優良取組事例

従業員の職場復帰を促すため
企業主導型保育事業に参入
子どもの成長に配慮した
充実のサービスで、安心して
仕事に集中できる環境を作る


株式会社平成調剤薬局/岐阜市

平成調剤薬局は1992年、「地域のかかりつけ薬局」としてスタートした。現在では調剤に加え、介護、託児、薬膳カフェとさまざまな事業を展開している。どの事業にも共通するのは、「0歳~100歳まで、幅広い世代の健康を支えたい」という思い。薬剤師に看護師、理学療法士、介護士、保育士、栄養士、調理師と、多様なプロフェッショナルたちが思いを実現しようと活躍している。

調剤にとどまらず健康を支える企業として挑戦

 地域医療を支える医師たちの要望に応え、岐阜市を中心に調剤薬局の出店を増やしていった平成調剤薬局。ドライブスルーの導入をはじめ、新しい調剤薬局の在り方を探りながら、「地域のかかりつけ薬局」としての役割を担うなか、「薬だけで健康を支えるには限界がある」と新事業への参入を決意した。
 2012年に新設した本社敷地内には、サービス付き高齢者向け住宅「ながらの家」、訪問介護ステーション「ながらの家」、「薬彩食房よこひら亭」(現/薬膳カフェみずとき)を開設。2014年には訪問看護ステーション「平成」、2019年には企業主導型保育施設「ねんど」、デイサービス「金華のさと」をオープンし、地域の健やかな暮らしを総合的にプロデュースする拠点としての機能を充実してきた。
 地域との歩みを大切にする姿勢は、さまざまな活動にもあらわれており、たとえばまちの健康ステーションとして、デイサービス「金華のさと」は午後から一般向けに開放。さらに中学生の職場体験や、薬剤師を目指す大学の実習生を受け入れているほか、毎年「ココカラフェスティバル」を主催している。イベントでは健康チェックや相談会などの企画を通じて、心と体に向き合うきっかけを生み出している。

子育て家庭を支援するため企業主導型保育事業へ参入

 各専門分野で活躍する平成調剤薬局の従業員数は142人で、そのうち112人が女性(2019年12月現在)。会社を支える女性従業員の育休取得が重なったことをきっかけに企業主導型保育事業「ねんど」を立ち上げた。預け先が見つからない、保育料が家計の負担になっているといった声を聞き、それならば自社で賄おうと、企業主導型保育事業へ参入した。
 対象は0歳~2歳児で、平日は8時から19時まで、土曜日は16時まで利用でき、夏休みなどの長期休暇中も開所している。従業員の福利厚生の向上が目的ではあるが、地域の子どもたちの入所も受け入れ、定員18人のうち、9人を地域枠として設けている。通常は月額2万8000円のところ、従業員は雇用形態にかかわらず、月1万円の負担で利用できる。
 子どもたちを見守る保育士は、保育歴10年以上のベテランばかり。託児所と聞くと、子どもを預かるだけというイメージを持ちがちだが、「ねんど」では「『自分をみとめる』つよさと『人をみとめる』やさしさを」を保育理念に掲げ、多様性に寛容な子どもに育むことを目指している。

目の行き届いた保育で日々子どもの成長を実感

 多様性を学ぶ経験づくりに貢献しているのが、敷地内にあるサービス付き高齢者向け住宅「ながらの家」やデイサービス「金華のさと」であり、子どもたちが日常的に訪問している。核家族化が進み、多世代交流の場が少なくなるなか、入居者との触れ合いを通じて思いやりの気持ちを育んでいる。入居者にとっても、子どもたちから元気をもらえると、日課の交流を待ちわびる姿が多く見受けられる。
 「ねんど」の運営は、こうした他事業との連携のもと成り立っている。給食を提供するのは、「美味しくいただきながら身体を整える。薬膳をもっと身近に」がコンセプトの「薬膳カフェみずとき」。同じ敷地内に薬剤師、看護師が在籍しているので、安心感もある。
 「迎えに行ったとき、その日の出来事を先生が教えてくれて、日々成長を感じられます。一人一人しっかり見ていてくれるのがありがたいです」「先生の名前を覚えたり、ズボンをはけるようになったり、私が教えていないこともいつの間にかできるようになっていました。ねんどに行けないと機嫌が悪くなるくらい、通うのが大好きです」と従業員からも好評。子どもたちの様子は園だよりでも伝えられ、安心して預けることができるようになっている。

仕事と子育ての両立だけでなく心と体の健康にも配慮

 育休からの復帰をサポートする制度として産休・育休中の従業員には、説明会を実施。「周囲のサポートを当たり前と思わず感謝を」と、子育てと仕事を両立するうえでの心構えや「ねんど」の方針を話し、職場復帰につなげている。
 実際の復帰にあたっては、通勤時間を配慮して負担の少ない勤務地へ配属し、家庭の状況に応じて休憩時間の延長を認めている。人員を多めに配置することで、急な休みに対応できるだけでなく、余裕をもって仕事に取り組めるようになっている。こうした取り組みの結果、過去5年間で18人が育休を取得し、引っ越しなどのやむを得ない理由を除いて、全員が復帰している。
 地域の健康に貢献する企業として、従業員の健康づくりにも取り組んでいる。デイサービス「金華のさと」では岩盤浴、酸素カプセルといった施設内設備を無料で利用可能。ヨガなど、インストラクターによる講座も受講でき、体調を整え、リフレッシュするのに役立っている。
 地域になくてはならない企業を目指して、進化を続ける平成調剤薬局。そのために、志を共にする従業員が心身ともに健康で、生き生きと働ける職場づくりを今後も進めていく。