優良取組事例

岐阜県を代表する老舗旅館として
女性活躍推進に注力
性別、年齢を問わず
能力を発揮できる企業を目指して


株式会社十八楼/岐阜市

清流長良川の畔にたたずむ十八楼。旅行新聞新社主催の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、観光経済新聞社主催の「人気温泉旅館ホテル250選」への入選のほか、JTBが選ぶサービス最優秀旅館・ホテルにおいて最優秀賞に輝くなど、江戸時代より受け継がれてきた「おもてなしの心」は高く評価されている。そんな老舗旅館を支える従業員の半数以上は女性で、結婚や出産を経ても働き続けやすい職場環境づくりを進めている。

従業員の半数以上を占める
女性が働きやすい職場を

 1860年創業の老舗旅館、十八楼。150余年の歴史において、2003年初めて若女将が誕生した。結婚を機に就任した伊藤知子さん自身、家庭と仕事を両立していることから、家庭と仕事のバランスに配慮し、従業員が働き続けやすい職場環境づくりに努めてきた。
 2018年には「清流の国ぎふ 女性の活躍推進サミット」内で企画された、県内を代表する女性経営者によるパネルディスカッションに参加。そこで、2017年度までに認定された「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業」の中に、宿泊・飲食サービス業の認定企業がないと知った伊藤さん。岐阜県を代表する旅館として、女性が働きやすい制度の充実や環境整備へ本格的に乗り出した。
 十八楼は全従業員数285人のうち、半数以上の147人を女性が占める(平成31年1月現在)。育休・産休の取得者が増えつつあったことも、後押しとなった。

親子参加型の行事を企画
子育て世代が交流する機会を

 育休取得者には面談や講習といった、職場復帰支援プログラムを提供。面談は、育児休業給付金の書類を郵送でやり取りせず、あえて会社へ持参してもらい、2カ月に1度交流する機会を設けている。たとえば、「家にいると息が詰まる」という悩みを持った育休取得者には、子どもを連れて会社に訪問してもらうよう提案。現在の悩みや復帰後の要望を聞き取り、円滑な復帰を促している。
 さらに職場復帰支援プログラムでは、子どもの体調不良等に対する突然の休みや、子どもの預け先がない場合の子連れ出勤、就業時間の繰り上げ・繰り下げを認めるなど、子育て世代の労働条件を緩和。柔軟な働き方を可能にしているのは、役割ごとに求められる知識や技能、技術をまとめた職能リストだ。できるようになった項目にはチェックを入れることで、どんな力が身についていて、何ができていないのか、一目でわかるようになっていて、個々の能力に合わせたシフト編成に役立っている。また、より多くの仕事をこなせる力を身につけようと、目標を持ってもらうことにもつながっている。
 さらに、育休中や育休から復帰した従業員同士が交流する機会を設けようと、親子で参加できる行事を開催している。初開催となった昨年は、春休み期間中に職場見学会を実施。親と子どもが一緒になって職場を巡るだけでなく、十八楼内の施設を活用して食事会の場も設けた。親にとっても子どもにとっても貴重な機会は好評で、参加人数は回を重ねるごとに増えつつある。

チームで業務の効率化・省略化
モチベーションの向上にも貢献

 従業員主体で、職場や業務の改善に取り組んでいるのが「クリエイティブワーク」だ。顧客との関係で、時間外労働が増加しつつあった現状を変えようと、部署ごとに課題を決め、根本から見直すところからスタートさせた。
 客室点検ではマニュアルを改善し、一部屋にかかる点検時間を2~4分短縮することに成功。フロント業務では、翌日の準備を複数人から1人で行うようにするといった改善を積み重ねた結果、就業時間を30分短縮することができ、サービスの質を維持したまま、効率化・省略化を実現させた。自発的に考えて動くことを通して、従業員のモチベーションアップにつながるなど、思わぬ効果もあった。

自然と互いを支え合い
活力ある職場風土へ

 育休・産休から復帰した子育て世代の従業員が増えつつある今、将来的には、先輩社員として新たに出産・子育てを経験する後輩のサポート役を担ってもらい、自然と互いを支え合う職場風土を生み出していくのが目標だ。さらに女性従業員の継続就業者を増やし、女性管理職の比率を20%まで向上させることも目標として掲げている。
 質の高いサービスを提供するには、サービスを提供する従業員が力を発揮できる働きやすい環境づくりが欠かせない。十八楼では、仕事と家庭との調和を取りながら、一人ひとりがやりがいや充実感を感じて働くとともに、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選べる職場環境の整備を今後も進めていく。