岐阜県揖斐郡に本部を置く「社会福祉法人新生会」は特別養護老人ホームやデイサービスなど、多様な介護サービスを展開している。職員の多くが女性を占めることから、昭和51年の法人設立以来、働きやすい職場環境の整備に注力。子連れ出勤や施設内の小規模保育施設などを導入し、職員のライフスタイルの変化にも対応している。
優良取組事例
職員同士の交流を通じて
他職種への理解を深め、
キャリアにおける悩みを共有
企業力を育み、離職を防ぐ
社会福祉法人新生会/池田町
会社の理念を共有するミーティングを実施
池田町を本拠地として、各地に福祉サービスを展開する社会福祉法人 新生会。「赤ちゃんから高齢者までが最期まで安心して暮らせる街づくり」をスローガンとして、2007年に岐阜シティ・タワー43の3階に医療福祉フロア「サンサンタウン」を開設した。施設内には、診療所を備えるほか、多世代交流支援センターやリハビリサロンがあり、利用者が自立し、いきがいをもって暮らせるようサポートしている。
「サンサンタウン」開設にあたって、数人の職員を本部から配置したのみでほとんどの職員を現地で新規採用。多忙を極める中、新規職員に対して、法人の歴史や理念を共有する機会をなかなか持てずにいたため、理事長自らが、法人のビジョンを全職員が齟齬なく理解し、職員同士が志を共有するため、「サンサンタウン」の職員一人ひとりにミーティングを実施。法人の理念や「サンサンタウン」設立の思いを理解するきっかけとなり、また職員のモチベーションが上がるなど効果が見られたことから、現在は、管理者とスタッフでのランチミーティング「ランチョン」として引き継がれている。
他部署のメンバー同士が自由に語り合う「ランチョン」
仕事の振り返りやスキルアップの確認など、業務にかかわる面談は年に数回実施しているため、「ランチョン」の目的はあくまでも他部署間交流がメイン。何気ない会話の中から仕事では見られない意外な一面を知ることができるなど、職員同士にとって親近感が生まれるきっかけとなっている。常務理事の川瀬由起子さんは、「ランチ代は一部会社が負担。普段あまり顔を合わすことがないメンバーとの交流をきっかけに、他部署の業務内容への理解が深まり、仕事上のコミュニケーションが円滑になるといったメリットも生まれました」と話す。グループは、日程や参加場所の調整役を務める職員を中心に各4~5人で形成。通所業務、訪問業務、フーズ(調理)など、通常の業務はあまり関わりのない、さまざまな部署からメンバーを選出している。毎回ディスカッションのテーマが設けられるが内容は自由で、仕事や子育て、趣味など、さまざまだ。子育て中の職員がランチョンで知り合い、意気投合することも少なくないという。
職員の発案で始まった「ママ交流会」 当事者が抱える悩みや葛藤を共有
80%を女性が占める新生会では、施設内に小規模保育施設を備えるなど、かねてより仕事と子育ての両立に力を注いできた。「働きやすい環境の整備は先進的に取り組んでおり、職場に子どもがいるのは今や当たり前の光景になってきました」と川瀬さんはほほ笑む。
職員の要望を積極的に取り入れているのも新生会の特徴で、「出産を控えている職員と、育休中の職員と復帰した職員が交流できる場を設けたい」との声を受け、2019年からは「ママ交流会」がスタート。当日は14人が集まり、手づくりのお菓子を持ち寄った職員もいるなど、和気あいあいとした雰囲気の中、交流会が進められた。グループワークでは、「育休中の給与は?」「2人目、3人目を考えている」「夜勤開始のタイミングは?」など当事者が抱える疑問や悩み、葛藤などが飛び交い、活発な交流が見られたという。参加者からは、「次回も参加したい」「同じような悩みを抱えている人がいて、『自分一人じゃない』と気が楽になった」などと好評の声が上がった。
ママ交流会のほかにも、子育てが終わり孫育てに携わる世代による「マダムHの会」が開催されており、今後は小学生の子どもを持つ職員の交流会やミドルエイジのための交流会などさまざまな企画も検討しているという新生会。さまざまな交流を機に、職員のモチベーションがアップし、法人への理解も進む。そういった一人ひとりの意識の変化が企業力となり、離職防止につながっている。