「毎日を心地よく、自分らしく...」をテーマに、コミュニケーションや感情コントロールの大切さを多くの人に伝える渡辺佳奈子さん。30代の頃、「人生とは、命とは何か」という問いにぶつかり、「人の心に寄り添える人になりたい」と、心理カウンセラーを目指しました。その後もクライアントのニーズに応えるべく、さまざまな資格を取得。スキルを活かし、一人ひとりが幸せで、社会全体も幸せである姿を目標に活動範囲を広げています。
やりたいことをやって
自分の人生を生きたい
30代前半で結婚後、わずか1年足らずで夫が事故により急死。あまりの悲しみと孤独感に未来が全く見えなくなった私は、「これからは、ただ余生を歩むしかない」と思いこみ、生きる意味や働く意味も見失いました。その後の30代後半は暗黒の時代でしたね。けれども生きることや死ぬことについて散々考えるうちに、このままでは「あの子はかわいそうな人生だったね」と、周りに言われてしまう。そんな人生は絶対に嫌だと思うようになり、「自分にも明日は来ないかも知れない。だったら後悔しないように生きたい。今やりたいことをやろう」と考えるようになったんです。そのときから、私は良寛和尚の辞世の句とされる「散る桜 残る桜も 散る桜」の真意を大事にしています。また前夫を亡くした時、「これ以上の辛いことはない」と父がかけてくれた言葉も辛いときは思い出しますね。自分を信じてくれる家族に支えられ、「自分の人生を生きよう」と前を向けるようになりました。
人に寄り添う仕事がしたいと
資格取得に挑戦しカウンセラーへ
その後、営業事務などの仕事をしながらフラワーアレンジメント資格を取得しました。心が少しずつ元気を取り戻すなかで、思い出すのは毎晩眠れずに孤独な気持ちを抱えて病院通いをしていたあの頃の気持ち。振り返ると、私は誰かに自分の話を聞いてほしかったのだ、と気づいたのです。そこで私は「人の心に寄り添える人」になりたいと、メンタルケアスペシャリスト資格を取得。さらに武蔵野大学の通信教育で心理学を学びながら、緩和ケア病棟や精神科デイケア施設で傾聴ボランティアとしての経験を積みました。
プライベートでは41歳で再婚。美濃加茂市で暮らし始め、自宅でフラワーサロン「ブランプリュス」を開設。さらにカラーセラピー資格も取得し、カラーセラピストとしての活動も始めました。
色育やアンガーマネジメントまで
発展していったキャリア
私は滋賀県出身で美濃加茂市には知り合いや友人がいませんでした。自分の活動を広めるために四苦八苦していた時、たまたまご近所にイベントを主催されている方がいて、その方のお声掛けで地域へ飛び込んでフラワー体験やカラーセラピー体験のイベントを開催できるようになりました。特にカラーセラピーでは子育て中のたくさんの母親から相談を受けました。子育て中に限らず、日本の女性は自己肯定感の低い方がとても多いんです。その原因の多くは幼少期や乳児期にあるといわれていますが、たくさんの方の話を聞くうちにカウンセリングはあくまでも対処法でしかない、ことに気づいたのです。そこで自己否定の根本的な原因をなくすことが必要と考え、子どもの非認知能力である自己肯定感(自分を信じる力)、コミュニケーション力、感情コントロール力を育み高める色育アドバイザー資格を取得し、色育活動を開始しました。
また、子育て中の女性の悩みに、「どうしても子どもを怒ってしまう」「怒ってしまった後悔で自己嫌悪になり、その嫌悪感からまた怒ってしまう」「イライラして感情を子どもにぶちまけてしまう」など、怒りのコントロールができないことがあります。私はママたちの心も健全にしたいと考え、アンガーマネジメントファシリテーター資格も取得しました。
講師活動でのやりがいや魅力
身近な先生でありたい
アンガーマネジメントの講師活動を始めると、地元の高齢者施設から、看護師や介護士の不適切介護の予防やストレスマネジメントを目的としてアンガーマネジメントを取り入れたいと講師依頼が舞い込みました。私には講師の経験がなかったので、不安な気持ちがありました。しかし施設長が「伝えたいという情熱や、思いの強い人の言葉はみんなの心に届くもの」と私の不安を受け止めてくださいました。それから2年が過ぎ、昨年も研修会を実施しています。「職場の雰囲気が変わった」、「風通しが良くなった」などの声も聞かれます。その成果や活動が認知されて、現在は各務原市による女性支援講座や県内の介護施設や病院、母親学級などから講師のご依頼をいただけています。最初は不安があった講師業ですが、まずはやってみる、たとえ失敗してもその経験も次への学びであると日々感じています。そうしたチャレンジができるのも「失敗してもそれで終わりではない、次に頑張ればいい」という自分を信じる力を育ててくれた両親のお陰だなと思いますね。
アンガーマネジメントは、一回の研修で感情コントロールができるようになるというものではありません。心理トレーニングを重ねることで成果が現れます。次の研修までの期間が空いてしまうと意識がどうしても薄れてしまいます。昨年の2月からは、毎週木曜日にメールマガジンを発信するサービスを始めました。それを会議等に導入して業務改善に役立てている機関もあり、とてもうれしく思っています。この活動で私の心にも変化があり、もっと社会に認められ、貢献したと実感できる仕事がしたいと考えるようになりました。企業や行政機関へも研修活動の範囲を広げたいと思います。どこで話しても、講座の終了後に、聴講された方々が気軽に質問や相談に声がけしてもらえるような、身近な存在でありたいですね。