岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

私たちが暮らす街に
「孤独」を感じる人が
一人もいないように
そんな街づくりをしたい


NPO法人happy netみのかも代表
渡邉和代(わたなべ かずよ)さん(美濃加茂市)

【2019年5月14日更新】

東日本大震災をきっかけに発足し、子育てや暮らしに必要な情報を楽しくのびのびと共有する場を創出するNPO法人happy net。代表の渡邉さんは、あらゆる地域の課題と向き合い、大人も子どもも、多くの人とつながりながら生活できる街づくりに取り組んでいます。

東日本大震災をきっかけに
人とつながる重要性を知った

 happy netみのかも創設のきっかけは、東日本大震災でした。同じ年に第三子を出産した私は、子育てをしながらテレビのニュースで東北の様子を見ていました。震災後、放射能におびえながら育児に励む母親のことを考えると、とても辛かったのを覚えています。それでも、ニュースを見て遠く岐阜から心を痛めるしかできなかった。それが苦しかったですね。その年末、テレビ番組で歌手のみなさんが、『I love you & I need youふくしま』を歌っているのを見ました。それまで福島で子育てするお母さんたちに対し何もできずにいたけれど、「もう見て見ぬふり」はできない、何もしないと一生後悔すると思ったんです。
 そこで、美濃加茂にいても福島とつながる方法を考えました。被災地支援をしている人を紹介してもらい、安心して使える調味料など、福島の人たちが本当に必要としている物を仮設住宅に送ることから始めました。

支援を通して見えた
自身の子育て

 支援の方法を模索しているなかで、「保養合宿」として被災した子どもを預かって思い切り外で遊ぶボランティア活動を知りました。そこで、美濃市にある森林文化アカデミーで同じように合宿を実施しました。私の子どもたちも参加したのですが、「そういえば、うちの子も久しく外で遊んでいなかったな」と気づいたんです。地元で自然が残っている場所を見つけ、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、自然のなかで見つけた様々なものから新しい遊びを見つけるプレーパークを始めたのが、happy netみのかもでの初めての活動です。6人の母親でグループをつくり、開催しました。プレーパークは、いまも月に一度のペースで開催。大人も一緒に参加して、子どもの発見を見守っています。

必要だから開催する
知識や情報をシェア

 イベントは「必要である」から開いています。「母親だから」とか、「女性だから」というのではなく、子どもや自分、周りの人にとって必要な内容であるかどうかが重要。隣の街にある魅力的な講座やイベントが自分の住む街になければ、「私たちが開いてしまおう!」ということです。防災や子育てについて、必要な情報をおもしろく共有する方法を常に考えています。真面目な内容でも楽しいイベントであれば、より多くの人を巻き込めるのではないかと思います。
 もともと人と関わるのが好きで、いまは特別支援学校で教員をしています。高齢者や子どもとのふれあいが、自分にとってやりがいを感じるものでした。これまで子育てだけでなく、いろいろな地域課題に取り組んできました。これからは、地域のなかで「孤独」を抱えている人にも、もっと寄り添いたいと考えています。単発のイベントだけでなく、継続的に地域がもつ課題に向き合うことが大切。本当に困っている人や不安を抱いている人を継続的に支えていきたいです。人とつながることで、こんなに楽しくて満たされるんだということを、多くの人に味わってほしいですね。

仕事、子育て、NPOの3本柱
それぞれがバランスよく作用

 大学を卒業し、いったん企業に就職しました。「何のために働いているんだろう」という疑問を抱いたたことで退職し、教員の仕事を始めました。今は、特別支援学校に勤務しています。
 一人の生徒が輝くためのステージをつくるのは、1000人を動員するNPOのイベントを成功させるより難しい場合があります。反対に「happy netみのかも」でプレゼンテーションするとき、「学校のステージで成功しんたんだから大丈夫!」と、自分に言い聞かせます。そんなふうに、自分を奮い立たせることのできる状況が幸せです。
 「happy netみのかも」の仕事をしていてうれしいのは、私の子どもが「happy netみのかも」の企画するイベントを好きでいてくれることです。活動に忙しくて、自分の子育てがおろそかになるのではなく、子どもも一緒に楽しみにしてくれているのがうれしいですね。 「happy netみのかも」はメンバー同士の仲が良く、メンバーの子ども同士も、まるで兄弟のように育っています。そして、たくさんの子どもと大人がつながる機会がとても多くあります。「次のイベントいつ?」と聞いてくれたり、「僕もNPOを立ち上げようかな」なんて言ってくれたりするときに、やってきてよかったなって思います。
 以前、「happy netがあるから、美濃加茂を好きになった」と声をかけていただきました。とっても嬉しかったですね。
 法人化して3年が経ちました。ふわっとした思いで始めた活動でしたが、今では多くの人が関わるものになりました。「楽しくイベントを開こう!」とすぐに行動できる仲間に囲まれているので、今後も街の本当の課題に一緒に向き合っていきます。