岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

まちづくりには
行動力を持った人材が不可欠
前に踏み出す第一歩を
お手伝いしていきたい


特定非営利活動法人まちづくりスポット 代表理事
竹内ゆみ子(たけうち ゆみこ)さん(高山市)

【2018年7月17日更新】

天満町にある商業施設「フレスポ飛驒高山」の一角にあるコミュニティ交流スペース「まちスポ飛騨高山」。ここを拠点に、活動の創業支援や、地域の課題解決に取り組んでいるのが、「NPO法人まちづくりスポット」です。代表を務めるのは、インドでの水力発電など国際支援に取り込んできた団体の事務局を務めた竹内ゆみ子さん。国際支援事務局員として培った知識やノウハウを、まちづくりに生かしています。

インドの山奥で
突きつけられた高山の課題

 高知県に生まれ、高校卒業後に上京。デザイン学校卒業後は、国内外を旅して回りました。やがて、高山の木工・陶芸・染色を柱に、技術者を養成する専門学校「飛騨国際工芸学園」の開学(1988年)準備に携わるパートナーとともに、高山市へ移住しました。
 その後、パートナーはインドの友人が代表を務めるNGO団体から支援要請を受け、国際支援団体「ソムニード(現/NPO法人ムラのミライ)」を設立。南インド・アーンドラプラデシュ州への支援を始めました。「ソムニード」の広報を担いながら、私は市内でデザイン事務所を設立。右足でデザイン、左足で国際支援の、二足のわらじをはく日々を送りました。
 1998年、インド・セミリグダ地区での渓流発電が成功。私は、支援をしてくださった会員のみなさんとともに現地を訪ねました。「貧しい村に、電気を灯してくれてありがとう」と、感謝の意を述べた村長さんが、最後に次のように私たちにたずねたのです。「子どもに幸せになってもらいたいと、町の学校に行かせる。しかし町に出ると子どもたちは帰ってこなくなる。帰ってきても、それを生かす仕事は村にない、どうしたらいいですか?」。
 頭をハンマーで殴られたような衝撃を受け、私たちは何も答えられませんでした。
 都市部への人口流出はインドの山奥に限ったことではありません。高山市をはじめ日本の地方都市でも起こっている深刻な問題です。これまで見て見ぬふりをしていた地元の問題を、遠く離れたインドの地で突きつけられたのです。

国際支援から
高山市のまちづくりへ

 インドで衝撃を受けてからというもの、高山市の地域課題を見過ごすわけにはいかなくなりました。帰国後は「ソムニード」として地域の課題解決に着手。2000年、空き家を利用したコミュニティ交流の場「空町倶楽部」の活動支援を開始しました。
 活動で明らかになったのは、その頃「まちづくりは行政の仕事」と考える住民があまりにもたくさんいることでした。まちづくりを自分ごととして住民が捉えない限り、地域活性化は望めません。人口が減れば、税収も減る。限られた予算をどのように活かすかは、私たちにかかっているのです。
 人口減少はさまざまなところに影響を及ぼしていました。その一つが結婚で、担い手不足を解消すべく、中国人女性と結婚する農家の男性が増えていました。女性たちは日本語を話せず、受け入れる側の親族ももちろん中国語を話しません。育った環境や文化、習慣が異なるわけですから、やがて不和も生まれます。頼れる友人も周囲におらず、精神的に追い詰められてしまう女性も少なくありませんでした。
 そんな話を友人から耳にし、支援を決意。まずは、同じ境遇の中国人女性たちが交流できる場をつくるために、「日本語コミュニケーション講座」を開講。初めは、中国人だけでなく日本人のサポーター役を設置することで、親族以外の日本人と知り合う機会も創出し、外国籍の方が地域に溶け込める仕組みを整えました。

企業と協働してNPO法人を設立
高山の活性化を見据えて

 国際協力と地域活動を両立する中、大きな転機となったのが「フレスポ飛驒高山」の誕生でした。フレスポとは、フレンドリースポットのこと。「地域に密着したNo.1のショッピングセンターづくり」をテーマに、大和リース株式会社が手がけている商業施設です。現在全国で100カ所以上展開していますが、そのフレスポ内に、コミュニティの交流スペース「まちスポ飛騨高山」を設置しました。大和リースの商業施設として交流スペース設置の第1号が高山でした。
 フレスポの開発に際して、大和リース株式会社は新たな商業施設のあり方を模索していました。買い物をする人以外にも足を運んでもらいたいと、施設内にコミュニティースペースの設置を決定。施設の利用を促すべく、高山市内のNPO団体に積極的に声をかけていたのです。地域やNPO活動について、意見を交換していくうち、互いに意気投合。商業施設「フレスポ飛驒高山」内にある交流スペース「まちスポ飛騨高山」を拠点として、活動をスタートしました。そして、その運営を担うための新たな中間支援団体「NPO法人まちづくりスポット」の設立を目指したのです。
 2016年に「NPO法人ムラのミライ」を退職し、現在は「NPO法人まちづくりスポット」に専念。他のNPOの相談業務や地域活性化の活動支援をしています。対象は違えども、支援する姿勢に変わりはありません。対象者が主体的に行動できる支援を心がけています。まちの活性化には、実行力を持った人材が不可欠です。個人ではわずかな力しか出せなくても、団体が後押しすれば大きく前進できます。私たちの役目は、体制を整えてあげること。土の中でうずくまっている芽を掘り起こして、芽生えるための手助けをするのです。それぞれの夢や課題解決に向けて踏み出すサポートが、いずれまちの活性化につながると考えています。

地域産業に担い手創出を目指し
移住者体験事業を進行中

 「まちスポ飛騨高山」では、さまざまなイベントを実施。イベントスペースとして場所を提供することもあり、子育て中のお母さん方が趣味のクラフト作品を定期的に販売する模擬店舗は人気を集めています。近年は、「介護のためのほっとする談話室」の開催にも力を入れています。ポイントは、「相談」ではなく、「談話」であること。行政の相談窓口に足を運ぶまでもない、小さな困りごとや疑問を、複数人で意見交換し合う場として好評を得ています。悩みは口にするだけで気持ちが少し楽になったりするもの。深刻な面持ちで訪れた方が、話をしていくうちに表情がパッと明るくなるのを見るのがうれしいですね。
 観光都市として、世界各国から旅行者が訪れている高山市ですが、人口は減り続けています。観光都市であるにも関わらず、観光産業の担い手、つまり、旅行者をもてなす人が減ってきているのです。地域産業の担い手を増やすべく、来年度は空き家を活用した移住者体験事業にも力を入れていきたいと思っています。