「利用して良かったと実感していただける介護」を目標とする社会福祉法人ケア21。平成16年8月に軽費老人ホーム「ケアハウス1番館」(高山市新宮町)を開設し、現在は老人デイサービス事業や老人短期入所事業などを8カ所の事業所を運営。
優良取組事例
柔軟な働き方として
社員が「子連れ出勤」を提案
ボランティアとして子どもが大活躍!
利用者もスタッフも笑顔に
社会福祉法人ケア21/高山市
柔軟な働き方を求めて子連れ出勤制度を職員が提案
高山の豊かな自然環境の中で、安心・安全・快適に暮らせる場を提供するケア21は、職員の大半を女性が占める。出産・子育てなどライフステージに左右されることなく、働きやすい職場づくりに法人設立当初から力を注いできたが、子育て中のスタッフが多い部署では希望する勤務期間帯や休日が重なってしまうことがネックだった。「もともと子育てに理解のある職場でしたが、子どもを連れて働くことができれば、勤務時間に融通が利き、もっと柔軟な働き方ができるのではと、平成25年に『子連れ出勤制度』を会社に提案しました」とスタッフの井田明美さんは振り返る。ケア21ではスタッフの要望を直ちに受け入れ、同年から子連れ出勤制度を導入。令和元年度は8人のスタッフが、保育園・学校の長期休暇時や土日祝日に、制度を利用した。
利用者とひとときを過ごすキッズボランティア
「子どもの体調不良を理由に休むと同僚に申し訳なさを感じることがある。預け先がない日に出勤しなければならない時は子どもの世話をしてくれる家族に、後ろめたさを感じることもありました」と、井田さん。制度導入後は気持ちが楽になり、より前向きに仕事に取り組めるようになったと話す。
親が勤務している間、子どもたちは施設内で宿題をしたり子どもたち同士で遊んだりと、思い思いに過ごす。親の職場で過ごす時間は、「親が働いている間は必要以上に話しかけない」など、子どもの自立心や社会性を育むきかっけにもなっている。「家で留守番をしていた時は寂しかったようですが、職場に来れば親が近くにいるという安心感の中、楽しそうに過ごしています」と井田さんはほほ笑む。
子連れ出勤は、子どもたちにも良い影響を与えている。職場に滞在する間、子どもたちは年少の子の世話を担うほか、「キッズボランティア」として、施設利用者と体操をしたり、散歩をしたりして、ひとときを楽しむ。働く職員の姿を見て、介護職と一口で言っても、入浴介助や食事介助など、さまざまな業務があることを子どもたちは知るという。「利用者の方々は子どもと過ごすのをとても楽しみにしてくださっていて、本当によくしてくださいます。一緒に過ごすことで、互いにとってよい刺激になればいいなと思います」。
子連れ出勤導入時に、年長・3歳だった子どもは現在、小学5年生・3年生へと成長。井田さんの提案を機に、子育てしながら仕事が続けられる職場風土がさらに浸透しつつある。「次の世代にもぜひ利用してもらいたい」と、制度活用の広がりを願う。
人員配置に工夫し低い離職率を誇る
利用者へのサービス向上には、職員のライフワークバランスの充実が不可欠と、法定の基準を上回る人員を配置するなど、労働環境の整備に注力。館内清掃や洗濯、配膳・下膳などを専門的に担う介護助手を活用することで、介護福祉士がより専門的な介護業務に専念できる環境を整えた。また高校生や特別支援学校の生徒を対象とした職場体験も積極的に受け入れた結果、3人が入職した。介護助手を務めているスタッフは、介護職員初任者研修を受講するなど、ステップアップしながら、業務の幅を広げている。
ライフステージに左右されることなく働ける労働環境や、人員配置への工夫によって、月平均の所定外労働時間は2.8時間(平成30年度)。離職率は3.8パーセントと、業界平均の15.5%と比べ低い水準を保っている。
「職員に貸与したiPadで、利用者と家族のオンライン面会をしたり、電子カルテを導入したりと、コロナ禍を機に新たな取り組みを始めています」と話すのは、職員の熊崎健一さん。更なる業務の効率化や労働環境向上のため、積極的なIT化を見据えている。