土岐市内から、肥田川に沿うように車を走らせること約30分。凛とした空気が漂う山腹に立つCafe & Gallery SOYACOCOは、オーナー佐藤朱理さんの作品のほか、全国から集まった作家の陶器などが並びます。手作りの菓子と温かい飲み物、そして静かで穏やかな時間を提供してくれます。
北海道で育ち作陶が縁で岐阜へ
ギャラリーとカフェを経営
私が生まれ育ったのは、北海道です。札幌にある美術大学で陶芸を専攻し、卒業してすぐに陶磁器で有名な岐阜にやってきました。岐阜県立多治見工業高校陶磁器科学芸術科で学びながら、アルバイトとしてSOYACOCOで働き始めたのが、土岐に来たきっかけです。目の前には小川が流れ、豊かな緑に囲まれています。自然を感じながら、ギャラリーの作品に囲まれた生活を送っていました。15年ほどの歴史があるSOYACOCOは、前オーナーの作品と他作家の個展を開催。週末はカフェをオープンして、遠方からのお客さんも多く足を運んでくださっていました。
4年前、その前オーナーが海外へ行くことになったのです。店内に窯があり、陶芸をしながら自分の生活を送ることもできる、とっておきの場所で、ここを引き継ぐ決意をしました。
全国から集まる魅力ある作品を
曽木へ集う人たちに伝えていきたい
靴を脱いで店内に入ると、すぐに暖炉があり、テーブル席やソファー席で冬でも暖かく過ごしていただけます。夏は窓を開けていれば、市街地よりも涼しく感じますね。現在、カフェは1カ月のうちの10日間、営業。ウェブサイトやインスタグラムなどのSNSでオープン日をお知らせしています。提供している菓子もすべて私の手作りで、自分が人にすすめたい、安心できる素材を使った菓子を出すよう心掛けています。
岐阜の陶芸界は、若手も多く、伝統的なものから革新的なものまで、さまざまな作品を目にする機会や、考え方を聞くことができます。それが岐阜で陶芸をすることの魅力だと思っています。また、陶芸にとどまらずモノづくりをする人が多いので、刺激を受ける毎日です。私が手掛けているのは、白磁のアクセサリー。シンプルだけれどアクセントがあるものをイメージしています。フォーマルな場面でも、カジュアルにも使ってもらえることが特徴です。自分の作品にも、いろいろなものの影響が加わっていると感じています。
ギャラリーには洋裁、器、ジュエリーなど、さまざまな作品を展示しています。この場所に集まるものをたくさんの人に知ってもらい、モノづくりの魅力を発信していきたいです。
多くのものに触れて視野を広くもち
作品を目的に足を運んでくれる人を増やしたい
ギャラリーでいろいろな作家の展示会をすることで、私の陶磁器作品にも生かしてきました。私にとって土岐が便利なのは、日本中どこへいくにも「中間」であることです。名古屋市が近いのでお気に入りの展示会に出かけることも容易ですし、京都など少し離れた場所でも訪れやすいのがいいですね。そういったときは、陶芸以外のものを見るようにしています。ガラスや木工など素材が離れているほど、刺激を受け入れやすいと感じています。
仕事をしていないときでも、やはり美術館などでいろんな作品を見ることが好きで、息抜きでもあります。多くのものを目にして、いい作品をつくって、「土岐の陶磁器を見たい」と訪れてくれる人が1人でも増えるとうれしい。そんな役目を果たしていきたいです。そして、この町が誇る産業を広げて、守っていけたらうれしいです。