優良取組事例

女性の担い手を増やしたいと
労働環境の整備に注力
従業員の声を取り入れ
改善に活かす


株式会社安部日鋼工業/岐阜市

2018年、国土交通省と建設業5団体が、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定するなど、建設業界において女性の活躍が進んでいる。橋梁や上下水道施設の建設分野で高い評価を受ける株式会社安部日鋼工業では、女性目線での安全意識の向上や働き方改革が進められている。

現場の安全面・衛生面を調査する女性安全衛生パトロール隊

 近年、全国の建設業において女性活躍推進やワークライフバランス推進の取り組みが進められており、女性が働きやすい建設現場づくりを目指すべく、女性が現地に出向き、安全面などを確認するパトロールが実施されている。株式会社安部日鋼工業では2016年、「安全はすべてに優先する」という基本理念のもと、女性安全衛生パトロール隊「ABEせーふてぃFLOWERS」を結成し、6人の女性社員を隊員に任命。隊名「ABE」は安全・安心・愛(A)、防災・美観・万全(B)、衛生・笑顔・援護 (E)を意味し、「FLOWERS」には「女性の華やかさ・美しさを現場に取入れ新たな改善の芽を出し、咲かせてもらいたい」との思いが込められている。
 「女性隊員は事務職社員で編成され、現場経験がない。女性目線で現場をよくしていこうと、まずは岐阜本社で始まりました。現在、取り組みは全国の支店に広がっています。」と話すのは、結成当初から隊員として活動する管理本部総務部の柳原知佳さん。「建設現場=汚い」というイメージを持っていたが、実際に活動を始めてみると、事務所や倉庫がきちんと整理整頓されていて驚いたと明かす。

新たな視点で現場を改善 女性技術者獲得の一助に

 工事部・安全衛生室による安全衛生パトロールも別途実施しているが、女性安全衛生パトロール隊の活動も現場の安全意識の向上につながっている。複数人でチームを組み、年間10カ所ほどの現場でチェックシートに基づき、30項目を調査。
 当初は「トイレが清潔に保たれているか」「喫煙場所が適正に設置されているか」などの衛生面を確認していたが、現在は災害防止の観点から危険箇所などもチェックするようになったという。「足場を組み立てるときに用いる単管パイプの端部が通路にはみ出すと、ちょうど女性の身長だと顔が当たる高さになり危険です。男性の場合も、服に引っかかったりして危ないことも。現場で働く人にとっては当たり前でも、女性目線では違って見えることもあります。いろんな現場を経験して、細部まで指摘できるようになってきました」と柳原さんはほほ笑む。「ABEせーふてぃFLOWERS」の取り組みは、「建設業の新たな担い手育成と確保に関する取り組み」として評価され、国土交通省関東地方整備局から表彰を受けた。「この活動を通じて、他部署の業務内容の理解が進み、コミュニケーションが円滑になった」と話す柳原さん。「女性の活躍を社外に発信し、女性技術者の獲得につなげたい」と先を見据える。

従業員の意見を吸い上げ、制度化 ワーク・ライフ・バランスを叶える

 全従業員数532人(2019年12月現在)のうち1割程度を女性が占める株式会社安部日鋼工業では、2018年に女性活躍推進委員会を立ち上げた。「こんな制度があったらいいな」とアイデアを持ち寄った結果、ワーク・ライフ・バランスの観点から時間単位の有休取得が導入された。
 全女性従業員を対象としたアンケートを実施するなど、従業員の意見を積極的に制度に取り入れている。2020年からは、産休・育休を控えた女性従業員が上司と面談をする「面談制度」を導入。「妊娠の報告」「産休2カ月前」、「復帰2カ月前」、「復帰2カ月後」の4回にわたって機会を設け、上司がヒアリングを実施する。「面接では、『復帰後にどのような働き方をしたいか』など上司が本人の意思を聞き取ります。本人が休暇制度を改めて理解できるほか、『こういったことに配慮してほしい』など体調面における不安などを解消する機会となっています。」と、管理本部総務部の武藤舞さん。出産・子育てなどさまざまなライフステージの変化に即した働き方ができる環境をつくり、更なる女性活躍を推進していきたいと話す。