岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

現場での「ありがとう」が
活動を続ける支えになる
自分が暮らす地域を
何か困った時に助け合える
安心できるまちにしたい


NPO法人まごの手クラブ 理事長
伊藤千代子(いとう ちよこ)さん(海津市)

【2017年3月27日更新】

暮らしのなかにある困ったことを、互いに助け合うという仕組みで生まれたNPO法人まごの手クラブ。理事長を務める伊藤千代子さんは、いまも現場で活躍しながら、自分が暮らすまちをより良くしようと先頭に立って引っ張っています。

家族の介護の経験から
福祉の世界の戸を叩く

 私が福祉の道に入ったきっかけは、家族の病気でした。義父は糖尿病で入院し、義母も認知症を患っていたので介護が必要だったんです。どうすればいいのか困っていた時に、県がホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の講座を開いていると知りました。取得を目指したのは、自分の両親も含めて介護するためなのはもちろん、資格があればいつでも社会復帰できると考えたからです。
 介護は24時間体制。ちょうど子育てをしていた時期だったので非常に大変でした。私自身が大したことはできず、やり遂げられたのは家族の協力があったからだと思います。ただ、母がなくなった時に夫が言ってくれた言葉が忘れられません。「妻に感謝しています」。精一杯がんばっていたことを、夫が理解してくれていたのは本当にうれしかったです。
 親の介護が落ち着くと、旧平田町社会福祉協議会の有償ボランティアになりました。社協のパートヘルパーとしても活動していましたが、市町村合併の時にあまり行政を頼りすぎてしまうのもよくない、独立したほうが利用者のためになるのではと考え、NPO法人を立ち上げました。それが、現在の「NPO法人まごの手クラブ」です。

かゆいところに手が届く
ともに助け合うサービス

 「まごの手クラブ」は、平成14年、旧平田町社会福祉協議会の時に発足。平成15年1月にNPO法人を取得し、同年4月からスタートした住民参加型在宅福祉サービスです。利用したい人、福祉サービスをしたい人がそれぞれ登録し、事務局が両者を橋渡しする役割を担います。サービス内容は介護に限らず、送迎などの外出援助、家事の援助、子育て支援などさまざま。時には高齢者の話し相手になったり安否確認をしたり、ほかには花の水やりや犬の散歩などもしています。
 法人名の由来は、「かゆいところに手が届く」サービスを目指したから。「困った時はお互いさま」、「みんなで互いに助け合っていこう」を合言葉に、地域に住む人によって安心して暮らせるまちにしていくのが目的です。
 担い手と受け手がそれぞれ会員なので、対等な立場で安価で均一なサービスを受けられます。また、担い手にはできる範囲でのサービスをお願いしているので、空いた時間を有効活用して地域に貢献でき、生きがいになると喜んでもらえています。

現場で得たことを活かし
より良い福祉を提供したい

 私はまごの手クラブで理事長を務めていますが、担い手となる会員の都合が合わない時など、いまも現場に出ています。現場で介護をしているうちに必要を感じて、平成22年には介護福祉士の資格も取得しました。誰かについていくのではなく、みんなを引っ張っていこうと考えています。
 また、まごの手クラブの理事会は頻繁に開かれています。活動をしていて起きた問題や改善点などを共有して、どうすればより満足してもらえるサービスになるだろうと活発に意見を交わします。高齢者は知識や経験が抱負なので、介護の現場で学ぶことも多いです。モチベーションを高めてくれる、うれしい言葉をかけてもらえる時もあります。そうして得たものも、みんなに共有するようにしています。

感謝の言葉が活動の支え
これからも元気に続けたい

 福祉の現場は、ハードなことも少なくありません。夜中に電話がなり、「救急車はいやだから、病院まで送っていって」といわれ、無理して出向いたことも、せっかく仲良くなった利用者が、認知症になり、どろぼう扱いしてきたこともあります。
 ですが、うれしい言葉を受けることも多いのです。「待っとるから来てなー」と楽しみにしてくれる声を聞くと、こちらも笑顔になります。また、連絡がなくて心配していたら、利用者の家族から亡くなったと連絡があり、「いつも気にかけてくれていてありがとう」といわれたことも。人の役に立っている。地域に貢献できていると実感できる瞬間です。
 自分たちの力で、より良く、安心して暮らせるまちに、と始めたまごの手クラブ。これからも成長しながら続けていきたいと思うのですが、担い手となる会員の高齢化が課題になっています。若い世代にも活動の魅力を理解してもらって、多くの人に参加してもらえるとうれしいです。