みなみまちづくり協議会の会長を務めるかたわら、音楽療法士として、高山市内外の高齢者施設や病院を訪問する黒田久美子さん。2つの活動は内容こそ違えど、人々に笑顔を届けています。10代から南地区に暮らし、まちの変遷を目にしてきた黒田さんが、協議会の会長として取り組むのは、助け合いの心が根づくまちづくりです。
協議会会長として地域課題を解決
イベントや講座で住民の絆を育む
旧清見村に生まれ、10代で高山市街地に移ってきました。今でこそ家が多く立ち並ぶ南地区ですが、当時は製材工場や材木置き場が広がり、家はまばらでした。もともと駅東にあった南小学校が現在地に移転したのは、昭和37年。当時は児童数が多く、各学年6クラスの時代もありました。
高山駅を中心に東西に広がる南地区には、3,454世帯、7,962人が住んでいます(平成27年4月1日現在)。近年は、ドーナツ化現象が進み、特に駅東エリアの高齢化が進行。住宅地が密集する駅西エリアに比べ、子どもの数が極端に少ないのです。核家族化や共働きなど、地域住民のライフスタイルが多様化する近年は、抱える問題も地域ごとにそれぞれ異なります。地域課題を解決し住みよいまちをつくるべく、平成27年にみなみまちづくり協議会が発足。平成29年度は、「みんなで きずこう 住みよいまち~お互いを思いやり、助け合う、活気のあるまちづくり~」を基本方針としています。
協議会は、地域づくり部・広報部・社会教育部・青少年部・福祉部の5つに分かれて活動しています。町内会や子ども会に所属していないご家庭にも漏れなく情報をお伝えするために、広報部では、広報誌やウェブサイトのPRに力を入れています。
毎年10月には、南小学校と連携して「ふれあい文化祭」を開催。公開授業や講演会は、地域住民の方も参加ができ、好評を得ています。さらに各部会が主催するバザーやスポーツ体験なども実施。青少年部によるワークショップでは、アイロンビーズやプラバンづくりなどが楽しめます。さらに、松倉中学校や飛騨高山高校による部活動の紹介も行うなど、地域の中学・高校も巻き込んで、交流を創出しています。
高山に根付く伝統文化を体験する、花餅づくり講座や、宴会の席でうたわれる「めでた」の講座も開いています。高山市にはお酒好きな方が多いので、ワイン講座も好評です。
まちづくりの活動は苦労が絶えませんが、たくさんの方に活動に参加してもらうことにより、地域の絆や助け合いの仕組みを育み、住みよいまちをつくっていきたいですね。
保育士・幼稚園教諭から
介護士、音楽療法士へ
まちづくりの会長を務めるかたわら、音楽療法士としても活動しています。もともと幼少期から音楽が好きで、中学・高校時代には、吹奏楽部に所属していました。短大で幼児教育を学び、卒業後は、保育士・幼稚園教諭として保育園や幼稚園に勤めました。
声帯を痛めてしまったことをきっかけに園を退職。当時、市内には高齢者向け施設が立て続けに開設されていたことから、知人の勧めもあって、介護士の資格を取得。重度の認知症を持つ人が生活する施設で勤務し始めました。
人と向き合うという意味では保育士・幼稚園教諭も介護士も一緒ですが、仕事内容は大きく異なりました。時に、利用者の方から心ない言葉を浴びせられたり、手を上げられたり辛い思いもしましたが、「ありがとう」「すまないねえ」というねぎらいの言葉をかけられると励みになりました。
そんな中で、出合ったのが音楽療法でした。岐阜県音楽療法研究所(当時)が主催する講座が高山市で開催されることを知り、受講。2年間の課程を経て、講座を修了しました。
音楽療法士として独り立ちするまでに10年。講座を終えたあとも、勉強・実践する日々が続きました。提出したレポートが不合格だったこともありますし、遠方まで講座を受けに行かなくはならないときもありましたが、ともに学ぶ仲間の存在があったからこそ、今日まで続けてこられたのだと思います。
音楽療法士の活動は月に13日。市内外の高齢者向け施設や病院へ出向いています。プログラムは約1時間。唱歌や歌謡曲を歌いながら、利用者さんとともに体を動かします。音楽は誰もが楽しめるもの。聴いたり歌ったりすることで、脳の活性化が期待できます。音楽療法を受けたあとに、認知の症状が一時的に改善されたという声を聞くとうれしいですね。
音楽療法士の他にも、高齢者や障がい者を対象に、オカリナ演奏を指導。指導をきっかけにサークルが誕生し、クリスマスコンサートなどにも出演するようになりました。音楽の魅力は、心に癒しを与えてくれること。音楽を楽しむ喜びを、今後もみなさんに届けたいですね。
自身にとってかけがいのないもの
音楽であふれた毎日を
孫がおり、さらに放課後児童クラブで支援員をしているため、童謡やアニメ番組の主題歌、最新のポップミュージックなど、幅広いジャンルの音楽を聴いています。協議会の活動や音楽療法士、放課後児童クラブ支援員と日々忙しいですが、どれも好きなことなので苦になりません。次回の音楽療法プログラムには、どんなことをしようか、どうすれば喜んでもらえるかなどを考えていると、とても楽しいです。最近は、音楽療法に力を入れていた聖路加国際病院名誉院長・故・日野原重明先生の著書を読み、さらに学びを深めています。
時間ができたら、昔演奏していたフルートにまたチャレンジしたいです。私よりもご年配の方が演奏されているのを見て、「私もまだ遅くないかも」と勇気をいただきました。
音楽を好きな気持ちは幼少期から変わりません。今後も、音楽からは離れられないと思うほど、私にとっては大切なものです。