岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

子育てしながら、勉強して
訪問美容の会社を立ち上げました
利用者に寄り添ったサービスで
お客様に笑顔を届けたい


訪問美容Animo
丹羽貴子(にわ たかこ)さん(郡上市)

【2018年6月19日更新】

美容師の丹羽貴子さんは、3年前、訪問美容を手がける「Animo」を設立しました。「Animo」は、相手を励ますときに用いるスペイン語に由来。頑張る誰かをそっと支えてあげられる存在になりたいと名づけました。高齢化が進む郡上市を拠点に細やかな美容サービスを展開する丹羽さんは、顧客の思いを汲み取るべく、「日々勉強」と気概を持って精力的に取り組んでいます。

「こんな素晴らしい仕事は他にない」
紆余曲折を経て再び美容師の道へ

 美容師になるのが幼い頃からの夢。中学を卒業したらすぐにでもヘアサロンに就職したかったのですが、知り合いの美容師の方に、「社会教養も必要だから、高校には進学すべき」とのアドバイスをいただき、高校へ進学しました。高校進学後は地元のヘアサロンでアルバイトをしながら、美容師への夢を描いていました。
 都会への憧れもあって、高校卒業後は大阪市にある美容学校へ進学。念願の美容師への道を歩み始めますが、「これが本当に自分の目指したいことなんだろうか」と悶々とする日々を送ります。私は、白黒はっきりさせたい性分。「せっかく入学したんだから、卒業まで続けたら?」と説得する家族や友人の声を押し切って、退学を決意。専門学校中退後はフリーターとしてさまざまな仕事を経験しました。
 その後、21歳で帰郷。高校時代にアルバイトしていたヘアサロンで働き始めると、「美容師になりたい!」という熱意が再び湧いてきたのです。この仕事のやりがいは、自分の技術がお客様を美しくできるだけでなく、さらに喜んでもらえること。まわり道をしましたが、さまざまな職種を経験したからこそ、美容師の仕事の素晴らしさに気づけたんだと思います。働きながら通信教育で学び、美容師の免許を取得しました。

介護職員初任者資格を取得し
サービス内容の充実を図る

 2014年に、訪問美容を提供する「Animo」を起業。病気や怪我、産前産後などで外出が難しい方のご自宅に伺って、ヘアカットなどをしています。現在はAnimoの代表を務める傍ら、高校時代からお世話になっているヘアサロンでパート勤務をしています。
 起業のきっかけは、10年以上前にさかのぼります。当時、スタイリストとして、お子さまからご高齢の方まで幅広い年齢層のお客さまを担当していたのですが、年配の方の来店が途絶えることが度々起こりました。「自分の施術に問題があったのではないか」と案じていると、病気や怪我が原因で、外出できなかったことが原因だったと知りました。
 そんな中で出合ったのが、美容師がお客様のご自宅で施術を行う「訪問美容」を紹介する新聞記事です。「私のしたいことは、これだ!」と強い衝動が沸き上がりました。
 27歳で結婚。着付けやブライダルヘアメイクなどを学ぶなか、3人の子どもに恵まれました。3人目の妊娠中から訪問美容の勉強に着手。起業に関する知識も全くなかったため、産後の育児休暇中には郡上市商工会が主催する創業塾にも通いました。
 さらに起業後も、勉強の日々は続きました。平日は子育てをしながら介護の勉強に時間を費やし、週末はヘアサロンで勤務。念願の介護職員初任者の資格を取得しました。
 介護資格の取得は義務付けられてはいませんが、満足いただけるサービスを提供するためには介護の知識は不可欠であると考えます。お客さまの中には、怪我をされている方や寝たきりの方もいらっしゃいます。サービス中は、シャンプー台に体を倒したり体の向きを変えたりと、お客様の体を移動させなくてはなりません。利用者の方が痛みを感じていないか、無理な体勢をされていないかなどの細やかな配慮が大切です。
 介護の技術や知識を得たことで施術中の安全性が高まっただけでなく、利用者の方やそのご家族にも安心していただけるようになったと感じます。

高齢化が進む郡上市において
高まる訪問美容のニーズ

 同じ美容とはいえ、一般的な美容室と訪問美容での施術では、必要になる機材や顧客ニーズが異なります。お客さまのご自宅には、ハサミやクシのほか、染料やパーマ液などの薬剤、シャンプー台、排水用のタンクなどを持参。「私のためにこんなにも持ってきていただいて申し訳ない」と、お客様に気を遣わせてしまうケースもあるため、機材が大掛かりにならないよう配慮しています。機材は持ち運びが容易な折りたたみ式を、さらに機能性と安全性の双方を叶えたものを採用しています。
 訪問先によって家の広さや間取りが異なりますので、コンセントが近くにあるかどうか、寝たきりの方であれば、ベッドの周囲にスペースを確保できるかどうかを事前にヒアリングします。たとえ狭いスペースしかなくても、精一杯のサービスを提供したい。顧客ニーズに寄り添ったサービスを提供するために、この先もずっと勉強を続けていくんだろうなと思います。
 お客さまやそのご家族を笑顔にできるのが、この仕事のやりがいです。中には、訪問美容の日を指折り数えて楽しみにされている方もいらっしゃるんです。
 郡上市は高齢化が進んでいるので、今後、訪問美容のニーズが高まってくると思います。仲間を増やして、サービスのさらなる充実を図りたいですね。自分の都合にあわせて働けますから、子育て中の方にもおすすめです。

仕事と子育ての息抜きに
娘と始めた空手でリフレッシュ!

 11歳(長女)・7歳(次女)・4歳(長男)の3人の子どもがいます。上の2人が小さい頃は母に子育てをサポートしてもらい、さらに保育園への送迎や託児を地域会員に援助していただく「ファミリー・サポート・センター」を活用。「ファミリー・サポート・センター」は、今も利用させてもらっています。仕事に子育てに多忙な日々ですが、リフレッシュするひとときは欠かせません。体調がすぐれないときはアロマオイルなどを用いてセルフマッサージ。子どもと一緒にオイルを選んで、バスタイムを楽しむこともあります。
 今年は、長女と次女とともに空手を始めました。車を運転していても、寝ていても仕事のことを考えているタイプなので、空手に取り組む時間は無心になれる貴重な時間。止むを得ず欠席しなくてはならないときは、とても悔しいです。
 長女の夢は、美容師になること。着付けの様子を見ていて、着物や髪飾りの美しさに心を惹かれたようです。将来の夢についての作文を発表する長女を見て、思わず号泣してしまいました。「焦って夢を決める必要はないよ」と声をかけつつも、内心とてもうれしいです。