優良取組事例

働く人の環境変化に応じた勤務形態、正規職員への復帰も可能
研修制度が充実、女性の管理職への登用も


社会福祉法人ひがし福祉会/中津川市

社会福祉法人ひがし福祉会では、出産や子育て、介護など、働く人の環境変化に合わせた雇用形態の変更等に応じている。また、女性の管理職登用にも積極的で、女性にとって安心して長く働ける職場環境を実現している。

柔軟な雇用形態の変更

 社会福祉法人ひがし福祉会は、「障害があっても生まれ育った中津川で働き学び、生活ができるように」と、多くの方の支援により中津川市立東小学校の敷地内でスタートした「ひがし学童保育所」をその前身とする。現在、5つの事業所を運営し、約140名の方にご利用いただき、約150名の職員が働いている。中には、小さな子供がいたり、介護の必要な家族がいたりといった、それぞれの事情がある中で、例えば子育てと両立しやすい時間に働けるように本人の希望を聞きながら一時的にパート職員や嘱託職員に雇用形態を変更するといった取り組みを行ってきた。多くの企業では、家庭状況が変わることでそれまでと同じ働き方が困難になり、特に女性が退職してしまうケースも見られるが、本人が働きやすく、周囲も納得のいく形で、雇用形態を変更したり、勤務時間を相談したりしていくことで、私生活にも負担の少ない形態で働き、その後の状況の変化に合わせて再び正規職員に戻ることも可能な体制を設けている。ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業に認定された時点で14名の職員が出産などをきっかけに嘱託やパート職員に雇用形態を変更して働き続けているほか、女性職員の産休育休の取得率は同時点で10年間にわたり100%、育休取得後も多くの女性が働き続けているという実績を持つ。

女性の管理職への登用

 社会福祉法人ひがし福祉会では、正規職員に戻った女性職員が役職を担い、現在3名が管理職として勤務している。女性の場合は特に、一旦仕事を辞めてしまうと、それまで積んできたキャリアや役職がリセットされ、いざ別の企業で働こうとした際には全くゼロからのスタートになってしまうこともある。しかし、働き方や雇用形態は違っても経験を積み、子供の成長や家庭の状況が変わった時には再び正規職員に戻り責任を持って働いてもらうことで、仕事への自信や長期的な収入増にもつながっている。
 「障害者支援という仕事の場合、個々の利用者さんのことを理解していないと、適切な支援ができない。同じ障害を持っている人だから同じ支援というわけではなく、個々の利用者さんの障害の種類や特性、性格や育った環境、現在の状況、体力的な面や精神的な面などを含めて理解しないと適切な支援は難しいと思います。」と話すのは、統括主任の可知怜子さん。「そういう意味で、職員に長く継続して働いてもらえることが、利用者さんへのより良い支援につながっていくと考えています。ですので、本人が働きたくても家の事情で諦めるということができるだけないように、もちろん法人として行えることに限りはありますが、相談して長く働いてもらえる環境づくりを意識して行っています。」

充実の研修制度

 また、社会福祉法人ひがし福祉会では、多彩な研修プログラムを実施している。毎年4月には1週間程度の新人職員研修を行い、新卒で入った職員と、前年度に中途で入職した経験年数1年未満の全ての職員が参加する。法人の理念や具体的な支援の方法、社会人としてのマナーや福祉情勢など幅広く学んでもらえる機会を設けている。また、ライフプランを含めた若手職員研修、キャリアに応じたマネジメント研修などの内部研修、岐阜県や社協主催の外部研修にも、積極的に参加するように働きかけている。「中津川は岐阜県でも東の端の方なので、岐阜市などで開催される研修は受けられる職員が限られてしまいますが、近年オンライン研修が普及したことで誰もが平等に受けられるようになりました。特に、以前は受講の難しかった子育て中の女性職員を含め、受講費用を法人が負担することで積極的に受けてもらっています。」と話す可知さん。その結果、多くの職員のスキルアップにもつながっているという。

何でも相談できる職場

 社会福祉法人ひがし福祉会では、半年に一回程度上司が面談を行い、仕事で困ったことがないかなど確認をし、必要に応じて一緒に問題解決に取り組むようにしている。「ひとりで悩んで退職するのではなく、できるだけ早い時期に、上司や設置している相談窓口などに状況を伝えてもらえるよう声かけをしています。」と可知さんは話す。
 職員として経験を積みながら長く働いてもらえる環境をこれからも維持したい。また、こうした取り組みをきっかけに、若い世代を含め多くの方にひがし福祉会や障害者支援について興味を持ってもらいたい。可知さんは、「利用者さんにも職員にも笑顔が多く、特に施設見学や実習にみえた方には『イメージが変わりました!』と言われることが多くあります。実際の施設の雰囲気や利用者さんの姿を知り関心をもっていただくことで、障害の有無に関わらず、一人ひとりがその人らしくいきいきと生きられるような、そういう地域社会の実現につなげていければいいなと思っています。」と語る。