岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

文庫をはじめ、
読み聞かせや
朗読活動に注力
本を通して、
豊かな心を育んでほしい


あまちの森文庫代表、声のドラマの会代表
森優美子(もり ゆみこ)さん(美濃加茂市)

【2019年6月24日更新】

老朽化が進んでいた加茂野連絡所が、「加茂野交流センター(あまちの森)」としてリニューアルオープンしたのは、2016年12月。玄関からすぐの吹き抜けスペースには本棚がずらり。児童書や文庫、専門書など3000冊がそろう図書室「あまちの森文庫」として、地域住民に広く親しまれています。文庫の代表を務める森優美子さんは文庫を管理するほか、読み聞かせやワークショップなどを企画し、交流の場を創出しています。

本棚の有効活用のため
図書室の運営をスタート

 センターのリニューアルオープンに先駆けて、加茂野町まちづくり協議会や社会福祉協議会の方々が施設の在り方や利用方法などについて議論を重ねてきました。地域住民の意見を踏まえ、2階建ての施設内には集会室をはじめ、会議室、調理室や和室などが備えられました。いざ完成して足を踏み入れてみると、壁にはたくさんの本棚が設置されていました。「空っぽの本棚ではもったいない」と、本好きな仲間が集まり、「あまちの森文庫」が立ち上がりました。
 文庫を始めるためには、まずは本を集めなければいけません。本を購入する予算がなかったので、「ご自宅で眠っている本があれば、ご寄付していただけないですか」と、学区内にチラシを配布したところ、たくさんの方々から、いろいろな本が集まりました。美濃加茂市立図書館から譲り受けたほか、関市立図書館が主催する「古本まつり」でも本を集めました。
 文庫の特色として、本棚オーナーのコーナーを作りました。これは、「こんな人に読んでほしい」というおすすめコメントをつけて、オーナー自身で自分の本を並べるものです。
 本は、一冊ずつ拭いて消毒。誰から寄付を受けたかをリストに記録して、児童書や一般書、実用書など分類して並べました。本を読むためのスペースとして開放していただけでしたが、次第に「本を借りたい」との声が寄せられるようになりました。
 メンバーの多くは仕事の傍らボランティアに携わっている人がほとんど。貸出のためにはメンバーが常駐しなければならないことがネックでした。「なんとかご要望に沿いたい」と、メンバーの理解を得て、2018年4月から第2、4土曜日のみ貸出をスタートしました。返却はいつでも可能。大工作業が得意なメンバーが返却ボックスを作ってくれました。


子どもから大人までが楽しめる
ワークショップや読み聞かせを実施

 オープン以来、イベントを積極的に実施。気軽に足を運んでほしいという願いを込めて、講演会は「たちばなし」と名付けています。初回は、エプロンおじさんで知られる別院清さんをゲストに招き、読み聞かせについてお話をしていただきました。また、子どもを対象としたワークショップも実施。夏休みを利用した「ぬり絵体験」は人気を集めました。使用できる色数を限定したぬり絵は子どもよりも、大人が夢中になっていましたね。また絵本の読み聞かせのあと、その絵本に登場したホットケーキを親子で作り、トッピングも楽しんでもらいました。
 2018年の夏は、天乳池(あまちいけ)を約2000個のキャンドルで彩るイベント「ナイトあまち」に協賛。池に面した窓側の本棚を使って特別展示は、当時人気を集めていたNHK朝の連続ドラマ『半分、青い。』からヒントを得て、青と白の表紙の本を棚の左右に並べました。メンバーによる読み聞かせや朗読も実施。子どもから大人までが話に耳を傾けました。

聞き手の想像力を養いたい
将来の夢は地域にまつわる本作り

 アナウンサーだった経験を活かして、視覚障がい者のための音訳に携わったことが私のボランティアデビューでした。美濃加茂市は、朗読を確立したとされる坪内逍遙の生誕地。美しい日本語を学び、物語を声で表現する団体「声のドラマ」の会が1999年に発足し、初期から関わっています。実は、もともと本に興味はありませんでしたが、朗読の活動を通じて本が好きになりました。今では、本を触っているときが一番楽しいですね。
 本は、自分が知らない世界を教えてくれる存在。幼いころからもっと本を読んでおけばよかったと悔いるときもあります。その分、子どもたちにもっと本を読んであげたいと、近隣の保育園や小・中学校に出向いて、読み聞かせをしています。対象年齢がそれぞれ異なるので、本選びに工夫を凝らしています。読み聞かせの時間は10分。朝のひとときを有意義に過ごしてもらいたいと、楽しく人間性にあふれる一冊を選ぶようにしています。
 活字離れが叫ばれる現代。今の子どもたちは、テレビやネットなど目から情報を得ています。ラジオが主流だったころは耳を澄ませながら、自分の頭の中で情景を浮かべたものです。今、私ができることは文字を声で表現することです。読み聞かせを通して子どもたちには想像力を養ってほしいので、私の読み聞かせでは絵を見せません。ですから、聞き手それぞれの頭の中で世界を作ってほしいですね。本を通して、人の心の痛みがわかったり、他人に寄り添えたりする優しい子どもたちが増えることを願ってやみません。
 将来の夢は、地域にまつわる本を作ること。まずは地域の歴史を学びたいと、美濃加茂市地名文化研究所所長の水谷敬氏を招いて勉強会を実施しました。
 あまちの森文庫の「あまち」は「天乳池」から名付けています。少し変わった名前に、何かしらの歴史的エピソードが潜んでいるのではないかと、想像を膨らましているところ。地名から歴史を紐解いて本を作り、いつか皆さんの前で読み聞かせできるといいですね。