岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

作り手と使い手のつながりを
地域のつながりに発展
これからはその輪を
次代にも広げていきたい


中津川made(なかつがわめいど) 代表・ハンドクラフトRings(りんぐす) 代表
樋田真紀(といだ まき)さん(中津川市)

【2018年5月11日更新】

樋田真紀さんは、母から教わった手芸を育児の合間に再開し、インターネット販売してきました。しかし、使い手の顔が見えない販売方法に虚しさを感じ、クラフトイベントに参加。使い手や地元中津川の作家仲間とつながっていきます。その輪を広げて地域のつながりにしていきたいと、クラフト材料と紙モノ雑貨の店舗を市内にオープンさせました。

母親の影響で始めた手芸
結婚後にネットへ出品

 母の趣味は手芸で、子どもの頃から私の暮らしは母の手作りアイテムにあふれていました。そんな母を見て、私もサンタクロースにオモチャのミシンや編み機をお願いし、自由研究には手芸作品を提出するなど、手芸を趣味にしていきます。中学1年生の時、ウォークマンを入れる巾着袋をつくったのを、今でもよく思い出します。
 高校卒業後は電力会社の設備企業に就職。24歳で夫と結婚して翌年に第1子を出産しました。育児の合間に、趣味の手芸を改めて始めたら楽しくて、育児のストレスが解消できました。試しに布製のポーチやアクセサリー、バッグなどをインターネット販売すると思わぬ反響が。「意外と売れるものだなあ」と気分を良くして出品し続けました。でも何かが物足りない。「実際の商品の色がネットと違う」などのクレームや、理由がわからず返品された時も、メールや電話などに対応しても相手の顔が見えず、行き違いや誤解が生じて落ち込みました。また、インターネット販売が盛んになると価格競争が起こり、作品の価格ばかりか自分の仕事の価値まで下がった気がして悔しく思いました。

顔の見える売り場を求め
クラフトイベントに参加

 インターネットで販売すると、どうして物足りないのか。振り返ってみて思ったのは作り手と使い手のコミュニケーションがなかった点でした。ネットでは顔を合わせて、作品の魅力や価値を確かめ合い、共有することができないのです。やはり「対面だ!」と発起して近郊のクラフトイベントに出品するようになりました。
 最初はお客様が手に取ってくれるだけでうれしかったです。会話やおしゃべりをしながらも、手に取ったポーチやバッグを「あっ開けた!」「値段を見てくれている!」と、一つ一つの動作にドキドキ心踊らせていました。初めて作品を買ってもらえた時の感動は忘れられません。
 まちで私の作品を使ってくれている人を見かけたこともあります。その時は、うれしくて倒れそうになりました。2年前につくったものでしたが、大事に身につけてくれていると思うと本当にうれしかったです。時々、もうボロボロなのに「ここ直してくれる?」と作品を持参するお客様もいて、そんな時に作り手と使い手とのつながりをしみじみと感じます。
 このつながりを「地域の人と人とのつながりに発展させることはできないか」と考えていたところ、各地のクラフトイベントで知り合った同郷の中津川出身の作家たち4人が賛同してくれました。平成21年にグループ名に地元愛を込めた「中津川made(なかつがわめいど)」を結成し、翌年から市内でクラフトイベント「中津川クラフトフェア」を主催。その後も定期的に開催し、平成29年6月の17回目のフェアには50ブース以上が参加し、約1000人が動員できました。作家同士、地域の人々を巻き込んでつなぐという目的も果たせるようになっています。

交流が生まれる場所に
地域の輪を広げる店をオープン

 中津川のクラフトフェアには、作品を購入したい人ばかりでなく、手芸好きや、もの作りが好きな人が大勢集まり、材料、資材の需要があると感じました。また恵那市の児童センターのボランティアで入園・入学用アイテムのワークショップを開催したときには、「この布、どこに売っているの?」などの質問が多かったです。
 そこで「作りたい人が集まるお店を開こう」と「中津川made」の仲間の一人と共同経営で開業を目指し、テナントを探しましたところ、市の空き家活用社会実験プロジェクトで古民家を改装した貸しスペースがあることを知りました。その空間コンセプトである「地域交流を生み出す場所」も私たちにぴったりだったのでそこでの開業を決意。準備を進めて店名を考えていたとき、「好きが高じて一人でちまちまと始めた手仕事が人との関わりを求めたことで私に仲間をつくってくれた。地元の人々ともつないでくれたのだ」と思いました。これまでのストーリーと、ここからもっと地域の輪が広がるようにという二人の思いを込めて店名は「ハンドクラフトRings」に決定。今年8月にクラフト材料と紙モノ雑貨の店をオープンさせました。

やりたいことがまだまだいっぱい
支えてくれる家族に「ありがとう」

 店での仕事も活動もスタートしたばかりですが、店を持ったことで私にとって手芸はもう趣味ではなく、仕事になりました。自分たちの作品や取り扱う商品に一層責任をもって取り組まなければと思います。一方で地域の輪をどう広げるのか、何を企画していこうかと、私たち自身が一番ワクワクしています。仕事なのですが、ワクワクしないと続かない。大事なことだと思います。
 今後優先したい企画はワークショップ。作りながらコミュニケーションを図ることができるのが魅力です。もの作りの楽しさを子どもたちに伝えたいので、学童の工作・もの作り教室や「子ども手芸クラブ」も設立したいと思っています。地域をつなぐ活動に役立つ資格があるなら勉強も始めたいですし、これからもまだまだやりたいことがいっぱいあふれ出てくる気がします。そんな私を支えて応援してくれる、夫や家族の理解にもっと感謝しなければなりません。