岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

人は「自然」という
大きな渦の中にいると思う。
その流れの中でやれることを
きちんとやればいい。
私は自然体で生きていきたい


社会福祉法人 白寿会特別養護老人ホーム いぶき苑 副施設長
吉田章子(よしだ あきこ)さん(不破郡垂井町)

【2019年5月21日更新】

1972年、栄養士として岐阜市内の病院に就職し、垂井町の学校給食センター勤務を経て現在の白寿会へ入職した吉田さん。義母の協力もあり、3人の子どもの出産・子育て期間も仕事に打ち込み、40年以上、栄養士の仕事に取り組んできました。「食で健康支援をしたい」という吉田さんの誠実な思いや仕事の成果、管理能力が認められ2017年に同会いぶき苑の副施設長に就任。現在は施設の経営に携わり、人事にも精力的に関わっています。

「楽しく食べたい」という
利用者さんの真意に触れて

 1983年に10年間お世話になった病院から垂井町の学校給食センターに転職しました。献立や給食だよりの制作のほか、当時は有線放送を使った栄養指導などもありました。1年という短期間でしたが、仕事は非常におもしろかったですね。けれどもご縁をいただき、ここ白寿会のいぶき苑に勤務することになりました。
 老人ホームでの仕事は初めてで、病院の治療食とは全く違う「生活の中の食」という概念に最初は相当なギャップを感じました。もちろん栄養バランスやカロリー、病気の具合などに合わせた食事を考案するのですが、利用者の方々は栄養があってなおかつ「楽しく食べられるもの」を求めているのがよくわかりました。その背景として当時の利用者さんは、病状も現在ほど深刻でなかったということもあります。ですから高齢者だからと魚や煮物など、ヘルシーな料理を提供しても、「ビーフステーキやカレーが食べたい」という反応があり、すき焼きも出していましたよ。バイキングやカフェテリア風など食べる演出にも凝って、まるで大名食でしたね。贅沢な献立づくりは私も楽しかったです。利用者の皆さんが食べることを本当に楽しみしていて、利用者さんを含む高齢者の方々の心理を学んだ気がします。

利用者とその家族の思いを
反映した栄養ケアを心がける

 しかし、1995年に給食サービス会社へ委託を始め、2000年に介護保険制度が施行されると施設内の食の方向性が変わって行きました。QOL(Quality Of Life)の維持のための自立支援が理念とされましたので、食は「楽しむ」と同時に「栄養状態の維持・改善」の必要性が高くなりました。私は管理栄養士として利用者さんの栄養マネジメントや栄養ケアを担当するようになりましたが、本音をいえば「子どもは栄養を大事に、成人は健康を大事にした食を。そして高齢者は食べたいものをおいしく食べる」でいいと思っています。ですから栄養士としての自分と吉田章子個人としての自分の狭間には葛藤がありました。だからこそ、できる限り利用者さんとご家族の思いを聞き取り、それを反映した栄養ケア計画を立てるよういつも心がけてきたつもりです。
 介護保険制度の改正により栄養マネジメント・栄養ケアが施行されたのは2005年ですが、このとき管理栄養士資格のない栄養士仲間が大勢仕事を失い、胸が痛みました。のちに私は岐阜県栄養士会の福祉代表理事を3度務めましたが、国の制度とはいえ優秀な人材や居場所を失うことがないように、栄養士には最新の情報、良き指導者や相談できる仲間が必要だと思っています。

現在は経営や人事を担当
後進には早くやりがいを

 私はマネージャー、シニアマネージャー、居宅介護支援事業所の管理者、生活相談室室長、栄養管理室室長などを経て昨年、副施設長を任されました。私がお世話になってから現在に至るまで5人の施設長のもとで仕事をしてきましたが、栄養士としての思いや働きぶりを充分に認めてくださいました。利用者さんやご家族から喜んでいただけることはもちろんでしたが、上司に認められ信頼されるということも大きなやりがいになったと思います。現在、経営や運営に携わる立場にあります。特に人事や採用が主な仕事で、春と秋は採用活動が本格化します。しかし志望者が減少傾向にあり人材確保は最重要課題です。実は娘も同施設の管理栄養士として活躍してくれて、うれしい限りです。職場の環境、風土は良好ですので春に入職する職員たちが早い時期にやりがいを見つけられるのを願っています。

自然体で現役を続けます
挑戦したいこともいっぱい!

 あるとき、これまでの人生を振り返って「人は自然という大きな渦の中にいて、あくせくしてもしょうがない。流れの中でやれることをきちんとやればいい」と運命のようなものも感じ、「自然体」という言葉が浮かびました。同時に「頑張らなきゃ」という気持ちも、自然に湧き出てきた感情であったこと、いつも自然体であったことに気づき、これからも自然体で生きようと思うようになりました。
 将来、介護施設を利用することに不安を感じている方は多いと思いますが、きちんとしたリズムのある暮らしがしたい人には最適ですよ。私は1000人近くの人と出会ってきましたが、家族や友達などの人間関係を良好に保って生きていたらみんな会いに来てくれます。新たな仲間もできる。だからあまり寂しく思う必要がないことを伝えたいですね。私も子どもたちに世話にならないようにと思っていますが、いぶき苑にお世話になれたら幸せです。できれば70歳までは現役で仕事を続けたいですね。
 娘や主人との旅行が楽しくリフレッシュできるときです。手芸や書道が好きですが、今は時間がなくお休みしているので、時間ができたらその再開と、新たに英会話も始めたいと思っています。退職後は関ケ原の名所古跡や山野めぐりのボランティアガイドをやってみたい。無償で仲間と一緒にやれることに挑戦したくて、ワクワクしながら模索しています。