岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「“豊かさ”が仕事になる時代」
周りの人々の支えがあって、
今がある
日本に来てから、
感動と感謝の毎日です。


一般社団法人ギフトピア 副代表
張訳丹(ちょう いーたん)さん(高山市)

【2017年4月20日更新】

留学のために中国から訪日した張訳丹さんは、結婚を機に高山市朝日町(旧朝日村)へ移住。豊かな地域資源を国内外の人々に伝えたいと、「一般社団法人ギフトピア」を設立し、インバウンド・アウトバウンド事業を展開しています。朝日町の豊かな暮らしを住むように体験できる宿泊施設「喜楽園」をはじめ、SNSインフルエンサーによるPRや各宿泊施設のインバウンド対策なども担います。

2年前に朝日町(旧朝日村)へ移住
知られざる日本の魅力との出会い

 数年前、留学のために中国から日本へやって来ました。幼少期から抱いていた日本のイメージは、高層ビルやネオン街。ハイテクが進み、皆が忙しく働いている様子でした。
 留学先は岐阜大学。抱いていたイメージとは対照に、自然と観光資源の豊富さに驚きました。畑や田んぼの生命力や、各地に湧き出る天然温泉などの資源に触れ、経済大国であるにも関わらず、文化と環境が大切に守られていることに心を動かされました。留学生活ではたくさんの方々と交流し、さまざまな日本文化を体験。日本と日本人に対して、さらに好感を持つようになりました。
 同じくして、夫の仕事の都合で朝日町に移住。人口2千人に満たない小さなまちで、大自然の豊かさや地域に住む人々の優しさを日々実感しています。朝日町は人情にあふれたあたたかいまち。子どもからお年寄りまで笑顔が素敵な方ばかりで、困ったときは助け合い、農作物が収穫できたら互いで分け合うような、温かい心が根付いています。

一般社団法人ギフトピア設立
日々の充実が顧客サービスの充実へ

 自然の恵みが生活の一部であり、地域産業によって日々が成り立っている朝日町での暮らしこそが、日本のあるべき姿とわたしは考えています。そんな「暮らしを通じて受け取った『恵み』を、次は私が誰かに届けたい。日本で体験したことを多くの外国人に伝えたい」と一念発起。夫とともに、「一般社団法人ギフトピア」を立ち上げました。事業では、地域資源を活用したインバウンド/アウトバウントサービスを展開。中でも、グリーン・ツーリズム民宿「喜楽園」では訪日外国人の方たちが、朝日町の大自然や文化、暮らしを体験しながら長く滞在できる場を提供しています。滞在中には、着物体験や、地元のお母さんたちに学ぶ郷土料理教室なども実施。料理教室では、夏の「ほう葉寿司」や冬の「飛騨牛すき焼き鍋」づくり体験など、旬の味わいを楽しんでいただけます。
 日々の暮らしで見つけた地域資源を広く伝えていくことが私のモットー。提供するプログラムには、自身が見聞きした体験が活かされています。私にとっては、私生活が仕事のようなものです。自身が充実した毎日を送らなければ、良い情報を提供できません。その心がけが、私生活が充実すれば仕事も充実し、仕事が充実すれば私生活も充実するといった、よい循環を生み出しています。また、事業の一環で「観光おもてなし科」(岐阜県公共職業訓練)や「接客中国語講座」(高山商工会議所)の講師を務めています。講座では、海外のお客さまから聞いたことや、翻訳のお仕事で得た情報を生徒の皆さんにお伝えしています。

「"豊かさ"が仕事になる時代」
人と人の出会いを紡いで

 高山市の冬は長く、また交通が不便であるため、お客さまをなかなか受け入れられないのが残念。なによりも冬の美しさを伝えられないことに歯がゆさを感じています。大変なこともたくさんありますが、国内外さまざまな人々との出会いがこの仕事の魅力。そして人と人の出会いをつないでいけることが喜びです。
 朝日町に移ってきたときは、就職先が少ない中、自身が学んだ知識をいかに活かすか悩んでいました。そこで気がついたのは、「豊かさを追求していけば、仕事を作りだせる」ということ。周りの人々に応援していただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
 つらいときに自分を支えてくれた言葉が「なんくるないさー」(沖縄の方言で、なんとかなるさの意味)でした。とてもポジティブで、私からみなさんに贈りたい言葉でもあります。

感謝と感動を原動力に
さらなる地域活性化を促したい

 思えば、日本に来てからさまざまな人に助けていただきました。家族のように接してくれた大学の先生、日本語も分からなかった頃、日本文化や日本の事情を たくさん教えてくれたアルバイト先の社長、朝日町に移住してからたくさん応援してくれた地元の人々など、名前を上げればきりがありません。
 日本に来てから出会った人々はすべて私の恩人です。その感謝と感動への思いが、「海外の人に日本の魅力をもっと伝えたい」という現在の仕事につながっています。
 現在の夢は、地域資源に新たな価値を見出すことで地域活性化を促し、日本の過疎地に機能価値を持たせて人々の豊かさを繋いでいくこと。同じ価値観をもつ方と新たな事業も手がけてみたいですね。旅行前の宿泊予約などの「旅前」へのアプローチも重要ですが、今後は「旅後」についても考えていきたい。一回の旅で終わらせるのではなく、旅での出会いや経験をさらに深めていただけるような仕組みをつくっていきたいです。「旅後」のプログラムをきっかけに、現地の人と交流が続いたり、再訪日してもらえるチャンスが生まれたりすることにもチャレンジしていきたいです。