県内で観光振興やものづくり支援など、地域活性化の各種イベント・事業を企画・運営する日本イベント企画株式会社。その業態から勤務時間は繁忙期と閑散期の差が大きく、通年で見ると大きく波打つような働き方となる。そんな職場だからこそのアイデアで、働きやすくストレスの少ない労働環境になるよう、社員が自ら会社に働きかけて制度を作り上げてきた。それらは子育て中の女性社員だけでなく、男性も含めた全社員の働きやすさにも繋がっている。
優良取組事例
ママさん目線で柔軟に対応
子ども同伴出勤や職場の家族参観
放課後の子連れ勤務など
子育てに寄り添う柔軟な対応が
働きやすい職場を作る
日本イベント企画株式会社/大垣市
働きやすい環境づくり
女性スタッフの多い会社だが、子育てを理由に退職した人はいないという。育児休業などの一般的な制度は以前から用意されており、また利用もされてきた。イベントという業務の性格上、週末や連休、行楽シーズンなど、集客が期待できる時期が繁忙期となる。もちろん繁忙期は大変忙しく、かといって閑散期はヒマという訳でもない。そういった傾向の職場で子どもがいても仕事を続けたいという女性のために、働きやすい環境を作ることに取り組んできた。
社員から会社への提案
ある女性社員が育児休業を申請する際、上司に一つの提案を示したことがある。その社員は以前も育児休業を取得したことがあるが、今までとは違い部署の異動で業務が忙しくなっており、長く現場を離れることで業務に支障をきたしかねない状況にあった。そこで育児休業を短縮する代わりに、赤ちゃんと一緒に出社して面倒を見ながら仕事をすることを認めてもらえないかという提案だった。すぐにどうすれば良いか何が必要か話し合いが始まり、「勤務する部屋は分けたほうが良いのでは?」「授乳室は必須だよね?」「赤ちゃんがハイハイして動き回るようになったらキッズスペースを作る?」など次々に出された意見を会社側に提案して内容を整えていった
会社としても早期復帰はありがたい話だが、今後の育休取得希望者に早めの復職を促す会社側の圧力と捉えられては本末転倒である。しかし働く側からの要望・提案を会社が承認する形で実現した「子連れ出社」は、従来からの育児休業とは別に新しい選択肢の一つとして社員に浸透していった。
使う側の視点を重視
「子連れ出社」が認められたことで、休暇をしっかり取って育児に専念したのちに復帰するというパターンと、早めに復帰して仕事と育児を並行して行うというパターンの二つの選択肢が用意されたことになり、出産後の働き方が各自の事情や価値観に合わせて選べるようになった。この他にも子育てを含むライフスタイルに関わる制度や取り組みがいくつか実施されている。
「フレックスタイム」は、この会社の業務が自分の裁量次第である程度コントロールできるということもあり、余裕のある時期は早退して趣味でリフレッシュし、残業の翌日はゆっくり出社するのも良しとしている。
「家族参観」は、週末や休日にイベントを行うことが多いため、家族を担当イベントに招待して楽しんでもらい、仕事と同時に家族サービスもできるという、この会社独自の取り組みだ。入場料の割引など会社が負担する部分もあるが、家族に働く姿を見てもらうことで仕事への理解を深めてもらうという一面もある。
子連れ出勤は飲食物販の部署にも活かされている。公園内の店舗で働く小さい子どもがいる社員は、学校が終わるころ迎えに行き職場に連れて戻り仕事を続ける。その間子どもたちは園内で遊んだり店舗の空きテーブルで宿題をしたりして過ごすことができる。放課後児童クラブ等を利用して働くのが普通だが、目の届くところに子どもを連れてきて仕事を続ける方が安心できるというママ視点での発想だ。
また、出張先の業務が終わる翌日を有休にして出張先で家族と過ごす出張と家族旅行の組み合わせのような休暇を認めたり、年間で一番の繁忙期を終えた12月中下旬に大掃除・忘年会・仕事納めを済ませ長期の冬期休暇取得を促進したりもしている。
能力を引き出す環境
仕事の面でも、趣味や好きな事に関連した業務を担当することで、その社員が持つ知識を活かし情熱をもって仕事に取り組むことができるようにしている。例えば、歴史好きであれば戦国時代のイベントを担当し、自転車好きなら観光とサイクリングを組み合わせた企画の立案などである。少人数でコミュニケーションが良好な会社であるが故に、お互いのキャラクターを良く分かっているからできることだ。
このように社員の意見や要望を柔軟に取り入れ、ワーク・ライフ・バランスをできるだけ高い次元で両立させることで、社員が最高のパフォーマンスを発揮してくれれば会社としては申し分ないことだ。理想的な会社を目指す取り組みに終わりはない。