大垣市で“窓の専門店”としてサッシの提案から施工までを行っている株式会社T3では、社長の『プライベートが充実していないと仕事も上手くいかない』という考えから、働きやすさを重視した様々な制度を整えると同時に、気兼ねなく休暇を取れる雰囲気や仕事の悩みを相談しやすい環境づくりに取り組んでいる。トライ&エラーを繰り返しながら一歩ずつ前進している会社の様子を伺った。
優良取組事例
小さな会社の大きな変革
時代と共に考え方も変わる
その変化に合わせて作り直す
自分たちの手で自分たちの会社を
株式会社T3(タバタサッシ)/大垣市
再起動を目指して
この会社では毎月1回、幹部社員が別室に集まって幹部会議を行っていた。内容は頑張っている部下についての報告や、伸び悩んでいる部下に対する指導の相談など、経験者が若手の成長を促すことが主な目的だ。社長も同席するが立場はあくまでオブザーバーで、議題も進行も幹部社員に任せていて、トップダウンにならないよう留意されている。その後、社員の退職により組織構成の見直しを余儀なくされ、幹部社員と一般社員という2層構造から、よりフラットな組織に再構築を行った。上司・部下という関係から先輩・後輩という雰囲気に変わり、そのタイミングで幹部会議も再考のため一時中断とした。
現在は勤続年数の長いベテラン社員が中心となり、従来の幹部会議に替わるものを模索している。会議という形式を継承するかも含めて再開時期は未定だが、それまでの間は個別に悩みや心配事、要望の有無などをヒアリングしている。先輩たちは日頃から若手社員の様子や言動に気を配り、小さなサインを見逃さないようにしている。
時代の変化に合わせて
『プライベートが充実=仕事も充実』という社長の考え方から、休暇は各自が好きな時に自由に取れるという雰囲気が出来上がっている。仕事のスケジュール管理さえ個人で完結していれば、希望する時に休んで構わないというスタンスだ。しかし計画的に取得する短期の休暇は問題なくても、長期や突発的な事態には対応しきれないことも考えられる。また、以前は「Aさんにしか出来ない仕事がある=Aさんは会社にとって重要な人」という考え方が社内にあったが、今は「誰もがAさんをサポートできる」体制への移行を進めていて、1人に負担や責任が集中しないよう見直しを行っている。仕事があるのに休まれては困るという会社側の言い分は、今の世の中では通用しないという認識だ。
経験とノウハウの宝庫
「中小企業家同友会に入っている社長の誘いで、青年部へ参加することになりました。色々な経験を積まれた、様々な業種の経営者が集まり、どうすれば良い会社になれるか勉強会を開いています。そこに自分たちの抱えている悩みや問題を持ち込み、解決の参考になりそうな先輩方の体験談に耳を傾けています。」と話してくれたのは社歴が一番長い統括リーダーを務める土屋さんだ。
土屋さんが勉強会で得た知見が効果につながった実例を一つ教えて頂いた。「勉強会で知った“委員会活動”を実際に社内で取り入れてみたところ、社員の意外な一面を知る事ができたうえに、その社員の成長にも繋がった事がありました。社内であまり出来ていなかった挨拶と掃除に対して、それぞれ委員会を設けて若手社員を委員長に任命したところ、頼りなさそうな印象の新人社員が、人の話をしっかりと聞き、皆の意見をまとめる力も発揮するなど、まさに隠れた才能を掘り起こしたような結果が表れました。」その時のことを振り返りながら土屋さんはこう続けた。「社歴が一番古い私は、先輩社員という手本が社内にいませんでした。青年部は“こんな先輩が会社にいてくれたら”と思う、知識と経験の集まりのようなところです。以前の私は新入社員に仕事を教えるときも何故こんな事が出来ないのかとイライラしていましたが、青年部で見せて頂いた先輩方の私への態度や振る舞いから学んだことを会社で実践したとき、自分の中でカチッと音がして真に理解が出来たと同時に自分自身の成長も感じられた、そんな瞬間を経験しました。自分が青年部で感じたこと、得たことは、全て会社に持ち帰って展開していきたいと思っています。」
より良い会社を目指して
「ある時、青年部で意見が2つに割れる出来事が起こりました。対立する2つの意見にはそれぞれの立場での主張と理由があり、私には両方の言い分が理解できました。ところが社長に話してみると片方の意見しか解らないと言います。同じモノを見ていても人によって見え方が違うと気付かされ、一緒に働く同僚の考え方や価値観が解れば普段の小さなすれ違いやストレスを減らし、より心地よい職場に出来るのではと思いました。そういう研修のようなものをやりたいと考えています。」
組織には考え方や価値観が近い人もいれば違う人もいるものだ。それを1つの方向へ進めるために、社員が自ら学び、持ち帰り、展開する。社員による社員のための職場改善が今日も続いている。