土岐商業高校から専門学校の観光学科へ進学し、ドイツの日系企業へ就職。現地での結婚・出産を経て24歳で帰国。子育てもありパートタイムで働いていたときスカウトされ、人材派遣会社の正社員へ。それ以来、人材・人に関わる仕事でキャリアを伸ばし続け、現在はキャリアコンサルタントに。地元高校生と地元企業の縁を結ぶ「高校生しごとラボ」の代表でもあり、キャリアカウンセラー、キャリア教育アドバイザーも務める渡辺さんが自身の軌跡「わらしべキャリア」を語ります。
若年層が育たない現実を知り
キャリアコンサルタントを目指す
ドイツから帰国後は子育てもありパートタイムで働いていましたが、雇用条件や待遇が違っても、正社員同様に「仕事には必ず責任が発生する」という認識で、私は一生懸命に仕事に取り組んでいました。企業の営業事務の仕事をしていたとき、取引先の人材派遣会社の社長が私をスカウトしてくれて2002年、34歳で人材派遣会社に正社員として入社。そこで今度は登録先の大垣市の総合商社から引き抜かれ、37歳で総務部人事担当マネージャーへ転職しました。
ここまでの仕事で、若年層の人たちの多くが、仕事を「目先のお金だけを得るための手段」という認識である現実に違和感を覚えました。それが原点となって「人のキャリア支援ができるキャリアコンサルティングの仕事がしたい」という気持ちが強くなっていきました。必要な知識や技能を身につけ、社会に対する見識をより広めるためにハローワークの採用試験に応募。2009年、ジョブサポーターとして入職したのです。
女性たちももっと主体的に
生きていいと私は思います
私は働きながら2級キャリアコンサルティング技能士を取得。2014年からはあいち子育て女性再就職サポートセンターで、キャリアカウンセリングを担当しました。キャリアカウンセリングは相談者に自己分析や自己理解を深めてもらい、自分のキャリアや人生を語る場。再就職に不安を感じている人だけでなく、自分がいま一体何をやっているのか、世の中でどう役立っているのかがわからなくなった人にも必要なことだと思います。
相談者は子育て中の女性たちで、その多くは働きたいけれども夫や実母、義母など家族の理解や協力が得られず働けない、お子さんを預ける場所がないなど、働けない原因は環境要因がほとんどでした。家庭や職場など、取り巻く環境も相談内容もそれぞれが異なりますし、時間も限られますから、私はその都度、コップを空にするような気持ちで一人一人の相談に集中して応じることを心がけていました。相談者が家庭の事情や悩み、過去の人生を語るうちに自信を取り戻し、課題を整理していく場面を数々見てきましたが、女性のみなさんに伝えたいのは、それまでの仕事や家事・育児の経験があることは社会において汎用性があるということ。もっと自信を持ってほしい。そして、これからの女性たちはもっと自分の人生を主体的に生きていいと思っています。あいち子育て女性再就職サポートセンターでキャリアカウンセリングを担当することで、私のカウンセリング技能はかなり磨かれたと思いますね。
情報サービスサイトを構築
ラジオにも活動の場を広げる
2009年に国家資格キャリアコンサルティング技能士を取得した上でハローワークでの高校支援の職歴を生かし、2016年地元高校の2校のキャリア教育アドバイザーに就任。5月から進路指導室で就活サポートを始めました。いよいよ若年層のキャリア形成と発達を支援する仕事ができると私の心は弾みましたが、企業、仕事の情報がなかなか生徒に伝わず、「これでは、すぐに離職してしまう生徒がいても仕方ない」と落胆しました。高校生からのキャリアプランの構築には難しい課題があることはわかっていました。3年生の夏からの就職活動では遅すぎること、そして先生たちが授業や部活、会議などで忙しく進路指導に割く時間がなかなかないということ。私は本格的就活が始まる前の準備段階を作りたい。生徒たちに「自分は、やり切った」と思える就活をさせたい。それは私がやるしかないと奮起して、翌年に「一般社団法人 高校生しごとラボ」を設立。「今の高校生たちの価値観に合う情報発信を」と、高校生向け企業情報サービスサイト「高校生しごとナビ」を立ち上げました。
このサイトは高校生の地元就職先の選択肢を広げるために、企業が「求人票ではわからない企業の魅力や思い」を伝えるのが目的。企業情報のほか、就活情報やアドバイスなどを動画で配信します。また高卒で地元企業に就職した先輩たちが登場し、現在の仕事内容を紹介して高校時代にしておけばよかったこと、今後の抱負などを語る動画も大好評です。また、内定後の生徒向けにLINE@で新社会人向けアカウントを作り、入社後のフォローも行っています。高卒新卒者の就活に向け、瑞浪市が開催した「オール瑞浪企業フェス」では、高校生が読んでわかりやすい企業情報誌「オール瑞浪・企業フェスガイドブック」も作成しました。瑞浪市内外の6校に配布され、増刷が望まれるほど好評でうれしく思いました。
これからは、在学中から社会に関わるチャンスを生む仕組み作りに向けて動きたいです。職業観・勤労観や自主性を育てるキャリア発達促進を、学校と企業、地域と連携してつくる必要があると考えています。
これまでの人生に悔いはなし
子どもたちにいい社会を残したい
これまでアグレッシブに仕事に取り組み、自分の思う通りに生きてきたので、例え今死んでも後悔はしないほど、精一杯生きている、と自信を持って言えます。いまの自分の仕事や活動は、私の子や孫と同じ世代の若者たちが生きる社会作りにつながっていると思っています。彼らが活き活きと働いて生きていける社会をつくりたいですね。
今はなかなか時間が作れませんが、20代から基礎化粧品や、リップやコンシーラーなどを作っています。マイカという鉱物を使ったものは、自分で色を組み合わせて作ることができるので、作り始めると夢中になり、一人では使い切れない量を、ついたくさん作ってしまいます。この1年でコンサルタントやカウンセラーとしての仕事にPTA活動、地域活動、経営者の仕事が加わって、時々、手一杯になるときもあります。そんなときは運動したり、エステに出かけたりしてリフレッシュします。アロマテラピーも好きですね。アグレッシブに仕事を続けていくには、ホッと一息する時間が必要。仕事とプライベートにメリハリをつけられるよう、心のマネジメントをすることが大切だと思っています。