郡上市出身で現在は関市に住む小酒井千恵子さん。介護職一筋、ハードワークに追われながらも仕事に魅力を感じてやりがいをもち、家庭を切り盛りしています。
大好きな祖母が認知症に
それがきっかけで介護職へ
「ほほえみ福寿の家」で、訪問介護員、特養・短期入所・医務・訪問介護の部長として働いています。大好きだった祖母が、私が大学生時代に認知症になりました。次第に私のこともわからなくなり、外に出て迷子になったり言動がおかしくなったり、最終的には寝たきりのまま亡くなりました。そんな祖母の様子を目にしたことがきっかけで、大学卒業後、ためらうことなく介護職に就きました。本当は大学すら辞めて、直ぐにこの道に進みたかったくらいでした。
現場でヘルパーとして介護にあたる傍ら、部長になってからは法人全体の運営管理に携わり、ヘルパーの稼働管理をしながら日々の業務をしています。部下の心身の管理はもちろん、自らが部署全体のモチベーションを上げて仕事に励む事ができるよう、取り組んでいます。部下が働きやすい環境を作り、組織や部下を成長させていきたいと思っています。
介護職に就いて間もないころ、夜勤中にトイレで転んだ利用者さんがいました。当時、怒られてばかりの自分を日々見かけていたのでしょう。痛いはずなのに「私のせいでごめんね、私のせいで怒られるやろ」と言われたんです。思わず、二人で泣きました。慣れない忙しさに挫けそうになっていましたが、利用者さんの優しさに触れ、介護に対する覚悟ができた気がしました。
利用者さんの気持ちを汲んで
その時々に合った対応を
仕事に対しては忍耐強いのですが、職員に対しては気が短くなっていることもあるのでは、と反省することも。中途半端が嫌いで、これと決めたら最後までやり切らないと気が済まない性格でもあります。
訪問介護では、最初は拒否反応を示される利用者さんもおられます。プライベートに立ち入られるのはいやだ、という思いが働くのでしょう。それでも、徐々に受けいれてくれるようになった時はうれしいですね。また訪問介護を通じて、利用者さんのご家族の考え方も変化していくようです。これまで介護に関わることのなかったご家族がオムツを変えるようになったり、積極的に介護に参加するようになってくださるのも、喜びです。
利用者さんがなかなか寝付けない時はオムツの中が汚れているなど何らかの原因があり、そのサインを出しているもの。利用者さんの気持ちを汲んで、その時々に合った対応ができた時は、きちんと向き合えたと達成感が得られます。認知症の方の「ありがとう」の言葉は本物ですから、利用者さんを大切に思う気持ちがどんどん湧いてきますよ。3Kなどと言われることもありますが、介護はやりがいのある仕事です。
子どもや友人と出掛けるのが好き
プライベートも充実の日々
シングルマザーとして、小学校6年生の娘を育てています。娘はしっかりとした性格で、自己管理ができているので、「勉強しなさい」「宿題をしなさい」などと急かしたことはありません。
仕事への理解もあり、帰るのが遅くなっても文句ひとつ言いません。保健室に行くと親に連絡が行くからと、我慢してしまうほど、けなげな性格です。ですので、これまで子どもがいるからといって、仕事上で困ったことがないんです。家に仕事を持ち帰った時も、「一緒に宿題をやるよ」と隣に座ります。学童保育に預けていたころなどは、迎えが必要だったので「私のせいで、あんまり仕事ができなくてごめんね」と言っていたほど。口にしないだけで、きっと、淋しい思いもさせているのでしょう。
家事では、レトルトや外食が嫌いな娘のために、味つけをした唐揚げやハンバーグの種など、下ごしらえしたものを冷凍するようにしています。一から作ったものでないと嫌がるので大変ですが、今はずいぶん慣れました。
高校時代からの友人と会うことが、息抜きになっています。休みの日に家にいるのは嫌なタイプで、海や山へ行ってバーベキューをしたりとアウトドア派ですね。子どもとディズニーランドに行ったり、毎年夏には20人ほどで、福井県の無人島へ出かけるのですが、テントに泊まって泳いだり、魚を獲ったり。蟹を食べることを目的にした旅行も、毎年恒例になっています。
仕事が大変でも、プライベートが楽しいからリセットできているのかも。こうした、親子で楽しみにできる行事の存在がありがたいです。
職員同士が信頼しあい
頑張る力を引き出せるように
介護福祉士の資格を取ったのが13年前、続いてケアマネージャーの資格を10年前に取得しました。ですが介護は奥が深く、毎日が地道な勉強の積み重ねです。制度もよく変わりますし、なにより人を相手とする仕事。その人その人によって接し方も違ってきます。これ、といった答えはありません。
目標は、もう少し「聞き上手」になること。つい自分の思いを伝えることを優先したくなるので、きちんとスタッフの意見も聞いた上で、自分が求める介護の形を伝えて指導できるようになりたいです。
介護はチームで行いますが、スタッフそれぞれが介護に対する考えが違う点が難しいですね。意見を出し合って納得して、利用者さんやご家族のことを考えた介護ができるようになればいい。みんなで一つの方向を目指し、団結して、お一人おひとりを大切に思って介護をしていきたいです。
そのためにも職員同士が信頼しあい、コミュニケーションをとって、お互い頑張る力を引き出せる環境づくりが不可欠です。つらいこともありますが、やめたいと思ったことは一度もありません。介護の仕事を、これからも続けていきたいです。