西濃地域を中心に住宅建築を手掛けるHAGIホーム・プロデュース株式会社は、創業者である会長の方針で社員のワーク・ライフ・バランスを重視しており、建築業界では珍しいと言える「残業なしの定時退社」や「長期間の育児休業取得」を実現している。そのために会社が制度や仕組みを整えるのはもちろん、「残業しない」や「休みをとる」は当たり前という風土を作り上げている。
優良取組事例
社員の幸せが仕事に表れる
たくさんの家を建て
たくさんの家族を見てきた
自分たちが幸せでなければ
良い家は作れない
HAGIホーム・プロデュース株式会社/大垣市
社風が作り出す働きやすさ
HAGIホーム・プロデュースは戸建て住宅を中心に扱う、会長、社長、社員3人の小規模な住宅会社です。大手ハウスメーカーに長年勤めてきた現会長が、地元で良い家づくりをしたいと独立し2000年に創業した。会長自身が仕事とプライベートのバランスが大事だという考えで、創業当時から残業はしないという方針だった。「私は10年ほど前に入社しましたが、当時から定時で退社していました。どうしても残業が避けられなかったときは、後日その残業時間分だけ遅く出社するか早退するかで調整します。」そう話してくれたのは自身も子育てをしながら働く母親である川村ゆう子さんだ。
働きやすさの魅力は定時退社だけでなく、休暇を柔軟に取得できる点もあげられる。学校行事など事前に予定が分かる場合はもちろん、子どもの急な発熱など突発的なときでも仕事を気にせず希望通りに休める体制をとっている。社員3人それぞれが施主と打ち合わせた内容を、1週間毎に管理シートに入力して週明けに提出。それを取りまとめて社長に報告し社内で共有する事で、誰かが急に休んでも当日の予定を他の者が確認し必要な対応を取る事が出来るようにしている。
補い合える仕掛け
「今年、2度目の育児休業を取得した男性社員がいます。1人目の時は2か月でしたが、2人目の今回は6か月間という長期です。建築業界では男性が育休を取ること自体が珍しいと思いますが、生まれたばかりの赤ちゃんを見てあげられる期間は短いからと社長も社員の育休取得に前向きです。」と川村さんは語る。
育児休業はあらかじめ開始と終了が分かるので、会社としても体制を整える時間的猶予が確保できる。予定している業務のどこに育休が重なるのか、その間の仕事を前倒しするのか後ろへ繰り下げるのか、代わりの社員が対応するのか一旦ストップさせるのか、お客様とも相談して決めていく時間があるので、育休期間の長短は業務に影響しないという。日頃から社内で情報共有しているからこそ可能な事だと言えるだろう。また、会社とお客様の関係性も見逃せないポイントだ。営業・工事・メンテナンスを一人の担当者が受け持つという独自のシステムのため、お客様との信頼関係が築きやすい。さらには、「お客様満足度の追求」を重点施策としているため、お客様が知人・友人を紹介してくれる。そんなお客様だからこそ育児休業導入に対しても理解が得られやすい。この点も業務の調整がスムーズに出来る要因といえる。
働き方を支える工夫
また、コロナ禍で会社も現場も人数が制限された時期には、各自PCを持ち帰ってリモートで報告や打ち合わせを行ったり、現場の職人とTV電話の映像で作業を確認しながら指示を伝えるなど、PCやスマホを活用した在宅勤務で現場を動かす事が出来た。これによって働き方の選択肢を1つ増やせたと言えるだろう。
会長は元ハウスメーカーの営業マンで、社長は大学で建築を学んでいたが、社員は全員が建築業界未経験で入社している。社員教育については、会長や社長に同行して仕事のイロハを教えてもらう事からスタートし、徐々に独り立ちしていくスタイルをとっている。受けてみたいセミナーや取りたい資格があれば、会社が費用や時間を工面してくれる。「名古屋で開催されるセミナーに通わせてもらった事があります。交通費も受講料も出して頂きましたし、勤務時間内に仕事として行かせて頂きました。」そう語る川村さんは資格にもチャレンジしている。「資格を目指す場合も同じで受講料や検定料を全額補助して頂けます。私はクレーンを使って資材を降ろす現場に監督として立ち会う事もあるので、安全を管理する立場から知識があったほうが良いと考えて『玉掛け』の資格を取りました。」
終わりのない取り組み
「私たちは『岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業』の認定を受けていますが、その申請のために新しく取り組んだものは無く、自分たちがやってきたことを見直してみて、これなら申請すれば認定をもらえるのではと考えました。そして申請した結果は思った通りでした。」と川村さんは振り返る。
「今の会社規模やメンバー構成だと育児休業の対象者も少ないので希望通りに対応できていますが、これから人数が増えてきたら考え直さないといけない場面も出てくるかも知れませんね。」と、今後も働きやすさを追求し続ける姿勢に変わりはなさそうだ。