優良取組事例

どんなライフステージでも健康で
長く働き続けられる環境を目指し
若者と女性が職場環境改善会を行い
働きやすさをアップデートし続ける


社会福祉法人如水会「ぎふ愛の里」/大野町

2009年に設立された社会福祉法人如水会「ぎふ愛の里」。「家庭的で心のこもったやさしさといたわりのある介護の提供」を基本理念に、地域で必要とされる施設づくりを行ってきた。積極的な障がい者雇用の取り組みに端を発して、すべての職員にとってより働きやすい環境を整えるための意見交換を行うなど、ワーク・ライフ・バランスを大切にしながら、長く働ける体制づくりに注力している。

より働きやすい環境に

 特別養護老人ホームを中心にさまざまな介護サービスを提供する社会福祉法人如水会「ぎふ愛の里」。介護を必要とする方が、それぞれのかけがえのない人生を安心して過ごせる施設を目指してきた。
 2019年には、介護人材の育成及び職場環境の改善に積極的に取り組む介護事業者を認定する「ぎふ・いきいき介護事業者」のグレード2を取得。2020年からは、さらに上のグレードの取得に向けて、岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業の認定を目標に、まずは採用にも離職にも連動する「働きやすさ」の向上に努めてきた。
 年々難しくなっている介護職員の人材確保は、ぎふ愛の里でも課題となっていた。事務の喜多川香織さんは「入居される方は日常的に介護を必要とされる方で、医療的ケアが必要な方も増えています。個別ケアに力を入れているので、介護にかかわる職員の専門性と役割は大きくなってきています。」と現状を説明する。
 2022年2月、積み重ねてきた努力が認められ、ぎふ愛の里はエクセレント企業に認定。最近は、職員採用の面接の際「エクセレント企業に認定されているのを見てこちらを受けてみようと思いました」と言われることも増えた。

女性が活躍できる場に

 男性の割合も徐々に増えているものの、職員の7割以上が女性である。ライフステージにおいて影響を受けやすい女性にとって働きやすい職場であることは、雇用状況の安定においても欠かせない要素だ。  
 事務所職員は40代、50代が多く、結婚や子育て、親の介護などの経験をしてきた。そのような中、どんなライフステージに立っても無理なく働いていける環境作りが不可欠だ、との強い思いが自然と高まり、働きやすさ改革の発信源となっている。
 まずは各部署のリーダーに働きかけ、“休みにくさ”の解消に取り組む。リーダーが積極的に「お互いさま」と発することで、支えあいの気持ちが浸透し、お互いに感謝し労わる体制が整ってきたという。また、パートから正社員、正社員からパートといった転換を容易に行える、夜勤の有無関係なく正社員として働けるなど、柔軟な雇用形態をとることで雇用状態が安定し、時間年休や半休が取りやすくなり結果、離職率が下がった。
 2020年秋には「女性の活躍推進のための意見交換会」を実施。「仕事の合間に一息つける場が欲しいね」「入浴介助などの後、さっと水分補給ができれば」との意見からロビーに無料給茶機を設置。夏はスポーツドリンクを入れたり、飲料の入れ替えの際には好きな飲み物アンケートも行う。給茶機を取り入れて以降、職員と利用者が、ホールのソファで一緒にコーヒーを飲む姿も見られたり、仕事中でもさっと好きな飲み物を飲むことが出来、リフレッシュにも活用されている。

若手の力を活かす

 ぎふ愛の里が抱える課題の一つとして、若い職員の採用や定着についても考慮する必要性があった。それでもここ4年ほど、新卒職員や若い年代の職員の中途入社などで、若手職員が少しずつ増えているという。
 これまで施設長をはじめ、主任、リーダーなどが主となり、都度、声かけや話を聞く機会を設けるなど、職員の悩みや仕事への思いなどの把握、問題解決に努めてきた。その中で、若手職員は特に同じ年代の職員が一緒に働いている環境を心強いと感じていること、各個人はしっかりと意見やアイデアを持っているが発言を控えがちなこと、当然のことながら若者ならではの視点があり業務改善の大きな力となりうるといった点に気づいた。
 そこで若手の働きやすい職場づくりと、秘めた力を今以上に活かすことができるよう、若い職員が中心となり自由にアイデアを提案できる会議を開くこととなった。

若手のアイデアを採用

 2021年5月、第1回会議は就職した時の思いや、今感じていることについてのフリートークとなった。そこで制服について「襟のないものを着用したい」との意見が出た。
 施設内は利用者の生活温度に合わせているため暑さを感じやすい。早速、業務向上委員会にて提案され採用、襟なしの介護着(スクラブ)も選べるように。「暑さが軽減され働きやすくなった」と現場からも声が聞かれた。スクラブというタイプなら色、素材は問わないので、自分の好みの色を身につけることではつらつとして働くことができる、ポロシャツよりもポケットが多くて便利、などの意見もあるそうだ。
 意見を伝えることで働きやすさが向上した。また会議を経て、若手職員の今後のライフステージの変化を手厚く支援していこうとする会社の思いが伝わったのか、若い職員も事務所で気軽に意見や提案、相談をしていくことが増えている。喜多川さんも「コミュニケーションの効果か、業務の連絡も伝わりやすくなった気がします。若い人が元気に生き生き働いてくれると励みになり、職場に活気と勢いが出ます」と笑顔を見せた。