優良取組事例

「社員の幸せの追求」という
先代社長の考えを継承
改善提案・資格手当制度などを
導入して働く楽しさを感じてもらう


株式会社テクノア/岐阜市

テクノアは、製造業界で使われている生産管理システム「TECHS」シリーズやAIとIoTによる生産設備の稼働把握を可能にした「A-Eyeカメラ」、医療用健診システム「iD-Heart」など、様々なパッケージソフトウェアを自社で開発。卓越したIT技術は業界内でも評判だが、社員思いの施策を次々に打ち出している点も見逃すことができない。

社員を幸せにする

 創業者である先代社長が2015年の秋に体調を崩したことをきっかけに、生産管理事業の責任者や執行役員などを務めた山﨑耕治氏が後任に指名された。そして、2016年5月、代表取締役に就任。山﨑社長は先代から「社長の仕事は、社員を幸せにすること」と教えられ、それを実践し続けることを誓い、今日まで会社を牽引してきた。
 先代自身も社員の幸せを考え、様々な施策を打ち出してきたのはいうまでもない。例えばコロナ禍に入ってから一気に注目が集まったリモートワーク。これについてテクノアでは2009年からすでに導入済みだ。その結果、家族の看病や介護などを理由に出社できない社員も場所を選ぶことなく仕事ができるようになり、離職率も低水準をキープできるようになったという。
 もちろん昨今もリモートワークは実践されている。ただオンライン主体の仕事の進め方が定着したことにより、社員同士が気軽にコミュニケーションを図る機会が減ったのも事実。そこでリモートワーク下でも社員の交流を促す「どんぐり会」という社内コミュニティを発足させた。また、同期入社組のコミュニケーションの活性化を目的に、各拠点で働く同期を集めた会合も行われている。

改善提案制度

 一般的な中小企業において、社員が長く働くための就労環境および制度の設計については、経営層や幹部社員が骨子を考えるところから動き出すケースが多い。もちろんテクノアも例外ではないが、社員自身が「こうしたらどうか?」と就労環境の改善提案をし、そこから実現に向けて具体策が練られるといったボトムアップ型の「改善提案制度」が機能している点にも注目したい。
 経営革新部人事・CSRシニアアドバイザーの後藤大介さんによれば、「制度の導入以降、提案を集積する社内システムには1カ月で20件弱の投稿がなされており、これは目標値をクリアしています」とのこと。提案内容については、仕事が捗るちょっとした道具や機器の設置のススメから、100万円単位の金額で経費やコストが削減できるアイデアなど、実に様々だ。なお、投稿内容はすべての社員が目を通せるようになっている。
 これほど順調に提案が集まるのには理由がある。それは投稿日の3営業日後(制度導入当初は翌日)には、提案の採用・不採用が決定されるスピーディーさだ。常々山﨑社長は「結論を先延ばしにしない」と話しており、幹部社員も投稿に対してできる限り素早くリアクションを行う。そして、提案者には採用・不採用に限らず報奨金を支給。これも社員の提案意欲を掻き立てるポイントだ。
 実はテクノアは2021年に一般社団法人日本能率協会主催の「KAIKA Awards」の「特選紹介事例」に選出された。エントリーのきっかけも改善提案制度への投稿だった。その応募に必要な資料は社内公募で集まった社員が作成。関わった社員からは「会社への愛着感が増すだけでなく、仲間意識も強くなった」とのうれしい声があった。
 その他の提案導入事例としては、ビジネスカジュアルがある。IT会社でありながら、長らくテクノアの社員はスーツを着用して仕事をしていた。決して悪いことではないが、世間がイメージするIT会社らしさを体現してもいいのではないかという提案が出され、採用に至った。

資格手当制度

 テクノアでは、男女平等の条件のもとで社員を雇用しており、女性社員も管理職として積極的に登用中。「キャリアを諦めたくない」と意欲を見せる女性社員の背中を押している。
 TECHS事業部ソリューションサービス部部長代理の間野佐知子さんも、自身のキャリアアップに力を注いできた。間野さんは家族と協力して子育てを続けながら合格難度の高い中小企業診断士の資格を取得。現在毎月5万円の資格手当をもらっている。
 資格手当制度の導入は、中小企業診断士の資格取得を目指す社員にとって日々の勉強を継続させるモチベーションの向上にもつながった。現在、同資格は間野さんを含め計7人が取得。ほかには、ITコーディネータ資格の取得者に対しても毎月1万円の手当が支給されるのだが、これについては60人を超える社員が取得している。
 資格手当制度の導入により、資格の取得者数は順調に増えていった。社員にとっては手当がもらえるだけでなく、顧客からの信頼感も高まり、仕事に対する手応えもいっそう感じられるようになるなど、メリットが満載だ。

今後も新たな制度を

 現在テクノア の年間休日は124日だが、2023年度は更に増える見込み。大企業に匹敵する勢いだ。また、IT企業には珍しい下請けを一切やらないスタイルにも目を見張るものがある。自分たちが下請けに回ると、どうしても元請けのスケジュールで稼働しなければならず、結果として残業時間が増え、社員が疲弊していく。つまり、これを回避するため自分たちが元請けに徹すれば、自社でスケジュールをコントロールできるため残業時間の抑制ができるのだ。参考までに2022年2月度時点での1カ月の残業時間は、約16〜17時間。「IT業界=残業」というイメージを大きく覆している。
 「社員が仕事を楽しみながら長く働けるようにするための制度の導入は、今後も必要に応じて検討していきたいです」と後藤さん。利益ではなく社員の幸せを第一に考えるテクノアの快進撃は、まだまだ続いていく。