郡上八幡市街地から国道256号を東へ進むこと、約30分。オオサンショウウオが生息することで知られる和良は、きれいな水と、豊かな自然がまちの自慢です。「道の駅 和良」の敷地内にある販売店「珍千露屋(ちんちろや)」には、和良の特産品「長寿だんご」をはじめ、「ちんちろ屋 もろみみそ」や漬物など、数々のヒット商品があります。それらを生み出してきたのが、珍千露の代表を務める大澤淑恵さんです。平成24年には、観光客に地元の魅力を発信する「郡上旅先案内人」として就任。にこやかな笑顔で、地域の魅力をPRしています。
特産品を通して
長寿のまち・和良をPR
郡上市八幡町の生まれで、結婚を機に和良にやってきました。当時、八幡町から和良に嫁いだ人は私がはじめて。知り合いはいませんでしたが、まちのみなさんが温かく私を受け入れてくださいました。その後、和良村商工会議所(当時)で約30年、定年まで勤めました。
平成14年、「道の駅 和良」が指定管理者制度に移行。和良を活性化させるべく、新たな道の駅のあり方を模索していました。和良をPRする特産を作ろうと、和良加工生産組合が設立。商工会で働いていたことを縁に、私も仲間に入れていただきました。農産物の生産者をはじめ、漬物や味噌などを加工する人が集まり、道の駅の敷地内にあった小さな倉庫を店舗として組合はスタートを切ったのです。
栄養価の高い豆に着目して誕生したのが、珍千露名物の「長寿だんご」。商品名は、全国市区町村別の平均寿命ランキング(平成12年)で、旧和良村の男性の平均寿命が日本一であることに由来します。豆腐と白玉粉を使用しているためお餅のような食感で、自家製の甘タレには、特産のアガリクスを使っています。
だんごは丸型が一般的ですが、長寿だんごは四角くて、田楽のような形をしているのが特徴です。丸型だと一つひとつ丸める手間がかかってしまうことがネックでしたが、知り合いの大工さんが四角の木型をつくってくださったので、とても楽になりました。
時期を同じくして、長寿のまちとして注目を浴びていた和良。報道関係の方々が和良を訪れ、長寿だんごを取り上げてくださいました。この機をチャンスと捉え、各地の物産展に出展。だんごを通して、「長寿のまち 和良」をみなさんにPRしました。各地でのPR活動が功を奏し、今では各地からたくさんの方が和良に足を運んでくださるように。おかげさまで長寿だんごは、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に親しまれています。
数々のヒット商品を開発
近年は高校生とのコラボを実施
平成20年には「株式会社珍千露」として法人化。和良加工生産組合の頃から数えると、設立から15年が経過しました。これまで約80種のオリジナル商品を開発。現在は常時50種を生産・販売しています。
長寿だんごにつづくヒット商品が、「ちんちろ屋 もろみみそ」です。地元産の米麹を使ったもろみみそに、トウガラシや山椒、くるみなどを組み合わせ7種類を展開しています。
一味や生姜、山椒などの粉製品も好評です。特にこだわっているのは、粉末山椒。通常の収穫期は6月ですが、私たちは完熟をさせた山椒を9月に収穫して粉末状に加工しています。香りがとても高く、県外から取り寄せる人もいるほどです。高校生とのコラボ商品「白美人漬」は、郡上高校森林科学科の生徒さんがつくった大根を私たちが加工。とても美味しいので、ぜひ味わっていただきたいですね。
後世へつなぐ活性化のバトン
新旧住民が支えあうまちを
私が50年以上前に和良に嫁いできた当時は国道沿いに店が立ち並ぶなど、村内には150軒ほどの商店がありました。人口が流出し、高齢化が進行。後継者不足が問題になり、商店の数が減っています。珍千露も、世代交代を考えていかなくてはなりません。「まちを活性化させたい!」と、地元のみなさんが力をあわせて作り上げた会社ですから、後世につなぐ責任が私にはあります。規模を縮小してもいいので、長く続けていきたいですね。
和良の魅力は、オオサンショウウオが棲むほどきれいな水と、豊かな自然。そしてなによりも、人の温かさです。近年は空き家などを利用した若い世代の移住が増えていますので、さらにPRに力をいれていきたいですね。まちが大きく栄えることを望んではいません。もともとの地域住民と若い人が、ともにまちを支えあっていけたらと思います。
好奇心旺盛な性格で
いろいろなことにチャレンジ!
これまで料理をはじめ、茶道や華道、和裁、洋裁などさまざまなことを学んできました。料理には特に興味があって、旅行先で食べたものやテレビで学んだレシピを再現するのが好き。好奇心旺盛なところが、商品開発に役立っているのかもしれませんね。
息子がパソコンを買い与えてくれたのを機に、60歳でパソコンデビュー。ワードやエクセルなどを使って、給料の支払い書や、出勤簿、仕入れ書などを作れるまでに上達しました。
朝から晩まで仕事のことを考えるほど、いまは仕事が趣味のようなものですが、息抜きの時間には、スマートフォンやタブレット端末でゲームを楽しんでいます。どこにでも持ち歩いているので、「80歳近くのおばあには似合わん趣味や」とよく言われてしまうんですよ(笑)