優良取組事例

成長、就業継続を徹底サポート
経験を積み、自信をつけて
美容師として一生輝ける
店づくりを目指して


有限会社トマト/恵那市

1981年に設立した有限会社トマトは、恵那市、中津川市を中心に、岐阜県内で6店舗の美容室を経営。従業員45名のうち38名が女性と(2019年12月現在)、女性が半数以上を占める職場において、結婚や出産、子育てといったライフイベントを経ても、働き続けやすい職場環境を整えている。その結果、女性の育休取得率はほぼ100%で、10年間で小学生以下の子どもを育てる美容師11人の採用につながっている。昨年には男性の育休取得者も現れ、性別を問わず働きやすい環境が実現しつつある。

美容業界の教育体制への疑問から生まれた美容室

 有限会社トマトを起業した纐纈雅治社長は、一般企業に就職したのち、脱サラして美容業界へ進んだ異業種経験者。通信で美容の免許を取りながら、サロンで経験を重ねるうち、オーナーの技を見て盗めという教育環境に問題意識を持ち、人材育成に力を入れた美容室を作ろうと決意しました。
 働きながら美容師を目指せる「美容師免許取得サポート制度」では、提携先の美容学校へ通いながら、店で実践的な教育を受けられる。学校へ週4日間のペースで2年間通う昼間制と、月1~2度の通学を3年間続ける通信制の2種類あり、卒業と同時にスタイリストとしてデビューすることもできる。高校卒業後、他県の美容学校へ進んだ場合、その進学エリアで就職する人も多い中、若者の地元離れの防止にも貢献している。
 そのほかアシスタントからスタイリストへ、スタイリストからトップスタイリストへと、より上のランクを目指す月2回の検定制度や、視野を広げる海外研修など、誰もが経験を積み、自信をつけられる環境を整えている。

預け先のない土日の就業を独自の託児所でサポート

 人材育成に力を入れてきたトマトが、ワーク・ライフ・バランス推進に踏み切ったのは約10年前。育休を取得した従業員の離職が続いたことがきっかけでした。
 高卒採用した従業員が、ちょうど結婚や出産を迎えるのが、トップスタイリストになったタイミング。「せっかく一人前に育った人材が、子育てを理由に辞めてしまうのはもったいない。しかし、予約が集中する土日のどちらかは出勤してほしい」。そんな会社の思いがある一方で、土日は保育所が対応できないという問題に直面した。
「土日も子どもを預ける先があれば、働き続けたい」。復帰に前向きな従業員の要望を叶えようと、会社独自の託児所「トマトキッズ」は生まれた。
 土日・祝日のほか、長期休暇や災害時などには、園長先生を歴任した専門スタッフに、子どもを預けられる。託児中の様子は写真を撮って、保護者に送信している。保護者は子どもたちの姿を見て、安心して業務に集中できるだけでなく、今日はどんな遊びをしたのか、自宅でのコミュニケーションのきっかけにもなっている。
 トマトキッズが始まって10年以上。育休からの復帰者は15人を数え、当たり前のものとして定着し、子どもの体調不良等で急遽休まざるをえない場合も、自然とサポートする雰囲気が醸成されている。
 店舗間のコミュニケーション不足を防ぐため、月に1度従業員全員で集まり、1カ月を振り返って発表する機会を設けているトマト。従業員同士の仲の良さも、チームワークの向上へとつながっている。

従業員の様々な事情を考慮働き方の柔軟性を高める

 育休中も練習や講習会へは参加が可能で、子どもを連れての受講も認めている。技術職である美容師。テクニックや勘を取り戻し、育休中に新しく増えた技術や知識の習得を促すことで、円滑な職場復帰に結びつけている。
 さらに、トマトでは9時から18時の勤務時間で、2時間の休憩時間を設定。店から自宅へ真っすぐ帰宅できるよう、買い物を済ませておいたり、子どもを送迎したりと、家庭の都合に合わせて自由に利用できる。店が混雑していなければ、カット等の練習時間に充てることも可能。閉店後にスキルアップの時間を作る必要が無くなるため、残業時間の短縮にもつながっている。
こうした取り組みが実を結び、2018年には女性の育休取得率並びに育休復帰率は100%という実績を実現している。配偶者が里帰りから帰ってくるタイミングで、5日間の育休を取得する男性従業員も現れ、女性だけでなく、男性従業員の育休も道が切り開かれつつある。
 初期にトマトキッズを利用していた子どもは、現在高校生へと成長している。子育てをひと段落させた従業員が、時短勤務からフルタイム勤務へ、パートから正社員へ戻れるよう、キャリアアップの道を作っていくのが今後の目標。従業員のライフステージの変化に合わせて、さらなる労働環境の成熟を目指す。