岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

持つべきものは仲間
私はたくさんの人との縁に恵まれ
一人ではできないことが
たくさん実現できている


土岐市女性連絡協議会会長
三輪やよい(みわ やよい)さん(土岐市)

【2018年3月23日更新】

学校栄養士として、食中毒が起きた給食センターの改革に調理員たちと取り組んできた三輪やよいさん。「食中毒は人間関係がぎくしゃくしていると起きる」という教訓を得て、「基本は何事も人」と実感しているそうです。現在は、「女性の会をなくしてしまったら、男女共同参画ではない社会になってしまう」という思いから、「土岐市女性連絡協議会」の会長として、社会貢献に全力投球の日々を送っています。

徹底した衛生管理に取り組み
全職員で給食センターを改革

 私は定年まで、給食の現場で学校栄養士として働きました。平成元年に、土岐市学校給食センターから瑞浪市学校給食センターへ異動。その後平成5年に、土岐市学校給食センターで食中毒が発生し、2,700人が感染しました。
 平成8年に、再び土岐市学校給食センターへ異動しましたが、食中毒の原因が分からず、職場への足取りが重い日が続きました。しかし、同僚だった調理員さんから「これがあなたの仕事」といわれ、吹っ切れました。
 また、平成8年はO157が全国的に発生した年で、土岐市学校給食センターは大がかりな改革が必要になりました。「改革をやるのか?やらないのか?」と問うと、50人の調理員さんからは、「やろう」「やりたい」との声が返ってきました。そして「やるなら徹底的にやろう」という結論に至ります。平成9年には当時の文部省から「岐阜県衛生管理推進地域指定事業」に取り組むように通達があり、徹底した衛生管理をスタートさせました。
 「土岐市学校給食センターの問題はどこにあるのか?」「その問題をどうすれば解決できるか?」「文部省の『学校給食衛生管理の基準』に適合するにはどうすればいいか」を試行錯誤。夜遅くまで現場と意見交換しながら、事故を起こした給食センターの名誉挽回を目標に、全職員が一丸となって取り組みました。平成9年には、文部省発行の冊子「これで防ごう食中毒 学校給食における改善したい施設設備・作業50例」に、土岐市学校給食センターの実践内容が採用され、「学校給食調理環境改善事例集」の手本としても取り上げられました。

文部省からの委託を受け
全国の給食現場の改善指導も

 平成12~15年までは、文部省から「学校給食における衛生管理の改善に関する調査研究協力者会議・衛生管理推進巡回指導者」の委託を受け、食中毒を起こした全国の給食施設の改善指導に参加させていただくことになりました。文部省が設けた「学校給食衛生管理の基準」を遵守していたのに、食中毒を起こしてしまった給食センターに、各都道府県の衛生部が出向いて原因を究明し、改善指導を徹底します。私の仕事は、「学校給食衛生管理の基準」と現場の実態とを照らし合わせながらチェックすることと、食中毒の事故から1~3年後に見直しの再チェックをすることでした。
 食中毒を起こした全国の給食センターを訪ねて感じたのは、「食中毒は、人間関係がぎくしゃくしていると起きる」ということです。再チェックに行くと、必ず、当時は人間関係で何かがあったと聞きました。私はその度に、「自分の職場は人間関係に恵まれていて幸せ」だとしみじみ思い、帰路についたものです。土岐市学校給食センターの改革は、50人の調理員たちの人間関係が円満で、強い絆で結ばれていたからこそ、成し遂げることができたのだと思います。

男女共同参画を目指し
「土岐市女性連絡協議会」の活動に尽力

 平成19年に定年退職。これまで自分が受けたご恩返しができればと、平成21年に「土岐市女性連合会」の会長を引き受けました。一時は存続が危ぶまれる出来事に直面し、悔しい思いも味わいましたが、別の地域の男性数人から「頼むから女性の会を解散しないでほしい」と頼まれ、気を取り直し、平成22年に「土岐市女性連絡協議会」(名称変更)を立ち上げました。各町の女性の会を基礎にし、土岐市の成人女性全員が会員です。実働は200人ほどで、会の門はいつでも開けています。
 女性としてはもとより、市民、消費者として、日々の暮らしの視点に立った活動と、よりよい地域社会の発展に貢献することを目的にしたボランティア活動が会の柱となっています。環境、福祉、男女共同参画、青少年健全育成、安心・安全な地域づくり、子育て支援、高齢者福祉の推進、各種団体との交流・連携などに取り組み、視野を幅広く持つようにしています。
 例えば環境の分野では、水環境の改善を実践。河川に流す洗剤の量が減らせるように、アクリル毛糸で編んだたわしを活用しています。岐阜県で国体が行われた2012年には、岐阜県のキャラクター「ミナモ」の顔のアクリルたわしを、会員25人で800個近く作成しました。土岐市を訪れた選手全員に、「清流の国ぎふ」の象徴として渡しました。小学校の放課後教室に出向き、子どもたちにアクリル毛糸のたわしの編み方も教えています。5年ほど前から始めた清流調査では、毎年冬に妻木川と下石川、肥田川で、簡易水質調査キットを使ったパッチテストを継続して実施し、水環境の改善が確認できるようになっています。
 安心・安全な地域づくりでは、防災をテーマに活動しています。例えば災害時の炊き出しに必要なおにぎり作りの訓練を実践しています。一升(1400グラム)のご飯から20個のおにぎりを握るのを基本に、中学生とにぎやかに取り組んでいます。
 昨年は、避難所開設を想定したシミュレーションを実施。避難所の通路の作り方やトイレの設置、介護が必要な方への対処など、避難所で突発的に起こる一つひとつの出来事にどう対応するのがベストかを、講師を招いて疑似体験をしました。
 これらの活動には、「女性の力を発揮して、社会に貢献したい」という思いで取り組んでいます。

何事も人間関係が基本
仲間のおかげで今の私がある

 母が料理好きだった影響で、学校の栄養士になりました。中日文化センターの講師をしていた竹本英美先生から20年近く料理を学ばせてもらい、学校給食の献立に反映させていただきました。
 「土岐市女性連絡協議会」の会長を退いた後は、家でゆっくりしながら編み物や裁縫、花作り、庭の剪定、旅行がしたいと思い描いています。介護が必要な夫との2人暮らしで、2人の子どもは独立して離れて暮らしています。田畑があるので、目指しているのは野菜と米、栗の自給自足です。70歳になりましたが、まだまだ元気でいるつもりです。
 自分の人生で学んだことは、「基本は何事も人」ということです。人と人の絆をどう構築するかで、全てが決まると実感しています。学校栄養士として最初に勤務した土岐市の下石小学校は給食室の隣にプールがあったので、子どもたちと一緒に泳いだことも思い出の一つとなっています。その頃の小学生たちが、社会の一線で活躍しているのを知った時は、とてもうれしくなりました。
 持つべきものは仲間。私は、たくさんの人との縁に恵まれました。自分1人ではできないことが、たくさん実現できています。感謝の気持ちでいっぱいです。