない理由がある場合を除いて、19時までの退社を徹底。家族と過ごしたり、趣味や自己研鑽に時間を費やしたりと、ワークライフバランスの向上につながっている。
 ルールの実現に向けて、「無線LAN(Wi-Fi)ルーターの配備」や「POPツールの配布」などを通して環境を整備。POPツールは退社予定時刻を卓上カードで可視化するもので、限られた時間で働く意識付けができるだけでなく、業務の指示・依頼をする際の参考にもなっている。
 業務の効率化には、外出先で隙間時間を活用できるシンクライアントPC導入の影響も大きい。シンクライアントPCはクラウド上に重要なデータを保存し、端末にはデータを残さないため、セキュリティの問題上難しかったモバイルワークが可能になっただけでなく、在宅勤務制度の推進にもつながった。
 ルール化から2年が経った現在、残業時間は取り組み前よりも全店平均で10%減少。岐阜支店では、2018年12月末の効率化指標において、全国平均比160%を達成した。

年々増加している女性管理職
21年度には比率を 15%以上に

 「空いた時間を使って自己研鑽に励みたいものの、何を学んだらよいかわからない」という社員の声を受けて、「成長MyNavi」という学習ポータルサイトを開設した。ビジネスの基本からTOEICまで幅広い内容で、自ら学び成長しようとする社員の意欲を後押ししている。
 また、産育休取得前・中・後の3段階で行う「ワーキングママ支援プログラム」の一つとしても、無料で使えるe-ラーニングを提供。産休や育休中の社員の業務知識やスキルの維持・向上をサポートしている。
 「ワーキングママ支援プログラム」ではe-ラーニングのほか、上司との面談や、子育て中の社員を集めたウェブ会議などさまざまな取り組みを行っている。中でも2018年から始めたのが「MSクラウドソーシング」だ。育児等の合間を有効活用して自宅で臨時就業できる制度で、職場とのコミュニケーションを通じ、円滑な職場復帰に役立っている。
 女性社員が就業を継続しやすい職場環境づくりはもちろん、将来を見据えたキャリアアップ支援にも力を入れている。女性管理職候補層を対象に、スキルアップやマインドの醸成など、管理職を担うための研修を実施。女性管理職は着実に増えつつあり、2021年度には女性管理職比率を 15%以上にすることを目標として掲げている。