岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「過去を悔やまず、未来を憂えず 今を喜び、今を輝く」
お茶の先生から教わった言葉
「今」は過去のつながりであり、
過去の行いの結果が「今」だから、
今を喜び、いきいきと生きる事が、輝く未来を呼び込む


NPO法人飛騨高山わらべうたの会 理事長
岩塚久案子(いわつか くみこ)さん(高山市)

【2016年4月25日更新】

昨年、設立した子育て支援団体「NPO法人飛騨高山わらべうたの会」の理事長である岩塚久案子さん。「わらべうた」を通して飛騨高山の人や文化、自然の魅力を再発見し、恵まれた子育て環境を実感しながら活動を続けています。

飛騨独自のわらべうたを
まとめ上げた手作りの冊子

 私たちの活動のひとつに、歌集『ひだのわらべうた』の発刊があります。「あーたごさまに まーいって」という、愛宕神社(東山神明神社)について歌ったわらべうたをご存知ですか。歌いながら赤ちゃんの頭から顔、胸、お腹と優しく触れてあげて、最後にお腹をコチョコチョとくすぐるんです。
 飛騨地方には独自に生まれて歌い継がれてきた、わらべうたがたくさんあります。その数は、なんと100曲以上。それは親子が笑顔で向き合う時間であり、触れ合う時間を大切にしてきた飛騨の人の優しくあたたかい心が生みだした無形の宝物です。だんだんと歌われなくなり消えつつあるこの宝物を親御さんや子どもたちに知ってもらい、子育てや遊びに活かしてもらえたら...。そのような思いで活動しています。
 子育て中の親御さんたちと市民活動団体「わらべうたの会」を立ち上げたのは9年前。もともとは童謡コンサートを開催するための団体でしたが、高山市生涯学習課から「ひだのわらべうたの講習会をしてほしい」と依頼していただいたことが活動のきっかけでした。そこから地元のご年配の方々への取材を開始。つてを頼りに訪ね歩き、遊び方や歌い方を教わってビデオで撮影、それを一コマ一コマ止めながら楽譜をおこし、遊び方を図解して、手作りの冊子にしました。そして、8年がかりで書籍化の準備をし、昨年秋に第1集と第2集で合わせて50曲ほど掲載した『ひだのわらべうた』を発刊しました。

日常の営みや自然が歌われた
豊かな音楽性に魅了

 例えば『おりもなかまに』という歌は、「おりも仲間に松泰寺(しょうたいじ)、おまえ悪いで千光寺(せんこうじ)」と高山のお寺の名前を「おれも仲間にしてくれ、おまえ悪いで仲間せんでな」という掛け合いに歌い込んだ、飛騨の人の語学センスが感じられる1曲です。ほかにも『とっぺ(豆腐)の歌』、『トンビのうた(二十四日市の歌)』など、日常の営みや飛騨や高山の豊かな自然が歌になっていて「なんて豊かな感性なんだろう」と感動します。
 作成した手作り冊子は希望のお宅にお届けしたのですが、その時の出会いも忘れられません。「父が愛宕神社の氏子でね。この歌、よく私の顔をなでながら歌ってくれたんだよ」と涙ぐみながら話してくれた方。「今度、孫が東京から遊びにくるんです。その時におじゃみを教えてあげようと思って」と、見事にお手玉を操る方。そのような方々に出会い、「ひだのわらべうたを伝えていくことが家族や地域、過去と未来をつないでいくことだ」と感じて、わらべうたを絶やしてはいけないと、ますます情熱が湧きました。

子育てに活きる『ひだのわらべうた』
その素晴らしさを伝えたいと尽力

 私は高山に嫁いで13年になります。『ひだのわらべうた』の取材時におんぶしていた長女は中学校1年生、最初の講習会の時にお腹にいた次女は小学校2年生になりました。娘たちはいつもわらべうたに接し、わらべうたと共に成長しました。
 冬のある日、チラチラと雪が降り始めた中、おんぶしていた長女が「てってのかさ~」と言って、小さな手を私の頭の上にかざしてくれたこと。1年生になって「お母さん、冬のにおいがしてきた」と、声を弾ませて家に帰ってきたこと。季節に敏感で、心優しく感受性豊かな娘たちの成長を目の当たりにしてきたからこそ、「ひだのわらべうたを子育てに活かす素晴らしさを伝えたい」と思い、この活動を続けています。

今後も飛騨高山の魅力を発信し、
たくさんの笑顔と出会いたい

 毎月1回、総合福祉センターの一室をお借りして「親子でわらべうたで遊ぼう!」という場を作り、子育て支援センターや児童センター、保育園や幼稚園、老人介護施設などへ出張講座に出向いています。また毎年7月には、JAひだと食育をテーマにした「大地のめぐみサマーフェスティバル」を共催。その中でわらべうたと童謡のコンサートを行い、飛騨のものをはじめ、たくさんのわらべうたを伝えています。
 9月には飛騨の里をお借りし「五感で楽しむ飛騨のわらべうた」を行っています。ほかにも、高山市から委託を受けて、つどいの広場「チャイルドランド」を運営したり、飛騨の伝統的なひな祭りの行事「がんどうち」を行ったりします。一昨年は、小学生に飛騨高山の魅力あふれる仕事を知ってもらうため、「飛騨高山地域おしごと発見隊」開催のお手伝いをさせて頂きました。
 この活動の最大の魅力は、子どもや親御さんの笑顔に出会えること。しかしNPO法人の運営の仕方をまだ模索中で、苦労もあります。仕事などの都合で泣く泣く離れていくスタッフも。これからもっと勉強をして、体制を整えなければと試行錯誤しています。
 今後も子どもたちに何を残し、何に触れさせてあげるかを第一に考えていきたいです。まずは「飛騨高山に木育ひろばを!」という取り組みを実現したい。「子育てするなら飛騨高山」という、私が肌で感じた思いを全国に発信していきたいと思っています。