優良取組事例

休みを取りやすい企業風土と
みんなが使いやすい福利厚生
新しい技術開発も働く人のため
止まらぬ歩みが人を定着させる


株式会社大西組/郡上市

郡上市白鳥町で昭和44年に創業した株式会社大西組は、道路・橋梁・トンネル工事を始め河川・砂防・治山・林道および上下水道などのインフラ整備で地域の発展に寄与してきた。また、得意とする深礎工事においては高速道路の橋脚で県内外に実績を残している。

屈指の技術を持つ会社の悩み

「主に土木を中心とした土木建設業で、元請け工事はもとよりスーパーゼネコンの下請け工事など、県内外で工事を請け負っています。得意分野の深礎工事では、日本一高いと言われる東海北陸自動車道の鷲見橋の橋脚も弊社の実績で、そういった高速道路の橋脚を建てるための工事を各地で行っています。」そう会社を紹介する鷲見取締役は、社員の若返りや定着率の向上を目指した取り組みについても話を続けた。「高い技術を持ち、地域にも貢献してきたと自負しています。しかしながら業界としては若者から敬遠され、会社としても社員の平均年齢が40代後半と高齢化しているなどの問題を抱えていました。それを解決するために、早くから労働環境の改善に向け、独自の取り組みを続けてきました。」

友人・知人が羨む制度の数々

子育て世代への手当、社員の健康維持、労働環境の改善など様々な取り組みの中から、まずは育児休暇を取得した男性社員の清水主任に話を伺った。
「子どもは3人います。最初の子が生まれた時は入社して日が浅かったので、遠慮もあって育休は取得しませんでした。ちょうどお盆で自分も休みでしたし、妻の両親も色々と手伝ってくださり、何とか休みを取らずに乗り切りましたが、2人目と3人目の時はそれぞれ3週間の育休を取得して、妻が赤ちゃんに集中できるよう自分は主に上の子の世話をしました。送迎で保育園へ行ったとき遊んでいる姿がチラッとでも見れたり、先生から園での様子を聞けたりしたのは嬉しかったですね。家で子どもに園のことを聞いてもなかなか話してくれないので、育休を取ったおかげで知らなかった子どもの一面を見る事ができました。」
育休の他には、子どもが産まれてから高校卒業までの間、1人目は月額10,000円、2人目が15,000円、3人目からは20,000円の子ども手当を毎月支給しているので、彼の場合は毎月45,000円を受け取っている。
「制度が充実しているのはもちろん良いことですが、子どもの体調不良など急用ができた時に気兼ねなく休める雰囲気がとてもありがたく思います。」と清水主任が言うように、いくら制度を整えても利用しづらくては意味が無い。制度や手当ての充実を図るのと並行して、利用しやすい職場環境を整えてきた結果が取得率といった数字に表れている。
また、同じ白鳥町内には関連会社でスポーツジムを併設した温泉施設があり、入浴は無料でジムは半額で利用できる。会社から近いので仕事帰りに利用する社員も多く、アパート住まいの独身若手社員には広い温泉が好評だそうだ。中にはジムを積極的に活用して健康診断のE判定を1年でA判定まで改善させた社員もいるという。その他の効果としては、現場が違うと普段は顔を合わせる機会がほとんど無い社員もいるが、温泉やジムがそんな社員同士の交流の場としても機能しているということだ。

地域や家族との交流を通して

 会社と地域の交流を目的とした「はたらく!くるま大集合」というイベントを一昨年から開催しており、重機などの展示や体験試乗、花火大会などを行っている。2回目となる昨年は約750名の参加があり、そのうち子どもは約400名。イベントを通じて建設業を少しでも理解してもらうと共に、会社の地元での認知度UPと将来の人材候補を育てることになればと、毎回内容を見直しながら今後も続けていく予定だ。
 社員にとっては家族や子どもに自分の仕事を見てもらう良い機会になっていて、特に子どもが親の仕事を分かってくれて嬉しいという声が多い。さらにイベント終了後に行われる家族BBQでの交流も大きな楽しみになっている。

土木作業とICTの融合と未来

会社では外部企業と共同で建設用重機の遠隔操作の開発に取り組んでいる。現状は重機オペレーターが現場で作業しているが、遠隔操作ができれば複数の現場を移動時間無しで効率よく進める事も可能になる。また、ベテランの操作をプログラミングしておけば、新人でも同じ作業を再現できる。仕事場は土埃が舞う現場ではなく空調の効いたオフィスで、操作するのは運転席にある無数のレバーやペダルではなくモニターの前にあるコントローラー、そんな働き方が目の前に迫っている。そうなれば労働環境の改善に留まらず、男女を問わずゲームの得意な若者の職業選択に繋がる可能性もあるだろう。
また、土砂崩れや大雪などの自然災害発生時には、土木建設業者は国交省からの要請で災害派遣を行っている。危険な災害現場へ真っ先に入るのは、実は土木作業員である。遠隔操作が普及すれば安全な場所から重機を動かせるので、もし2次災害が起きても機械の損害だけで人命は守られる。
 このようにハード・ソフト両面から働く社員を守り会社をアピールする活動は、社員の定着率を上げ、会社や業界の地位向上に寄与し、将来の人材確保にも繋がっている。