優良取組事例

希望する働き方を実現できる
環境を整え、成長を後押し
管理職への登用で、女性の
さらなる活躍の場をつくる


株式会社介護社希望が丘/本巣市

グループホームとは、要支援2以上の認知症高齢者を対象とした地域密着型の介護施設だ。2000年に設立した株式会社介護社希望が丘は、揖斐川町にある「谷汲ひまわり」、本巣市にある「本巣ひまわり」、神戸町にある「神戸ひまわり」の3つの認知症グループホームを運営し、一人ひとりの利用者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送れるように支援している。職員の半数以上は女性で、家庭と両立しながら無理なく働ける環境を整えている。

時間外労働の削減と
高い有給取得率を両立

 職員人数は男性20人、女性57人の合計77人(平成31年1月現在)。認知症になってもその人の有する能力に応じた自立した生活が送れるように、また、利用者の想いを実現できる生活を支援していくために、職員人数、職場環境の充実を図っている。たとえば3人の職員でシフトを組める場合でも、4人配備することで、余裕を持った人数を配置。子どもの病気等による急な休みにも柔軟に対応できる体制を整えている。時間外労働時間の削減にもつながっており、月平均時間外労働時間は0.5時間だ。
 77.2%と高い有給取得率も特徴だ。シフト編成の際は、希望休の申告を受け付け、可能な限り希望を反映させている。これも、余裕を持った人員配置だからこそできる対応だ。
 育児や介護との両立を支援しようと、正職員から短時間正職員へ転換できる制度を設置。就労規則や育児介護休業法上の上限を超え、長期間にわたって短時間勤務を認めるもので、過去3年間で1人が利用し、短時間正職員から正職員に復帰している。さらに、正職員でも夜勤なしの勤務を受け入れるなど、職員のライフスタイルに合わせて多様な働き方を認めている。

先輩職員による教育制度で
定着率の向上に成功

 「離職率が高い」といわれている介護業界。人材の確保と定着は、業界全体の大きな課題となっている。
 介護社希望が丘では、新人職員研修にプリセプター制度を導入。新しい職場環境に不安を抱えがちな新人職員に、3カ月~6カ月間にわたって先輩職員がマンツーマンで担当につき、仕事の指導や相談役を担う。何を学び、どんな点で躓いているのか、指導をする際には全職員同じ基準で評価。チェックリストを元に、目標を持って仕事に取り組めるように工夫している。
 プリセプター制度を導入した2015年以前と以後で、離職率は6.7%減少。人材の定着に効果を発揮している。
 キャリアアップ支援も充実していて、外部研修の受講費用を補助するほか、講師を招いた研修を実施。意欲はあっても外部の研修に行くのは難しい人にも、新たな技術や知識を身につける機会を提供している。

地域で認知症を支える環境を
劇を通して正しい理解を促す

 地域との関わりを大切にしたいとの思いから、地域貢献活動を積極的に行っている。2015年には地域で認知症を支える環境をつくりたいと、谷汲ひまわりを中心とした職員有志で、劇団「笑顔の天使」を結成。興味を持ってもらいやすい劇という形で、ネガティブなイメージを持たれがちな認知症に関して、正しい知識を広めるのが狙いだ。認知症になっても、家族や地域住民で支えあうことにより、住み慣れた地域での暮らしが継続できる社会の実現を訴えている。
 笑いあり涙ありのオリジナルストーリーは好評で、2018年には揖斐川町をはじめ、輪之内町、本巣市の計7カ所約800人に向けて劇を披露した。毎回変える脚本に合わせて用意しなければならない舞台や小道具、仕事の合間を縫っての稽古など、苦労は尽きないものの、職員にとっても認知症の理解が深まるだけでなく、仕事のモチベーションの向上につながるという大きなメリットがあった。今後も要望に応じて公演を行っていく予定だ。
 さらに、各地域で認知症サポーター養成講座を開催しているほか、地域との交流の場として事業所内で認知症カフェを企画。小学校、中学校、高校でも授業の講師を引き受け、介護や認知症に関する知識の普及や啓発に努めている。

女性の意見を発信する場
女性活躍のための会を結成

 2018年、「女性活躍のための会」を創設。女性職員と管理職が集まって、会議を開いている。グループホームごとではなく、合同で開催することで、施設同士の連携強化にもつながっている。
 同年11月の会議では、50歳以上の職員が多いことを踏まえ、子連れ・孫連れ出勤について協議。「感染症やケガの発生を防ぐには」「キッズスペースを設けてはどうか」など、子連れ・孫連れ出勤を認めるにあたっての注意点や対策を話し合い、会社として正式に認めることを決定した。これまでに3人がこの制度を利用して、実際に子ども・孫を連れて勤務し、最近では姪子連れの職員も。利用者と職員の子どもが同じ空間で過ごす場合もあり、子どもとの触れ合いは、利用者から歓迎されている。
 現在、3つあるグループホームの施設長は、すべて男性が担当しているが、女性活躍のための会の活動を通して、女性管理職を増やすのが目標だ。介護社希望が丘では意欲ある女性を支援し、新たな可能性を広げようとしている。