アピ株式会社でキャリアアップ推進室室長、長良川リサーチセンター製品開発顧問を務める荒木陽子さん。働き方改革で、社員それぞれが自分の人生に合わせてキャリアアップできる環境作りを目指しています。
自立した女性を目指し
大学で医学博士を取得
健康食品や医薬品の開発、製造、販売をするアピ株式会社。私は社員の働き方を改善するキャリアアップ推進室室長、研究開発の指揮を執る長良川リサーチセンター製品開発顧問を務めています。
入社したのは19年前。岐阜大学医学部で15年働き、医学博士を取った後に研究開発部門で採用されました。私は今年で70歳を迎えましたが、現在では当たり前になっている女性の社会進出は、私が働きはじめた当時はまだまだ浸透していませんでした。苦労も多く、辞めようと思ったときも少なくありません。それを思いとどまらせたのは、専業主婦として働く母の姿です。
男性と同じぐらい必死に働いているのに、経済的に自立していない母には自由に使えるお金がありませんでした。家族を守り、子どもを立派に育ててくれた母を尊敬していましたが、子供心に「私は経済的にも自立した女性にならなければ」と強く思いました。その思いが私の原動力となっています。
ライフイベントと両立した
キャリアアップのための環境を
私は現在、午前中は長良川リサーチセンターで研究開発や若手研究員の指導に携わり、午後は本社でキャリアアップ推進室の仕事をしています。
キャリアアップ推進室が設立されたのは、2013年4月。当初は女性キャリアアップ推進室という名前でしたが、「どうして女性だけなんだ」と声が上がり、キャリアアップ推進室に変更しました。
社員全員のキャリアアップを目指すために、最初に力を入れるべきは女性の労働環境改善です。妊娠、出産、育児など、女性はどうしても男性より出世しづらくなってしまいます。ライフイベントとの両立だけでなく、産休中や育休中でもキャリアアップしていける制度を作ろうと決意しました。
最初に行ったのは、全女性社員へのアンケートと面談です。工場で働く社員との面談では、生産ラインをストップさせないよう日程調整するのがとても大変でした。
面談の中で感じたのは、「制度だけ作っても利用できる環境がなければいけない」ということです。周囲の理解や協力がなければ、使えるはずの制度も使わないままになってしまいます。男性社員も含めた全社でセミナーや研修を実施し、意識改革、風土改革に取り組みました。
また、時短勤務制度の対象を、子どもが「3歳になるまで」から「就学前まで」に延長。2014年には、社内保育施設「あぴっこランド」を工場に、次いで2つ目を本社にも増設しました。
人との交流で新たな挑戦
1人では思いつかない知恵を編む
仕事の楽しみは、たくさんの人と交流できること。設立当初は浸透していなかったキャリアアップ推進室の存在が社内に広がり、多くの社員が相談に来てくれます。「自分も育休をとろうと思う」と男性社員が話しにきてくれたのがとてもうれしかったです。
さまざまな挑戦ができるのも魅力です。若い社員の相談を受け、問題解決に取り組むうちに、自然と新しい挑戦をしています。多くの人と会う中で知識を身につけ、知恵を編み出していくのは、いつも新鮮でやりがいがあります。
忙しい日常の息抜きには、女子会をしています。私は料理をつくるのが趣味なので、たくさん作ってふるまうのが気分転換です。また、67歳からマラソンも始めました。仕事の合間に練習をして、マラソン大会出場を目指しています。
縁ある人を笑顔にしたい
「継続は力なり」を座右の銘に
座右の銘は「継続は力なり」。改革には反発や課題がつきものですが、決断をするときには大変な方を選ぶことが、後の自分のためになります。フレックス制度や、ジョブローテーション、在宅勤務など、私生活とキャリアアップを両立させていける会社作りを今後も続けていきたいです。
会社をリタイアした後も、女性が強く生きるための手助けをしたいと考えています。「女性教育」というと大げさですが、自分に縁がある人々が笑顔で生きていけるように、これまでの経験からアドバイスをできれば良いと思っています。
輝く人のところにチャンスや人がやってきます。輝くためには努力が最も大切です。今頑張っている人、これから頑張る人が憂いなく努力をしていけるように、今後も応援を続けていきます。