指定管理者として保育園の運営を行っている、特定非営利活動法人サン・はぎわら。現場で働く保育士や給食調理員、栄養士、看護師は全員が女性である。年齢の幅も広く、仕事と家庭の両立を図るため、個々の家庭環境に合わせた働き方ができるよう、積極的に制度の改善に取り組んできた。育休取得率、復帰率ともに100%を達成するなど、効果もみられている。
優良取組事例

業務改善提案制度の導入で
待遇の見直しや環境整備など
さまざまな成果を得て
より働きやすい職場をめざし
今後も改善を進めていく
特定非営利活動法人サン・はぎわら/下呂市
「考える会」を発足
特定非営利活動法人サン・はぎわらは、市民の手によるまちづくりをめざし、2006年に設立。翌年、下呂市の行財政改革の一環として、萩原南保育園(現・みなみこども園)が民間組織に運営を任されることになり、地域の保育園は地域の人たちが力を合わせて運営すべきであると、指定管理事業に乗り出した。
現在は、みなみこども園、きたこども園、わかあゆ子育て・保育ステーションの指定管理者として運営を任されているほか、萩原北児童館、下呂市ファミリー・サポート・センターの業務委託を受けている。
保育園の職員理事や事務局職員を含めても、大半を女性が占めており、女性が男性と同じように働けるように職場環境を見直す必要には迫られていなかった。しかし、ワーク・ライフ・バランスの実現は男性女性に関わらず課題であるとの考えから、働き方改革に向けた業務改善提案制度として「働き方について考える会」を発足した。
それまで理事、事務局、現場の職員3者で話し合う機会はなかったが、互いの意見や考えなどを聞く場が設けられたことで、働き方改革が進んだ。同時に職員たちが自身の職場や働き方について考える習慣もついてきた。
要望を受けて待遇改善
「提案制度」の名称のとおり、現場で働く職員から、職場環境を良くするためのアイデアなどを提案してもらうのが主旨であったが、実際は仕事上の悩みごと、困っている点、不満などの意見も少なくなかった。
運営する保育園では「元気いっぱい」「笑顔いっぱい」「友だちいっぱい」を目標に掲げている。子どもたちが元気になるには、まず保育士が元気でなくてはならない。そこで待遇や勤務体制を見直していくため、要望の多かったパート職員の月給制度導入や、多様な働き方を選択できる勤務体制の構築などを実現してきた。
なかでも、就学前の子どもの送迎ができる時短勤務、家庭の事情に合わせた4時間勤務など、本人の希望を受け入れた勤務制度は、保育士などの職員確保と産休・育休からの復帰率100%につながっている。
現場の声に細かく対応
女性保育士の職業病とされる膀胱炎。保育中は子どもから目を離すのが難しく、なかなかトイレに行けないことが多い。トイレの我慢が、病気を引き起こしてしまう。
「考える会」に寄せられた声で、トイレ用スリッパの位置を変更した。各教室からスリッパが見えるようになって、使用の有無がよくわかり、トイレへ行くタイミングが取りやすくなった。事務局も気づかないような細かいことながら、現場ならではの改善案だった。
書類の多さも、保育士にとっては負担となっている。残業削減を目標とするも、達成できないのは、大量の書類作成も要因。子どもを前に書類を作成するわけにはいかず、残業せざるを得ない、という実情も「考える会」で判明した。
書き物を一気に減らすのは無理なうえ、熱心な保育士が多く、子どもたちを優先して時間を使っている。ひとつの解決策として、勤務時間内にフリー保育士を増員し、保育とは別に書類を書く時間を設けるようにしたが、問題解消までには至っておらず、現在も課題だという。
事務局としては、現場の声を聞くことの大切さを実感したそうで、今後もこうした細かい声を吸い上げていきたいとしている。
職場環境の基礎を構築
衛生委員会を月1回開催し、前述のトイレ我慢をはじめ、腰痛や肩こり、声がれなど、体の悩みへの予防対策、健康で働き続けられる環境整備にも取り組んできた。
「有給の目標取得率80%以上を達成すると、年間の実働時間は約1800時間となります。そうした勤務体制や職場環境におけるベースとなる部分を、ここ1、2年で構築していくつもりです。そのうえで、働く人たちが仕事を通じて自身の成長、スキルアップができる環境をつくっていければ、定年まで長く働いてくれるのではと思います」と桂川正副理事長は話す。
社員個々の生活も視野に入れつつ、働く意欲(モチベーション)を高められるよう、業務改善を継続して、より働きやすい職場づくりを目指している。


