岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

バリアフリー情報を網羅した
「あいマップ」を制作
誰にとってもやさしい
住みよいまち・本巣市を目指して


あいマップ作ろう会
下川滝美(しもかわ たきみ)さん(本巣市)

【2017年3月10日更新】

バリアフリー情報を網羅した地図を制作する「あいマップ作ろう会」は、平成11年に設立しました。活動のきっかけは、代表を務める下川滝美さんが耳にした「いつでも好きな時に安心して出かけたい」の一言でした。参加メンバーは大人から子どもまでの約20人。各スポットの一つひとつを自分たちの足で訪れて手がけた地図は、現在、公共施設や駅、道の駅などの100カ所以上に及びます。

子どもから大人までが参加し
バリアフリーのマップを制作

 建築士として設計に携わる中で、バリアフリー住宅に興味がありました。身体の不自由な方にとって心地よい住まいを提供するために、障がいに関することを知りたいと、ボランティアで授産所を訪問。ボランティア活動を通して利用者の方と触れ合い、日々の暮らしの中で困っているなどを教えてもらいました。利用者の方から聞いたのは、「出先にスロープがあるかどうかを知りたい」など、公共施設や駅のバリアフリー情報を求める声。いつでも好きな時に安心して出かけたいとの思いがあることを知りました。
 自分の住むまちのバリアフリーはどうなっているのだろうと設立したのが、「あいマップ作ろう会」。「あい」は、「ITONUKI」の頭文字と英語の「I(私)」、そして愛を意味しています。当時娘が中学生だったことから、さっそく中学校に声をかけ、町の公共施設を調査。中学生や障がいのある方と一緒に、スロープや手すり、点字ブロック、段差の有無などの情報を網羅したマップの制作に着手しました。
 参加メンバーは、身体の不自由な人とその家族、建築士、小中学生を含む約20人。夏休みを利用して樽見鉄道の駅を調査したときは、一つひとつの駅に降り立ち、移動経路をシュミレーションしながら、駐車場や送迎スペース、トイレなどをくまなく調べました。大人よりも背が小さく、目線が低い小中学生の意見は、バリアフリー調査において、とても重宝します。「自動販売機の上段には手が届かない」「スロープはあるけど、長くて登るのに疲れてしまう」など、大人とは違った観点で意見してくれるのがうれしいです。
 調査は、小雨決行。「この場所は雨が降り込むなあ」「傘を差した状態だと、子連れの人は両手が塞がるから不便だなあ」と、同じ場所でも天気が違うだけで、改善点が見え隠れするのです。

進化を遂げるあいマップ
観光スポットの調査も実施

 本巣市合併後に制作したあいマップは、現在3種類。公共施設や駅、医療施設、ショッピングセンターに及びます。私たちの活動を知って、「改修すべきとところがあれば教えてほしい」と声をかけてくださる方や、指摘をしたらすぐに改善してくれる方がいて、やりがいを感じます。マップの配布場所は市役所や道の駅など。インターネット上でも閲覧が可能で、ショッピングセンターのトイレマップなどは、利用者の方にご好評いただいています。
 現在制作を進めているのが、根尾地区のバリアフリーマップです。2016年7月に開催された「夏休みバリアフリー教室」を利用して、根尾地区の観光スポットである地震断層観察館やさくら資料館などを訪問。車いす利用者や目の不自由な人、小中学生など17人が参加してくださいました。小中学生は障がい者を介助しながら、施設を調査。車いすが通る十分なスペースが通路に確保されているか、通り道に障害物が置かれていないかなどをチェックしました。目の不自由な人を介助した女の子は、「初めての経験でとても勉強になった」と話してくれました。

よりよい暮らしを支える
自助具の開発・製作も

 バリアフリー調査の他にも、「夏休みバリアフリー講習会」を開催。市内の公共施設の見学や自助具の製作体験なども行っています。
 生活動作をより容易にできるように工夫された自助具の存在を知ったのは、義母の介護がきっかけでした。助けに頼らず、身の回りのことはできる限り自分でしたいという義母のために、長い棒の先にフックをつけて、ボタンを押したりドアの開け閉めをしたりする補助道具を自作しました。
 自身の経験を活かして、自助具の提案・製作をする「あんき工房」を平成12年に設立。一般で販売されている自助具は値段が高いものも多いですが、あんき工房では100円ショップで調達した小物を用いており、安価なのが特徴です。自助具は、利用者の声に耳を傾けて製作を進めますので、当事者にしかわからない悩みや困りごとを聞くたびに、勉強になります。
 2020年に東海環状自動車道が全線開通を予定。本巣市にもICやPAが設置されるとのことで、これまで以上に多くの人が本巣市を訪れることでしょう。あいマップ作ろう会は、観光施設のバリアフリーマップ増やすとともに、誰にとってもやさしいまちづくりに力を注いでいきたいと考えています。