平成17年、津保川の流れる近くで開所した児童心理療育施設の桜学館。その施設で生活部長を務めているのが、池戸裕子さんです。心理的・情緒的要因によって集団になじめず不登校やひきこもり状態になったり、人間関係が上手くいかず悩んでいたりする子どもに対し、心理療法や生活治療、学校教育を通して支援しています。医療・福祉・教育が一体となった施設では、子どもに寄り添ったきめ細かいサポートを提供しています。
憧れだった児童福祉の道へ
自然の中で育つ子どもたち
児童心理療育施設の桜学館は、高齢者福祉総合施設や事業所内保育園などを展開する社会福祉法人桜友会によって運営・管理されています。平成17年6月の開所と同時に、私も桜学館で働き始めました。
小学生と中学生を利用対象としており、現在28人が入所と通所をしています。建物のすぐ裏には青々とした木が茂り、子どもたちはグラウンドで元気に遊び、自然の中でのびのびと過ごしています。
もともと私は、精神科病院で精神保健福祉士(PSW)として携わっていました。そんな中、30歳の時、知人から桜学館の開所の話を聞きます。縁があって病院に勤務していましたが、大学では福祉について学び、とりわけ児童福祉に関心があったんです。チャンスだと思い、転職を決意しました。
指導側として施設を見守る
成長への実感が喜びとなる
桜学館で働き始めてから約13年が経ち、現在は新人職員の指導や施設長の補佐などを主な業務としています。また、児童相談所の措置で子どもを引き受けるため、その窓口も担当。見学者に対して、施設長と私のどちらかで施設案内をする時もありますね。
立場上、子どもと接する機会は少ないですが、入所から時が経る中、子どもたちの成長を傍で感じられるのはうれしく思います。仕事の励みになっているんです。
桜学館は、デイルームや浴室などを備えた生活棟と、教室やコンピューター室がある学習棟で構成。あらかじめ決められた1日のスケジュールに沿って、入所児と通所児が生活しています。さまざまな悩みを抱えている子どもと触れ合うため、職員同士の協力と理解は欠かせません。
人相手の仕事に感じる難しさ
最新の知識を吸収していく
桜学館には指導員16人、臨床心理士5人、事務員1人、看護師1人が在籍しており、子どもの心身のサポートをしています。そんな職員にいきいきと働いてほしいため、個々の長所を活かせる職場環境の整備に注力。私自身、多くの上司に育てられました。「責任は私が取るから自由にしなさい」という言葉を上司からもらい、私のしたいことをさせてもらえたんです。それは現在の原動力にもなっています。
子ども、職員どちらにせよ人相手の仕事は対応の仕方が一人ひとり違うため、時には力不足を痛感。どのような対応が最適か、毎日模索しています。
また、子どもの悩みも個々に異なるため、いつまでも同じ知識を持っていては通用しません。常に新しい情報を取り入れるようにしています。
継続する大切さを意識して
公私両立を図りながら邁進
頼れる職員のおかげで、私は休みの時、完全にオフモードです。実家へ帰省するほか、ウインドーショッピングや図書館へ行ったり、自身の部屋の掃除をしたりしてリフレッシュしています。体調管理が重要ですから、水泳などに通って体力作りもしたいですね。
全国で見ても児童心理療育(治療)施設の数は少なく、中部ブロックでは愛知県3カ所、三重県1カ所、岐阜県では桜学館のみです(平成30年1月末現在)。今後は、児童心理療育(治療)施設の認知度向上に努めていきたいと思っています。
私が小学生だった時の恩師の言葉「継続は力なり」は、今でも私の心の中にあります。日々の積み重ねが自分の糧になります。私だけでなく、職員と子どもも一緒になって輝けるよう、より良い職場環境と施設作りを心がけていきたいです。