岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「性別に関係なく活躍したい」
幸運に恵まれ、叶えた夢
「働くママ」として
これからも歩み続けたい


多治見市消防本部消防総務課主任 消防副士長 救急救命士
古川真夕(ふるかわ まゆ)さん(多治見市)

【2018年3月30日更新】

3人の女性消防士が所属する多治見市。その一人が消防副士長の古川真夕さんです。多治見市消防本部北消防署に勤務し、火災や救急、救助など、冷静で的確な判断が問われる現場で、命と向き合ってきました。現在は出産を控え、消防総務課に異動。産前休暇を取得中で、2年半後の職場復帰を目指しています。

真っ先に命に寄り添うため
救急救命士の資格を取得

 現在、女性の活躍が推進されている消防士ですが、2016年度には、全国の女性消防士をモデルにしたポスターなどに登場させてもらい、モチベーションが上がる良いきっかけになりました。「女性も消防士として活躍できるんだ」と、希望を与えられたらいいですね。
 私がこの道を歩み始めたのは、大学生のころです。医療分野の仕事に興味があり、地元の多治見市を離れ、救急救命士の資格を取得できる東京の大学に進みました。
 進学先を決める際、母親からは「医療分野の仕事に就きたいのなら、看護師はどう?」と勧められたこともあります。現場に出れば危険と隣り合わせの仕事ですから、心配だったのでしょう。それでも通報を受け、真っ先に要救助者の元へ駆けつける救急救命士への憧れが強く、また「男性が多い職場で、性別の違いに関係なく活躍したい」という思いもありました。私は頑固な性格ですから、夢を伝えて親を説得しました。
 当時はちょうど、女性消防士が生まれ始めたころでした。在学中、多治見市でも初めて女性消防士が誕生したと聞きました。「多治見市もついに、女性へ目を向けてくれたんだな」とうれしくなり、卒業したら地元へ戻ろうと決意しました。

チームで協力して行動
救助者へ最善の判断を

 女性の採用が増えているものの、いまだ男性の職業というイメージが根強いのでしょう。「職業は消防士です」と名乗ると驚かれる人が多く、「体力面で負担が大きいのでは?」という質問をよく受けます。
 たとえば、火災現場などで着用する防火服は3キロもあります。さらにヘルメットや呼吸器など、全部で20キロほどの装備を背負って活動するので、最低限の体力を身につけるトレーニングは必要不可欠です。
 しかし、何より大切なのは「協調性」です。基本的にチームで行動するため、一人だけ際立って体力があっても活かしきれません。互いに命を預け合い、自分の力だけでは解決できない事態も、連携して最善を尽くしています。
 万が一の時に、命を救う仕事は限られています。夢を叶え、市民の安心・安全を守る仕事ができていることに、やりがいを感じています。待機中はいつ指令が入るか分からないので、オン・オフの切り替えは大変です。車両点検や事務処理、トレーニングなど、どんな作業をしていてもすぐに中断し、出動準備を整えます。
 出動後はチームでミーティングをします。「こうした方がその人のためになったのでは?」「別の言い方もあったんじゃないか?」と反省点を探り、次に活かせるようにしています。私たちの仕事に正解はないので、退職するまで最善の答えを模索し続けるのではないでしょうか。
 救急で出動した際、女性の傷病者から「女性の方でよかった」と声をもらったときは、とてもうれしかったです。市民から信頼され、仲間から頼られる消防士でありたいです。

出産・子育ての経験を活かし
後輩がより働きやすい環境を

 2016年9月に結婚し、現在は主人と2人暮らしです。泊まり勤務で丸一日会わない日もあり、家事をすべて任せきりにしてしまう場合も。義父が消防士だったため、生活リズムなど仕事に対する理解があり、とても助かっています。
 公私の切り替えをするコツは、リフレッシュすること。趣味の時間をつくり、おいしいものを食べたり、旅行をしたりしています。小学生の時からずっと続けているのが茶道です。静かな空間で茶を点てるうち、心が落ち着き、集中力が高まります。任務では冷静な判断が求められますから、茶道で培った集中力が役立っていると思います。
 2017年10月末に出産を控え、事務作業を担う消防総務課へ異動。育児休業を取得し復帰された先輩がいたので、私もスムーズに受け止めてもらえました。現在は産前休暇中で、復帰は2年半後の予定です。
 子どもの誕生は楽しみですが、復帰後を考えると不安は尽きません。日々、医療技術は進歩していますから、一から学び直す必要があるでしょうし、仕事の内容もがらっと変わっているはず。
 全国の女性消防士と年に一度交流する機会があり、子育て中の悩みなど情報を交換しました。「時間があるのは、育児休業中だけだからゆっくり休んで」「家庭と仕事、区別して生活を」など、貴重な意見を貰えたので、参考にしていきたいです。
 子どもにとって母親は一人です。子どもと過ごす時間を大切にしながら、目指すは子どもから尊敬される「働くママ」です。
 全国を見れば、消防署長になった女性もいます。今はまだ自分が管理職になる想像はできませんが、年数を重ねていく中で得た経験を後輩たちに伝え、働きやすい環境を整えていきたいです。