高校卒業後、岐阜市の市川工務店の一般事務で就職した加藤さんは結婚退職し、一度は職場から離れました。その後の結婚生活のなかで自分を見失いかけたとき、姉から勧められて復職しました。上司の後押しもあり、建築施工管理技士の資格を取得。総合職へと転換して現在は建築現場に出向き、施工における書類作成、写真の管理、行政などへの事務手続きを包括して担い、現場で働く技術者たちの支援業務を行っています。
復職後に自分を信じて奮起
社内で女性初の現場支援に従事
姉も市川工務店で働いていますので、この会社に就職することに何のためらいもなく一般職に就きました。とても働きやすい職場でしたが、当時は若すぎて仕事に対しての未練なども感じることなく3年間勤めて、あっさりと結婚退職したのです。しかし、結婚生活に幸せを見出せず、結局は一人になって自分を見つめ直すことに。自分と向き合う作業は情けなさを再確認して苦しみを伴いましたが、心の整理がつき、もやもやしていた気持ちが一掃できて、まるで霧が晴れたように前向きになっていきました。そんなときに姉から産休で欠員する事務職の募集があることを聞き、「これはチャンスだ。いろんな意味でクリアになったのだから、また一からがんばってみよう!」と思ったのです。
復職後、あっという間に2年が過ぎて上司から総合職への転換を勧められました。総合職に就けば扱う仕事の幅も広がりますし、現場でしか扱えない仕事に携わることができ、責任は増えますが、その分、やりがいも増えます。これも「折角のチャンス!」と迷わずに建築施工管理技士2級の資格取得に走りだしました。平成29年、無事に資格取得をし、総合職として社内では初となる女性の建築現場支援業務に従事。現在、各現場に仮設される事務所で働いています。
一つの建物ができていく
その過程を間近で感じる喜び
土木や建築の施工現場はさまざまでおもしろい。日々できあがっていく様子が直接見られます。たくさんの人々の力が集まり、一つの建物ができることにも感動しています。そして「こんな風にして建物や道ができるんだ!」という驚きや、一般事務では知り得なかった知識を自然に会得することができます。また完成時には現場監督や技術者のみなさんと同じ達成感に浸り、仮設事務所を撤収するときは感慨無量です。一つの仕事を終えたら次の現場へと移るのですが、気分が変わり、新鮮な気持ちで仕事に取り組めるのも魅力ですね。
自分のがんばり次第、気の持ちようでそこで働く人々と深く関われますし、「楽にスムースに仕事ができた。ありがとう」と感謝されると本当にうれしい。現場は男性しかいませんので、面倒な人間関係もなく、みなさんがさっぱりしていて必要以上の気づかいも不要。私にはぴったりの職場なのだと思います。
友人とのグルメ旅で
エネルギーを補給します
定期的に、友達と旅行に出かけています。その土地の自然に触れたり、おいしいご飯をいただいて、仕事のみではなく生きていくエネルギーをもらっています。そんな風に感じられるのも、毎日が充実していることで気持ちに余裕が生まれたからだと思います。昨年の11月は福岡を旅行しました。美味しかったのは博多で食べた水炊き。家でも食べられる料理ですが、やはり現地でいただくと、ひと味もふた味も違い、大満足できました。
現在はひとり暮らし。普段の休日はダラダラと家で過ごさず、予定や目的がなくてもなるべく外へ出かけるようにしています。一人の時間は自分の気分次第でいいと思って楽しんでいます。今はそんな時間を大切にしたい。
今やりたいと思っていることがキャンプ。大勢で行くのももちろん楽しいですが、目指すはソロキャンパー。お気に入りのテントやギアを並べて、自分の好きな料理を作って食べ、夜は静かな空間でゆっくり自分を見つめなおす。危険なこともあるかもしれませんが、きっとかけがえのない時間であり、自分の経験値にも繋がると思います。一人でも強く、輝ける女性でありたいですね。
現場支援できる後輩を育てたい
信頼され、導く力を養っていく
近い将来の目標としては建築施工管理技士の1級取得です。より任される仕事が増えていくと思いますし、技術者のみなさんの負担が軽減できるようになると思います。現場に出向くことができる社内初の女性ですので、女性ならではのしなやかな考え方や、気配りなどが現場での対応に役立つのも実感できています。しかし、そうした人間が社内で私一人だけなのが悩み。社内で同じ職種の女性がいたら、思いを共有でき、意見交換などもできると思っています。
そこで今一番ほしいのが後輩です。いつかはやってきてくれると信じ、そのときに備えて人を育ててリードしていく能力も身につけたいと考えています。だから仕事でもプライベートでもさまざまなものに挑戦し、いろんな人に出会って刺激をもらって学びながら広い視野を持ちたいです。
好きな言葉は「思い立ったが吉日」。これまでの経験から「思っているだけでなく、動き出せ!人生は移りゆく。うずうず、モタモタしているともったいない」と思うようになりました。そして、その場面やその時々で、「今、自分にできることを精一杯やろう!」と、心に決めています。