イクメン・イクボスページ
萩原北醫院
院長
大林秀成さん(下呂市)
家事や育児に挑戦することで
大変な面が理解できる
体験することによって
感謝の気持ちが芽生えます
岐阜県北部、下呂市に根付いた地域医療の提供を行う「萩原北醫院」。平成17年の開院時から、すでに事業所内に保育施設を併設。醫院に勤務する看護師が子どもを預けながら働く他、地域のさまざまな子育て世代が活用し、開かれた保育施設として愛されています。院長を務める大林秀成さんは、5人の子どもの父親。醫院で事務長として働く妻の家事、育児をサポートした経験から、子育て世代が働きやすい職場となることを目指しています。
母親(子どもの家族)を手伝う
保育施設を醫院に併設
病院で長く勤務医として働き、33歳の時に萩原北醫院を開院しました。今、大学生の長男、それに次男が生まれた頃はまだ勤務医。特に三男が生まれてまもないころは、当直、それに現在の醫院の開業準備をしていました。醫院内に保育施設を併設しているのは、もともと病児保育をやりたかったからです。子どもを預けて母親が働きたくても、風邪を引いたりして子どもの体調に不安があると預けられませんし、保育中に体調を崩したら、母親も心配でたまりません。私も長男、次男の子育てに携わりながら「預ける場所がない」と苦労しました。自分が困らないと、人が困っていることは見えないもの。
病児保育に携わるために、まずは保育ができる現場を作り、保育士も育てながら段階を踏もうと考え、開院と同時に設立したのが0~2歳の低年齢児を預かる萩原北醫院託児所「バンビルーム」です。2015年に「ししのこ」として増設、その後、2017年12月から企業主導型保育施設「くろすけ」、併設の病後児保育「みぃみぃ」を開設し、念願だった病児保育に携わることができています。
家事、育児の体験が
さまざまな気付きに
三男が生まれたばかりの頃、妻が三男と長期間、県外の病院で入院しました。私は一人で長男、次男と少しの間過ごしました。妻に安心してもらおうと、休みの日に長男、次男と下呂温泉合掌村に出掛けて、遊んでいる子どもたちの写真を送ったこともあります。何気ない行動ですが、離れて生活していた妻から「安心とうれしい気持ちで写真を見た」と声をかけてもらいました。
妻によると、私がより子ども好きになったのは三男が生まれたあたりからだそうです。たしかに子育てには慣れもあると思うんです。一人目、二人目を経験して三男、長女、四男と向き合った時、当然ながら私自身も父親としての経験をより積んでいます。ぐずっている時でも気持ちにゆとりを持って遊んであげたり、入浴の仕方、勉強の教え方も経験を積んでいるので、わかっている部分が多い。余裕があるからこそ、より愛情を持って接することができたのかもしれません。
子どもは二人が望んだからこそ、生まれてきてくれるもの。だからこそ、二人で家事、子育てを体験し合うことで、大変さ、あるいは意外と楽な部分があることにも気付けます。結果、互いに感謝し合う気持ちが芽生えるのではないでしょうか。
自分を大切にするなら
周りを大切にしてあげて
今も長女が10歳、四男が2歳ですから、妻と共に私自身もまだまだ子育てに奮闘しています。
普段は19時半頃に帰宅して、四男とお風呂に入ります。食事を済ませると、長女の勉強を見て上げて、今度は四男への絵本の読み聞かせです。今はアプリで寝かしつけをサポートしてくれるものがあるから、長男や次男の子育て中に比べれば、便利になりました。
私も気を付けていることですが、家事、子育て共に男性側は「1日1つでもやる」ことが大切だと思います。同時に、家族には男性が行ったことで、余計に手間が増えてしまう結果になったとしても、どうか温かく見守って欲しいと思います。
認知症患者を持つ家族に話をするのですが、自分がお手伝い、介護される側になることを想定して周りの人に優しくしようと伝えます。人にどれだけ優しくできたかで、自分が大事にされるかが決まります。これは子育てにも共通していて、将来の自分を大切にしたいなら、周りの人を大切にしてあげようと考えています。
女性職員が働きやすい
そんな職場作りが目標
子育てを経験したからこそ、醫院で事務長を務める妻と相談し合い、女性が働きやすい職場環境であることにも力を入れています。月に2日の特別休暇制度の導入をしたり、女性職員の産後復帰も、個人の希望する勤務形態で対応できるように配慮しています。私と妻が、実際に子育て真っ最中ですから、働いている従業員も安心して産休から職場復帰できるという雰囲気もあるかもしれません。
併設する2つの保育施設は女性従業員が利用している他、もちろん地域の皆さんにも有効活用してもらっています。現在、一時預かりを含め30人を保育士12人で受け入れています。私たち医療従事者がすぐ近くにいるので、安心して外で働けると喜んでくれる家族が多く、私たちもやりがいを感じているんです。
男性は家事や育児を「自分にはできないから」と、つい妻にお願いしてしまう傾向が未だに強いと思います。ですが、ぜひ、自分でやってみてください。自分でやることで、いろいろな気持ちを妻と共有できるはずです。そうすれば子ども、そして妻との距離が近くなる。家族、周りに優しくなれることで、感謝の気持ちがいつか自分に返ってくると私は考えています。