岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

自分の思いに任せて
信じた道を追求したい
努力を重ねた先に
新しい世界が開かれるはず


NPO法人「手をつなぐ女たちの会」理事長/フェミニストカウンセリングアドブォケイター
片桐妙子(かたぎり たえこ)さん(関市)

【2016年3月28日更新】

女性が輝ける社会を目指して、NPO法人を立ち上げた片桐妙子さん。DVに遭う女性やDV家庭で育つ子どもを支援するために活動しています。DV支援者の養成や電話相談の受け付けや面接して支援を計画。さらに裁判や就職活動の同行サポートを行うなど、被害者に寄り添いながら活動を拡大。女性一人ひとりが、その人らしくいきいきと安心して生きられる社会を願い、名古屋市内でもカウンセリングやワークショップなどをしています。

息苦しさの正体を探るうちに、
ジェンダーの問題に気づきました

 結婚後、専業主婦として家庭に入りました。2人の娘の育児に追われる中、社会から切り離され、満たされない思いを抱えていたんです。一日中話し相手は子どもだけ。「大人と話したい」と、言葉にならない苦しさや不全感を抱いていました。
 子育てが一段落した頃、友人に誘われて岐阜県主催の女性大学に参加し、文化や慣習でつくられた性差であるジェンダーについて知ったんです。社会が求める女性像と生身の私自身とのギャップが生き辛さとなっていたことに気づき、ハッとしました。もっと知りたい、学びたいと、名古屋市内で開かれた講座にも通い、性差別社会の全体像が少しずつ見えてきたんです。そのような時、身近な人がDVを受けたことが大きな転機となりました。

DVは女性差別そのもの
根源を突き詰めた先に見えた光

 身近な人がDV被害者になったことで、関連の本を読みあさりました。すると、多くの女性が夫の暴力を誰にも相談できずに悩み苦しんでいるのに「夫婦げんか」で片づけられていること、DVの背景こそが性差別社会であるということがわかってきたんです。男性が経済的、社会的に優位に立ち、女性は子育てと家事を担う。その差別構造がそのまま夫婦間にも表れ、暴力で怖がらせて思い通りにする、これがDVです。
 この問題に対し、遅れている国の対策に頼るだけでなく自分で行動を起こそうと、関市の男女共同参画フォーラムでDVに関する分科会を開催。参加してくださった被害者の女性から、「グループをつくって欲しい」と懇願されました。何とかしなくてはと悩みながら、全国各地のDV支援団体で知識やスキルを学んだり、各種研修を受講。DV対応先進国アメリカでは、DV家庭で育った子どものトラウマ対応やDV専門裁判所、シェルター、支援団体の実態を学びました。
 「手をつなぐ女たちの会」を設立し、DV支援者養成講座を開講。これをきっかけに、2005年頃から電話相談を受け付け始め、被害を受ける女性たちとの交流が生まれていきました。

社会の側面を多く学ぶことで、
自分自身が楽になるのを実感

 情報を得たり、学びを深めていったりするうちに、社会には想像以上に多くの側面があることに気づきました。「女性としてこうあるべきだ」という固定観念が薄れ、自身を押さえつけることがなくなり、とても楽になったんです。被害を受ける女性が懸命に生きる姿に心を打たれ、気づかされることも多くあります。活動を通して多くの仲間と出会い、支えてもらうことで次の行動を起こす力をもらいました。
 同時に、私の家族関係も変化したんです。もともと夫は古い考え方を持つ人だったため、私が学んでは気持ちを伝えることを繰り返しました。対等な夫婦関係を築くためには、それぞれが思いや考えをぶつけ合うことが大切。だからこそ、何度も話し合いを重ねて、互いを尊重しあえる関係づくりに励んできたんです。夫は私の活動を全面的に理解してくれています。現在、娘2人は結婚して独立し、夫と2人暮らし。家事はその時にできる人がしています。
 女性が自分らしく輝いて生きるためには、女性である私の中の刷り込まれた「女性のあるべき姿」から外れることへの「恐れ」を手放すことです。また、女性の痛みや苦しみの原因が社会構造の問題であることに気づき、女性同士がシスターフッドでつながることだと思っています。

思いは現実化できる
女性が生きやすい社会を目指して

 この20年来、余暇はアジア旅行へ。市場や路地裏を歩いて現地の子どもたちと触れ合い、ネパールでは女性の自立支援もしています。友人と一緒の時もあれば、1人で訪れることもあります。違う文化や価値観に触れ、「絶対」はあり得ないし、「多様」こそ素晴らしいと、違いを認めて楽しんでいます。いろいろな経験をする中でこれまでを振り返ってみると、挫折や遠回りがあっても強く願い行動してきたことが現実となってきました。目指すものをイメージして行動し、困った時は周りの女性たちに話してみると誰かが助けてくれ、必要な誰かとつなげてくれるのです。
 女性であるというだけで、生きにくさを感じる社会を変えていきたい。さまざまな声を世の中へ発信していきたい。DV被害者支援のかたわら、若い女性たちにも伝えられることがあればと考え、地元の高校へ出向いてデートDVについての講座も開いています。
 性によって差別されず、女性の人権が尊重される社会を手に入れるために。これからも大切な仲間と力を合わせ、女性たちとつながり、差別や暴力のない社会をつくるための活動に取り組んでいきたいです。