岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

被災地支援で気づいた
「つながり」の大切さ
助け合いの心を育み、
本巣市を住みよいまちに
していきたい


もとす つなぐ会
市川久子(いちかわ ひさこ)さん(本巣市)

【2017年3月10日更新】

阪神・淡路大震災でのボランティア活動を機に、各地の被災地へボランティアに出向いた市川久子さん。「もとす つなぐ会」を立ち上げたのは、東日本大震災がきっかけでした。被災者に託された言葉「自分のまちで災害が起こったら、逃げることや守ることをみんなに伝えてほしい」を胸に、本巣市防災訓練などに参加し、自助の大切さを市民に伝えています。ボランティア団体同士をつなげる「つなぐカフェ」を月1回開催。横のつながりをつくり、助け合いの心を育んでいます。

被災地でのボランティア活動
いまある命に感謝して

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。震源地から遠く離れた本巣市でも揺れを感じるほど、大きな地震でした。命のありがたみを再認識するとともに、「自分もなにか力になりたい」と居ても立ってもいられず、被災地でのボランティアに参加。これが私にとってのボランティア初経験でした。
 火災発生による燻った匂いと、けたたましく鳴る救急車のサイレンの音、ブルーシートに覆われた家々――。現場の様子を写真に収めようとカメラを持ち歩いていましたが、とても撮れる状況ではありませんでした。食料配布を手伝いながら、「被災者の方にどんな言葉をかけてあげられるのだろうか」と自問自答していました。
 名古屋市やその周辺を襲った東海豪雨のときにも、ボランティア活動に参加。「ボラセン(災害ボランティアセンター)」の存在を知ったのは、この時でした。ボラセンとは、ボランティア活動を効率よく進めるために業務の割り振りや調整を担う組織。現場に到着してボラセンに登録すると、自分にあった業務を割り振ってくれるのです。東海豪雨のときは、被災者のご自宅にいって、泥だらけになった家財道具を清掃。大変な目に遭われているのにもかかわらず、家主の方が何度も「ありがとう」と口にされていたのが印象的でした。
 災害ボランティアと一口に言っても、内容はさまざまです。新潟県中越地震では、ボラセンで知り合った女性と一緒に、銭湯を管理しました。余震が続く中のボランティア活動は危険との隣り合わせ。揺れるたびにパートナーの女性と手を取り合って、励まし合いました。

継続的な被災地支援を
本巣市防災訓練で活動を発信

 「もとす つなぐ会」を立ち上げたのは、2011年6月。東日本大震災の災害ボランティアに参加表明をしたメンバーが初めて顔合わせをしたときでした。集まったのは、教職員や全国社会福祉協議会スタッフなど約20人。これまでのボランティア活動が縁となって知り合ったメンバーでした。
 メンバーのスケジュールを調整し、7月に現地に向かうことが決まりました。市から利用許可が下りた行政バスに揺られること18時間。目的地である宮城県釜石市に到着しました。まちには津波で流された車やがれきが散乱。被害の大きさをまざまざと見せつけられました。
 ボランティア活動を通してさまざまな出会いがありました。そのひとりが、東日本大震災の当日、巨大な津波がまちに押し寄せる様子をビデオで撮影していた瀬戸元さんです。瀬戸さんからは「遠いところをよく来てくれたなあ」と労いの言葉をいただくとともに、「何度も来てもらわなくてもいいから、その代わりに、自分のまちで災害が起こったら、逃げることや命を守ることをみんなに伝えてほしい」とアドバイスをいただきました。被災者の言葉をみなさんに広く伝えることが私たちの使命だと感じています。
 被災地から戻ってきたあとも、バザーなどの収益金を寄付したり、募金で購入した鉢花をメッセージともに送る「東日本を花で包み込むプロジェクト」を実施したりと、支援活動に力を入れています。また、災害ボランティアでの経験を広く伝えたいと、地域に向けて活動内容を発表。2014年の本巣市防災訓練では、岐阜工業高等専門学校と株式会社佐合木材(本社/美濃加茂市)が合同開発した、ダンボール製の避難用仮設テント「オクタゴン」を展示しました。

ボランティア団体をつないで
助け合いを育む「つなぐカフェ」

 「市内で活動するボランティア団体をつなげ、助け合いの輪を育みたい」との思いで、2015年に、つなぐカフェ(本巣市ボランティア交流会)を始動。市内には個々でボランティア活動に励む方がたくさんいらっしゃいますが、これまで交流の場はほとんどありませんでした。以来、月1回のペースで開催。カフェを通して世代を超えたつながりを紡いだことで、情報が交換でき、新たなアイデアが生まれたりしています。いろんなジャンルのボランティア団体が集まるので、今まで知らなかったことを発見できるのが新鮮でおもしろいです。また、「スタッフが足りなくて困っている」と聞けば、助け合う仕組みもできてきました。
 本巣市は、縦横に広がる大きなまち。ここで生まれ育った人もいれば、この地に新しく移り住んだ人もいます。地域やまちづくりに対する思いはさまざまですが、有事に助け合える絆をつくっていきたいですね。今までは、ボランティア活動が中心でしたが、今後は講座などを開いて、地域のみなさんの防災意識を高めるお手伝いをしたいですね。