岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

中学時代の私の胸に響いた
「自灯明」の言葉
未来ある子どもたちにも
自分を大切に生きてほしいと願う


公文大垣あやさと書写教室 指導者/ほほえみ相談室 相談員
箕浦欣子(みのうら よしこ)さん(大垣市)

【2017年4月20日更新】

大垣市の小中学校には、不登校児童や別室登校の子どもたちの学校や教室への復帰を支援する「ほほえみ相談室」があります。箕浦欣子さんは中学校の相談室で生徒たちと毎日関わる傍ら、火曜と水曜の夕方には自宅で書写教室を開いています。さらに、自治会長や「大垣夢ある女性の会」の会長にも就き、忙しい日々を過ごしていますが、その優しいまなざしは常に子どもたちに向けられています。

子どもたちの未来に
寄り添いたくて相談員に

 大学を卒業後、教員として3年間勤務して結婚を機に退職。3人の子どもに恵まれ、専業主婦をしていましたが、字を書くのが好きだったことと、「子どもに教えてほしい」と近隣の人からの声で書写教室を自宅に開設しました。指導歴は19年になります。
 学校教育の現場からは離れていましたが、3人の子育ても一段落した頃、知り合いの校長先生からお声がかかり、再び非常勤として、学校現場に復帰。その後、大垣市の行政が小中学校に設置した「ほほえみ相談室」の存在を知りました。これは不登校児童の学校復帰や、別室教室に登校する子どもの学習や集団に適応する力を養い、心の安定を図るために小中学校の校内に教育相談専門の「ほほえみ相談員」を配置して、相談活動をするところです。相談員の役割は生徒や保護者からの相談を受けながら、子どもたちと学校や教室、担任をつなげること。自分もそんな子どもたちと関わっていきたいと思いました。相談員として最初は小学校に配属され、4年前からは現在の中学校で勤務。生徒たちと心が通うとやりがいが感じられて、現在まで11年間続けています。

神様に「もう一度子育てを」と
いわれている気がします

 毎朝、教室で生徒を迎えるとき、私は「今日はよう来たねー」と、必ず声をかけます。生徒それぞれがさまざまな問題を抱えています。その原因が本人の甘えなのか、それとも事情なのかを見極めなければなりません。事情は家庭環境や対人関係、勉強面、発達障がいなどケースバイケース。親としての私はわが子に対してどちらかといえば放任だったのですが、相談員の今はじっくりと一人ひとりに向き合っています。まるで、神様に「今度はちゃんと子育てを」といわれているような気がしてなりません。
 相談活動はまず相手の言葉に耳を傾けて、しっかりと話を聞いてあげることがとても大切。中学生になると、「どうして自分は生まれてきたのか、なぜここにいるのか」と自問自答します。将来のこと、生き方など、親にはいえないこともでてくるのです。子どもたちのプライバシーは厳守した上で、子どもと親、教室をつないでいくのが私の役目。そう心がけて活動する私を、「自分たちの良いところを褒めて、認めてくれる人」と慕ってくれると愛おしくなります。そして自己肯定感を高めることはとても大事で、一つで良いので人より秀でたものを発見できると良いですね。学校や教室に復帰させるのが相談室の役割ですので、相談室の居心地が良すぎても問題だと思いますが、まずは「ここなら来たい」と思える心の居場所を作ってあげたいと思っています。相談室の同窓会を企画してくれたり、大学進学をお母さんと報告しに来てくれたりする生徒もいて、彼らの心の成長はうれしい限りです。

プライベートはのんびりと
子どもたちに癒やされる

 3人の子どもたちも成長して出て行き、8年前の夏、夫が急死してからは、柴犬の武蔵と猫のグリージョとの暮らしなので、プライベートな時間はゆっくりと流れています。
 突然、夫を失ってしまったので、急に家のなかがシーンとしてしまいましたが、ちょうど夏休みでしたので、書写教室にはいつも通り子どもたちが来てくれて、とても慰められました。
 断り切れない性格で、自治会長のほか男女共同参画を啓発する「大垣夢ある女性の会」の会長も引き受けてしまい、講座の企画運営や年誌「Donna」の発行にも携わることに。会を通して輝く女性、生き方がキラッとしている人との出会いがあり楽しいのですが、時間の捻出が大変です。学校でそんな私の話をすると「先生、本当に忙しいんやなあ」と逆に子どもたちが気づかってくれて、思わず笑ってしまいます。

学校版ソーシャルワーカーを
理想として視野を広げた勉強を

 いろんな役を引き受けていることで行政とのつながりや人脈が広がり、自分のできることの幅が広がってきました。最近は学校版ソーシャルワーカーを理想に、もっと視野の広い活動がしたいと思っていて、子どもたちの学校生活はもちろん、家庭生活、さらには精神的自立までをサポートできたら、と考えています。
 私は中学生のときに知った自灯明・法灯明という言葉をずっと胸に抱いてきました。仏教の教えで、「自分を灯火にし、自分を大切にして、お釈迦様が説いた教えを大切にしなさい」ということ。自分の人生は、自分自身で歩んでいかなければなりません。誰も代わってはくれません。子どもたちにも自らを灯として、強く生きていってほしいと願っています。