2013年10月、大垣市日の出町にオープンした福和家(ふくわうち)。店主の清水淳子さんは自らも作品を制作しながら、ハンドメイド作家から委託を受け、着物を利用した洋服・バッグ・小物などの作品を販売していました。現在は店を閉店し、会社員として働く傍ら、市民団体の代表として活動。福和家を通して築いた縁を生かし、展示販売会やワークショップを行っています。仕事に、趣味に、子育てに、忙しい毎日です。
眠っている着物に新たな命を
裁縫を趣味から仕事へ
福和家は古くて着用しない着物をリメイクし、新たな命を吹き込んだハンドメイド商品のショップです。自分が作った商品以外に、ハンドメイド作家の作品を委託販売しています。
もともと服作りに魅力を感じ、服飾が学べる高校へ進学。次第にコンピュータに興味を持つようになって、高校卒業後は情報処理の専門学校へ進み、IT系の企業へ入社しました。
会社に勤めている間は自分でスカートを縫う程度で、趣味として裁縫を楽しんでいました。しかし着物をリメイクする趣味を持った友人との出会いをきっかけに、コンピュータとずっと向き合う生活から、「縫物を仕事にしたい」という思いが強くなっていきました。
シングルマザーで子どもを育てており、「学校から帰ったとき、お母さんが家にいてほしい」という娘の言葉にも背中を押され、思い切って会社を退職。店舗兼自宅として、中古の一軒家を購入したんです。半分はリフォームし、もう半分は手を加えず古家のイメージをそのまま活かして、2013年10月開業しました。私が45歳、娘は小学5年生のときでした。
友人たちからアイデアを募った店名「福和家」の由来は、「鬼は外 福は内」のことわざから。「楽しいことがいっぱいの店にしたい」という願いを込めました。
向上心を持って作品を改善
お客様の笑顔がやりがい
世界に一つしかない「一点もの」であるのが、ハンドメイドの魅力です。作品の個性を気に入ってもらい、「こういう商品がほしかったの」とお客様の喜ぶ表情を見ると、うれしくなりますね。
福和家に出品している作家の人数は15人ほど。40~70歳代まで、幅広い年代の女性が協力してくれています。オーダーを受け付けており、お客様の要望に合った作家へ依頼を振り分けるのも私の仕事です。
自分で制作する場合もあり、地下足袋へのリメイクを得意としています。地下足袋を作り始めたきっかけは、「和の素材を使って足元を飾れないか?」というお客様の要望からでした。「よし、やってみよう!」と引き受け、完成品を見せてはお客様の要望を取り入れて進化させていくうちに、作るコツを覚えていきました。綿を使っているので、汚れても手洗いできます。靴の底はゴムを使用し、雨の日でも安心。「この商品は私にしかできない!」と自負しています。
2018年2月に開催された「ぎふジョのアイデアで生まれたすぐれもの」展示会に出展した長財布は紙幣、小銭、カードがすっきりと収納できます。大きく開くようにデザインしてあるため、とくにカードを探す際は便利で、ひと目ですべてのカードが目に入ります。この長財布も作家自身が使い心地を試しては作り直し、現在の形になりました。
市民活動団体に加入
イベントへ積極的に参加
2016年4月には「福和家 福和会」として、大垣市市民活動団体に加入しました。着物のリメイク、健康、大人のぬり絵の3つを事業の柱に活動しています。
着物のリメイク事業では、「おむすび博」や「かがやきライフタウン大垣」といった地域のイベントへ参加し、ワークショップや販売会を開催しています。2018年10月には、完成したばかりの道の駅パレットピアおおので、展示販売を行いました。作家の皆さんにとってはお客様と直接触れ合い、反応が聞ける良い機会になっています。みんなで集まって出かける機会もあり、作家同士仲はいいですね。
風呂が好きなので、温泉に行ったり、自宅でゆっくり湯船に浸かったりしてリフレッシュしています。カラオケも好きで、作品を作るときは毎回音楽が欠かせません。歌う練習を兼ねて、歌いながら手を動かしているときもありますね。
5年間続けた店を閉店
店の復活を目指して
お客様や作家の皆さんから、「いつもニコニコ笑っているよね」といわれることが多いんです。悩みを抱えていたとしても、それを表に出さずに笑っていれば、周囲にいる人たちを幸せな気持ちにできる。「笑顔は無敵」という言葉が私のモットーです。
応援してくれる作家の皆さんはいるものの、経営は厳しく、残念ながら2018年3月に店をいったん閉じました。現在再就職して平日は正社員として働き、休みの日は市民活動団体としてイベントへの参加を中心に活動しています。作品を作る時間はとりづらくなりましたが、趣味として活動を続けることに、職場の上司は理解を示してくれているので、とてもありがたいですね。
もう一度福和家を復活させるのが私の夢。店を通して築いた作家の皆さんとの繋がりを、何より大切にしていきたいと思っています。