岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

医療の世界は日進月歩
学び続け、前向きな心を忘れない
医療従事者として身を捧げ、
患者とその家族に寄り添う


岐阜県看護協会訪問看護ステーション 管理者
野崎加世子(のざき かよこ)さん(高山市)

【2016年4月25日更新】

医療の世界に人生の半分以上を捧げ、名実ともにナイチンゲールの精神を全うする野崎加世子さん。一生懸命生きている人たちの背中をそっと支え、患者やその家族、地域のために日々奔走しています。

お釈迦様に導かれたかのように
人を助ける仕事に就く

 誕生日がお釈迦さまと同じ4月8日で、父親からは「これも何かのご縁だから人のためになる仕事をしなさい」と言われて育ちました。岐阜市立看護専門学校を卒業し、岐阜市民病院に勤務。未熟児センターで看護師を経験しました。その中で、お子さんが未熟児で生まれて障がいがあり、退院する時に不安を抱えたまま家路につく親御さんの姿が忘れられませんでした。
 世間から「親が子どもの面倒を看るのは当たり前」と言われ、専門的な知識もなく、重い障がいのお子さんを持つ親御さんの場合は気の休まる時も少ないと思います。逃げ場のない暮らしを送る親やお子さんがいらっしゃるのを見ると、やり場のない心の痛みを感じていました。
 また精神科にいた頃、認知症の方も入院していました。患者さんのさまざまな人生を目にする中で、住み慣れたわが家で家族とともに暮らし、人としての尊厳を持ちながら穏やかな終末を迎えることができないものかと考えていたんです。
 結婚後は夫の実家がある高山へ移り、診療所の訪問看護部勤務などを経て、9年前に岐阜県では初めての訪問看護認定看護師の資格を取得しました。

どんな人でも尊厳ある生涯を
送ってもらえるよう支えたい

 訪問看護ステーションという仕事は、医師の指示のもと看護師や理学療法士が利用者の家庭を訪問し、在宅での療養生活を支援します。24時間365日、関係機関とも連携をとりながら、小児から高齢者まで介護保険や医療保険で対応します。
 今では地域包括ケアが進み、病気の人や障がいがある人を地域でサポートしていける環境が整ってきました。皆さまの力をお借りしながら、ここまで歩んでこられたことに感謝の思いでいっぱいです。
 やはり一生懸命生きている方のお手伝いをできることに、一番の喜びを感じます。重い障がいがある子も自宅で家族とともに生活し適切なケアを継続して療育することで、その子なりに成長します。また終末を迎える方も、家庭での暮らしを望まれれば、住み慣れたわが家で家族とのふれあいや、生活の音などを楽しみながら余生を送ることができます。私たちが誠意を持って接すれば、思いは返ってきます。家族の方が「今日は訪問看護師さんが来てくれると思うと安心します」と言ってくださるのが何よりも嬉しいです。

医療従事者として、一人の人間として
患者とその家族に寄り添いたい

 一方で難しいことは、家族や本人の本音を知ることです。看護する側の独りよがりにならず「必要な情報提供ができているか」や「医療サイドの思いを押し付けていないか」、「公平に関われているか」など、看護の倫理観に照らし合わせ、慎重に考えなければなりません。最終的に判断するのは家族ですから。
 しかし、今まで仕事が嫌とか、辞めたいなどと思ったことはありません。夫からは倒れないかと心配されるほどでしたが、仕事も家庭も精一杯がんばってきたという感覚です。子育て中の頃、夫が単身赴任していた時などは子どもにも負担をかけることがありました。それでも、子どもなりに理解して助けてくれたと感じています。だからこそ子どもが成人して「職業を持つ社会人同士として、お母さんの話を聞きたい」と言われた時は、本当にうれしかったですね。

もっと医療の充実を目指して
自身の経験を活かす今後の夢

 訪問看護ステーションでは「まちの保健室」という時間を週1回設けています。ご年配の方などが立ち寄ってお話しをしてくださるのですが、そこで会話することが楽しみなんです。
 いずれは「児童虐待SOSコールセンター」を開設したいと、他の方とも話しています。どんなに生きたくても生きられないお子さん、また小さな命を守るために必死に戦っているご家族を長年にわたりサポートしてきましたが、児童虐待のニュースを聞くたびに心が痛みます。いかなる理由があっても子どもに罪はありません。早期発見で守ってあげられたらと思います。また看護師や介護士などの医療スタッフがまだまだ不足しています。一生をかけてやりがいのある仕事ですので、仲間になってくれる人が増えてくれることを願ってやみません。