岐阜女子大学で管理栄養士を目指す学生を指導する藤田昌子さん。教職員として一人ひとりの学生に向き合う時間を第一優先としながら、山県市のまちおこしや市民の健康推進事業などの地域活動にも尽力し、自身のスキルアップにもつながる食事療法の研究にも力を注ぎます。
「24時間、医療従事者であれ」
自分に言い聞かせた恩師の言葉
大学卒業後に栄養士として病院に入職し、同年管理栄養士の国家資格を取得。「自分の知識や能力を患者さんの治療や療養に活かし、貢献したい」と約10年間、医療現場で患者さんやそのご家族への栄養指導に携わりました。就職後に師事した恩師から贈られた「24時間、医療従事者であれ」という言葉を胸に、勤務時間外も医師や看護師など職域の異なる医療スタッフと交流。最新医療や患者さんの情報収集をするなど、一生懸命務めました。スタッフの連携や患者さんへの意識づけが上手くいくと、患者さんの健康状態や検査が改善。「良くなったよ。ありがとう」と、患者さんから直接言っていただけたときは本当にうれしくて、医療従事者として働くやりがいになりましたね。
医療から教育へ
新たに見つけたやりがい
医療の現場で毎日大勢の人とふれあい、刺激を受けながら「いま自分ができること、すべきことは何か」を常に探求していました。平成14年に栄養士法が改正された際に現在従事する岐阜女子大学から教職への誘いをいただきました。
教職員の経験がなく、教職の免許もありません。中学・高校教育にない専門分野の指導ですので、学生たちの頭の中は真っさらです。「教えるとはどんなことだろうか?」と考えたときに、「白いキャンバスに絵の具を落とすのだ。私のひと言がすごく影響するのでは」と不安でした。
「これもご縁。やってみよう」と、自身を奮い立たせて教育現場に足を踏み入れました。いざ教壇に立ってみると自分の学生時代を思い出しましたね。昔もいまも理解しづらいポイントは同じ。学生が理解しやすいような指導を心がけ、その思いが通じたときはうれしいです。学生たちの成長が自分のやりがいにつながり、あっという間に14年が経ちました。
失敗や寄り道があっていい
やってみれば努力で解決できる
職場環境は良好で男性と肩を並べて仕事ができますし、私の探求心も満たせますが、研究に関してはなかなか要領よく進みません。学生に向き合う時間がいまは一番大事ですしおもしろい。同じ言葉でも人それぞれ捉え方が異なりますから、学生の個性に合わせた教育を常に模索しています。
授業では基礎知識に加えて自分の臨床経験も惜しみなく伝えます。医療の最先端は目まぐるしく変わっていくので、医療現場から外部講師を招くこともあるんですよ。そんなときは私も学生たちと一緒に学んでいます。学生たちの成長を見届けられるのはこの仕事の魅力であり、喜びです。卒業後の活躍を知るとうれしくなりますね。
卒業生にはいつも、私の大好きな言葉「為せばなる 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」を贈ります。自分も大学時代にこの言葉に戒められ、教員になったときは励まされましたから。
将来は心の充実を求めて
スローライフな暮らしを
教育現場での仕事は掘り下げてじっくり時間をかけますが、家事はほどほどに手抜きをすることも。週に一度は自分のための時間をつくるようにしています。近隣の温泉にゆっくり浸かったり、スイミングやアロマテラピーなどをしたりして心身をリフレッシュさせます。料理が好きで休日には時間をかけて料理をつくるのですが、これも気分転換になりますね。
夢はスローライフを取り入れること。現代はとても便利でなんでも手に入る時代ですが、周りに頼るのではなく一から自分でやってみたいですね。ずっと日本古来の暮らしや郷土料理に関心があったので、いつか叶えたい夢です。