土岐市役所の裏にある、お好み焼き「ファリーヌ」。店長の土本ゆみさんは、明るくおおらかな人柄で、訪れた人を元気づけています。昼食に来た人が、話し込んでついつい長居してしまうことも多いといいます。その人の体調にあわせて手がける料理は、心あたたまるやさしい味がします。
生き生きとした仕事を求めて
10代で「ファリーヌ」を開店
生まれも育ちも土岐市。自宅から歩いて行ける場所で、祖母がお好み焼きや焼きそば、たこ焼きなどを提供する飲食店を経営していました。おいしい物を振る舞ってお客さんに喜んでもらう祖母の仕事を見て、「自分もこういう生き生きとした仕事がしたいな」と思うようになり、小学生の頃には既に飲食店を経営したいと考えていました。食べ歩きが趣味となり、名古屋や大阪に行っては食べ歩いていました。こうした背景から、自然とお好み焼き店を経営しようと思い始めたんだと思います。
高校卒業後は調理師免許を取るため、名古屋の国際調理師専門学校に進学。19歳で卒業してすぐ、平成2年の4月に、お好み焼き店「ファリーヌ」をオープン。場所は、家族の協力が得られる地元を選びました。
名前の候補は「お好み焼きゆみちゃん」などありましたが、自分の名前を看板にするのは恥ずかしい年頃だったので、フランス語で「小麦粉」を示す「ファリーヌ」に落ち着きました。
お客さんと店員の垣根を越えて
一人ひとりに合った料理を提供
オープンから28年。土岐市役所のすぐ裏という立地のため、昼は市役所の職員さんが来てくれます。
お客さんとの距離が近いのが店の特徴。そのおかげか、常連になってくれる人が多いです。毎日来て、人生相談をしてくれる人や、オープン当時から、今も週に一回通ってくれている人もいます。常連さんがお客さんを連れてきてくれて、その方が常連さんになってくれるといった、良い連鎖ができています。満席になると手が回らないことも多く、お客さんが片付けを手伝ってくれることもあるんです。
お好み焼きだけではお客さんも飽きてしまうので、焼きそばに変えたり、どんな味が食べたいかリクエストを募ったりしています。体調が優れないお客さんがいれば、おかゆや豆腐を使ったお好み焼きを提供することもあります。
お客さんが違えば、作るお好み焼きも異なります。いろいろな方が来てくれるのが楽しみでもあり、不安でもあります。そんなところに、毎日やりがいを感じています。
友達が増える楽しさ
自然と人が集まる場所へ
地域おこしをする土岐市青年団体協議会には、17年ほど在籍しています。在籍している会員の中では、一番の古株です。これまでに、お見合いを目的とした「ふれあいパーティー」の主催や、図書館にひざ掛けの寄贈などをしました。青年団体協議会の会合で集まる場所は「ファリーヌ」。会議室などとは違って、気軽に集まってもらっています。
親戚に誘われて始めたママさんバレーも、もう20年続けています。運動はどちらかといえば得意ではないのですが、スポーツを通して友達が増えるのは楽しいですね。
青年団体協議会やママさんバレーで知り合った方が、「ファリーヌ」に来て、また新たな出会いを育んでいます。お店を通して、人と人の交流が生まれるとうれしいですね。
ずっと仕事に打ち込んできましたので、子どもの面倒を満足に見てあげられない時もありました。それでも家族や常連さん、友達が支えてくれたおかげで、今まで続けてこられました。定休日は日曜日だけなのでなかなか遠出はできませんが、友達が「ファリーヌ」に集まってくれるので、満足しています。
娘が「店を継ぎたい」と言ってくれていますが、まだ任せられません。娘は就職したばかりなので、今の仕事が軌道に乗って、本当に継ぐ決心をしてくれたら考えたいと思っています。