岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

自分自身で感じてきた
女性が生きづらい社会
そんな社会を変えていくため
出会った仲間とともに
子育てを支援


特定非営利活動法人くすくす 理事長
安田典子(やすだ のりこ)さん(大垣市)

【2017年4月20日更新】

女性が生きやすい社会を目指し、子育て支援を行う特定非営利活動法人「くすくす」。キッズピア大垣交流サロンなど、さまざまな場で母親と子ども両方が過ごせる居場所を提供しています。立ち上げから現在に至るまで仲間とともに奮闘してきた理事長、安田典子さんに話を聞きました。

子どもも親も成長できる
連続した子育て支援を

 私が理事長を務める「くすくす」は、「男女共同参画社会形成」「自らの生活を主体的に決定する住民自治によるまちづくり」を子育ての分野から実現しようとして生まれた特定非営利活動法人です。「キッズピアおおがき交流サロン」や「ふれあい子育てひろば☆チコチカ」の委託業務をはじめ、孫育てサロン、キャリアデザイン講座など、さまざまな場で子育て家庭のサポートをしています。
 「くすくす」という名称は、クスノキから来ています。クスノキは新しい葉が出揃うのを待って、古い葉が落葉していきます。そんなふうに連続した子育て応援ができたらいいなぁという思いと、子どもや親に対し、「くすくすと笑える・すくすくと育つ」という応援がしたいという気持ちが込められています。

生きづらさの解決のため
積極的に知識を求める

 私は関西で生まれ、結婚を機に大垣市に引っ越しました。夫と出会う前は会社に勤めていましたが、「私は浮いているのではないか」と悩みを抱いていたんです。「自分が世間とずれているから、人間関係がうまくいかない時があるのでは」と考えていました。
 そこで、大垣市に来てから、南山短期大学人間関係科に編入学したんです。最初に興味があったのはボディワークだったのですが、学びを深めるうちに「女性学」に出会いました。男性が教える女性学ってどんな講義なんだろうと、軽い気持ちで受講したのですが、私が悩んでいたことへの答えを見つけることができたんです。
 「女らしさ・男らしさ」「男の役割・女の役割」、どうしてもその考えに馴染めませんでした。私の母はまじめな人で、よく衝突したのを覚えています。そうした制度や仕組みが社会に根付いているから、私は生きづらいのだと感じました。私の悩みの原因は、「心」だけにあるのではなく、世の中の仕組みや歴史を知らなかったからだと気付かされたんです。
 子育てをしていても、自分が向いていないと改めて思うことがありました。母が働いていたため、なかなか一緒に過ごせなかった経験があり、自分が母親になった時にはできるだけ一緒にいてあげようと考えていたんです。しかし、いざ子どもと一緒に過ごそうと思っても、遊び方がわからない。義理の父母や夫が上手く子どもをあやしているのをみて、「私は子どもとの接し方を知らない」と愕然とし、猛烈に子育てについて学びはじめたんです。
 
行政と手を取り合って
子育てする女性を支援

 第1子を出産したあと、子どもとの時間を多くとるためにフルタイムの仕事をあきらめていました。ちょうどその頃、大垣市が男女共同参画講座を企画する「女性アカデミー企画委員」の募集記事に目がとまり、「あなたの感じている女性問題」というタイトルにひかれて応募しました。
 女性アカデミー企画委員は、自分たちの聞きたい講座を企画し、運営。子育てや法律、女性が働くこと、女性の老後について一緒に考えたりする講座をつくりました。メンバーは主婦が多く、さまざまな考え方や立場、経歴を持つ人が参加しており、多くを学び、考える機会となりました。豊かな生活を送るためには、法律や仕組みに頼るのではなく、自分がしなきゃいけないと実感したんです。メンバーとは、いまでも仲良くしており、意見を出し合ったり、活動を応援し合ったりできる関係です。
 「くすくす」も、「在宅で育児をしている人こそ学びの場、集える場所が必要だよね」というメンバーとの会話から生まれました。当時は子どもを預けて母親が講座に行くと、あまり良くないような風潮がありました。そこで、母親は学ぶ機会を得られて、子どもも楽しく過ごせる「子どもも成長する託児付き講座」を開催したいと助成金を取得。私たちの聞きたい「子育て講座~母親サロン~」を実施しました。募集人数を上回る応募があったことは、私たちの悩みや思いはその当時の子育て中の女性の想いであると気づかされました。
 同時に行政に対して「こんなサービスがほしい」ときちんと提言していくこともしました。行政と協働で事業実施することにより、より多くの方に利用していただけるようになりました。さらに金銭面などのリスクは軽減し、安定した事業を提供。また多くの団体、人に協力をいただけるという安心感もありました。
 女性にとって人生の転機であり、良くも悪くも変わる機会となる子育ての時期を手助けし、さらに世の中について知るチャンスである子育て期に、もっと女性が自分の意見を発信できる場があれば、女性も社会も変わるのではと考え、平成14年、特定非営利活動法人「くすくす」を設立しました。

子育て支援を通して目指す
女性が生きやすい社会

 子育て支援を通して気づいたことがあります。完璧な母親であろうと頑張れば頑張るほど、子どもに失敗をさせないようにしてしまうように思います。チャレンジに失敗はつきもの。いい母親であろうと気を張っている人は、失敗しそうになった子どもに手を差し伸べてしまうでしょう。「母親は張り詰めすぎて疲れてしまう。子どもも失敗から学ぶ機会を逸してしまう。それは本当に子どものためなのだろうか」と思ったんです。
 講演や支援活動の現場では、一方的に話をするのではなく、子どもと母親両方の気持ちになって考えるようにしています。母親には母親の、子どもには子どもの考えがあります。両者に互いの考えを伝えて、互いを思いやれるように橋渡しをできるのが、本当に楽しいです。
 また、組織運営においても面白みがあります。利用者から苦情や要望をいただくことがあるのですが、スタッフと相談し、全国の子育て支援団体の人々にもアドバイスをもらいながら、より良く変えていく、新しい形にしていけるのはとても楽しいです。
 昔の私なら、いまのように人前で発信するようになるとは考えませんでした。思い切って理事長を引き受けたことで鍛えられ、さまざまな場所でお話しする機会を得ています。また、「くすくす」でいろんな人と出会い、その人の考え方、人生の選択を知る機会も持てました。自分とは異なる考え方に触れるのは、とても勉強になります。そんな楽しさ、自分を成長させてくれるものはすべて、最初に前向きに行動したから得られたものです。ポジティブアクションの大切さを改めて実感しています。
 今後も、私自身の経験から得たこと、子育てについての思いを発信していきたいです。応援活動に若い人が増え、地域に子育て支援の輪が広がっていくと良いですね。大垣市が女性にとって生きやすい社会に変わっていくよう、微力を尽くします。