岐阜県の東濃エリアでデイサービス事業を展開している株式会社ザイタックは、2008年から、産前産後休暇や育児休暇、職場復帰後の短時間勤務など子育て支援制度に着手。長く働き続けられる環境づくりに取り組んでいる。
優良取組事例
「社員を手放すのは
もったいない」と
働きやすい環境づくりのため
育児支援制度を確立
助け合いの心を社内に広げて
株式会社ザイタック/土岐市
優秀な人材の流出を防ぐべく
子育て支援の構築に着手
同社の小森健市社長が子育て支援に着手したのは、2008年頃。家庭と仕事の両立に不安を覚え、結婚を機に退職しようかと悩むスタッフの姿を見たことがきっかけだった。会社設立から約8年、社内の福利厚生などがまだ整備されてない時期だったという。「悩んでいたのは、新卒入社のスタッフでした。せっかく頑張ってきた従業員を結婚や出産で手放すのはもったいない。ライフステージの変化を経てもスタッフが働き続けられる環境をつくりたいと考えました」と、当時を振り返る小森社長。女性の社会進出をサポートする、特定社会保険労務士の本荘恵子さんとともに、支援制度の構築に取り組み始めた。
産前産後休暇や育児休暇、職場復帰後の短時間勤務制度などを導入したほか、社員やパートなどの雇用形態にかかわらず、保育料の半額(上限月額2万円)を会社が負担。さらに相談窓口を設置し、産休・育休を控えるスタッフに社内制度を伝えている。「妊娠が判明したスタッフに対し、保育料金の援助についてなどの子育て支援や、休暇制度の情報をわかりやすく明記した冊子を配布しています。相談しに来たスタッフの不安が少しでも解消できればいいなと思います」と相談窓口を担当する管理部門長の倉田里美さんは話す。
スタッフをつなぐ社内報
モチベーション向上の一翼も担う
子育て支援に着手して今年で10年。「支援事業は一朝一夕には成しえない。長い時間をかけて『困ったときはお互いさま』という考え方が社内に浸透してきた」と小森社長は話す。スタッフの意識改革に一役買っているのが、定期発行している社内報「ブレイングループ通信」だ。
東濃エリアの7カ所でデイサービス事業を展開している株式会社ザイタック。事業所が増え、スタッフ同士が顔を合わせる機会が少ないことから、社内誌の発行を思いついたという。「会社の一体感を育むためであり、『たくさんの人が育休後に復帰しているんだな』『資格取得のために頑張っている人がいるんだな』などと、自身の将来の参考にしたり、仕事へのモチベーションを高めるきっかけになれば」と、倉田さんは明かす。
中学校の学級通信をヒントに制作した社内報は、働くスタッフの写真をはじめ季節のイラストを多用した、温かみのある誌面デザインが特徴。新入社員紹介や資格試験合格者発表などのほかに、産休・育休取得者を顔写真とともに紹介している。社内報は、産休育休中のスタッフにも欠かさず送付している。
育休中のスタッフとの関わりを絶たぬよう、定期的な出社を促す取り組みも実施。「住民税の支払いや、職員健診、インフルエンザ予防接種などの機会を利用して、積極的に顔を合わせるようにしています。育休中のスタッフが連れてきた子どもの顔を見ようと、人が集まってきて所内が華やぎますね」。
10~60代までのスタッフで助け合う
さらなる支援を見据えて
育休取得者は全員が職場に復帰しているが、復帰後間もないスタッフにとって、子育て・仕事の両立に悩みはつきもの。同社では、子育てを終えた先輩スタッフが子育て中のスタッフへアドバイスを送るなど、風通しのよい職場環境が保たれている。
社内には親の介護に携わるスタッフも在籍。家庭の事情に合わせて午前中のみの勤務に切り替えるなど、シフトの自由度が高い。子どもの急な病気や学校行事のための休暇などにも、スタッフ同士が助け合って柔軟に対応する。
利用者に応じて一定数のスタッフを配置しなければならない介護施設。休みを希望するスタッフが重なってしまうと、運営がままならない。「学校行事や長期休暇時には、お互いに声をかけあって協力しています。ライフステージが異なる、10~60代までの幅広い年齢層が働いていることも、会社の強みですね」と小森社長は話す。
超高齢化社会の現代、介護業界は今後ますますの担い手不足が予想されている。「女性が活躍できる職場なので、女性にとってさらに働きやすい環境づくりに力を入れていきたい」と倉田さん。子どもの進学・学業への資金援助なども検討しているなど、さらなる支援を見据える。