岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

医療・介護業界の離職者を減らしたい
子育てに悩む母親を支援したい
コミュニケーションを通して
課題解決に取り組む


日本強み研究所 所長、NPO法人 ママライフバランス 理事 兼 岐阜支部長
吉田淑恵(よしだ よしえ)さん(多治見市)

【2020年7月10日更新】

医療・介護業界で働く人に向け、コミュニケーションスキルを高める講座を開催する「日本強み研究所」の吉田淑恵さん。医療業界に従事していた自身の経験をもとに、離職者を減らす活動をしています。また、子育てに悩む母親をオンラインで支援する「mamaライフバランスプロジェクト」の設立・運営にも携わります。仕事と子育て、どちらも自身が経験した悩みであり、同じ境遇の人を救いたいと尽力しています。

全力で取り組んだ仕事と子育て
人生の転機となる挫折を経験

 医療・介護業界で働く人に向けたコミュニケーション講座を開催する「日本強み研究所」。そしてオンライン子育て支援「mamaライフバランスプロジェクト」の岐阜支部長を務めています。
 私には、臨床検査技師として医療の現場に従事していた経験があります。病院から届く血液を検査する検査室が仕事場でした。しかし、東京・大阪などの現場に勤務して5年ほど経った頃、検査後の血液を患者間で取り違えるミスをしてしまいました。大事には至らず、病院や患者さんに謝罪し、周囲は受け入れてくれました。しかし、私は「またミスをしてしまったらどうしよう」と怖くなり、医療業界から離れてしまいました。コミュニケーションを学ぶ今でこそ気付けましたが、あの時の失敗はもちろん自分の責任でもありますが、職場内に良好なコミュニケーションがあれば防げたのでは...とも思います。
 2005年、結婚を機に夫の地元である土岐市に転居し、2009年より多治見市に移りました。現在の仕事に進むきっかけは長女が小学4年生の頃。担任の先生から「お子さんは何でもできるのに、自己肯定感が低いですね」と指摘されたことでした。
 私は幼い頃から比較的、苦労せずに何でもできたので、出産後に母乳が出ないことで大きな挫折を感じてしまい、産後うつを経験しました。「自分はダメだからこそ、長女にはきちんと接しないと」と考えてしまい、全力で育児に取り組み過ぎたことが、長女にとって負担だったんです。

親子向け講座の講師として活動
助言を機に企業向け講座の道へ

 長女の自己肯定感を高めたいと、講座を探しました。すると、岐阜県で活躍されている「オフィスコトノハ株式会社」の北平純子さんのところで「子ども未来がっこう」という講座が実施されることを知り、長女と親子で受講しました。「自分に自信を持つこと」「私が長女を信じてあげる大切さ」を学び、受講後は長女の性格がより前向きに変化しました。
 その後、「子ども未来がっこう」の代表理事・斎藤直美さんから「ストレングス・サイコロジー(強み心理学)」を学び、私と同じように子どもとのコミュニケーションに悩む母親を救うため初代認定講師になりました。講師として同じ道を志す人への指導の他、教材開発にも取り組みました。
 こうして活動を続ける中、知り合いから「自分の講座を発表するセミナーコンテストに参加してみないか」と誘っていただきました。私は自身の経験をもとに考案した「ガミガミ育児から抜け出す方法」という講座をコンテストで披露。すると、コメンテーターや来場者からのアンケートで「母親へのアドバイスより、企業向け研修の方が向いているのでは」という意見をいただきました。母親と同じ目線でのアドバイスより、講師と受講生という明確な立場で伝えた方が、より響くのではと助言をもらったんです。
 しかし、企業向けの講座は未経験。それでも、自分がいた医療業界向けなら話ができると思いました。挫折して離れた医療業界や介護業界は「ミスをしないで当たり前」の現場。だからこそ萎縮してしまう人もいます。私のように「ミスが怖い」と思いながら働く人を減らしたいと思ったんです。

医療、介護の仕事現場から
離職者を減らすことが狙い

 企業向け講座を始めるため、半年かけて起業方法や講座内容を学び直しました。「日本強み研究所」として、オリジナル講座を開催、医療・介護の職場を回る研修を2019年3月から始めています。受講後、年単位で月1回、計12回のコミュニケーションに関する講座を実施。コミュニケーションというと、「いかに伝えるか」のスキルアップを連想しがちですが、私の講座では聞く姿勢から伝えます。否定されない環境を作ることで、業務内容を見直す意見が出る。それが職場環境の改善につながります。人間関係が退職理由の多くを占めますが、コミュニケーションは学校で教えてくれません。私は業務に支障がない範囲で、一番心地よい距離を探すことが大事だと思います。
 私が考案した講座を受けてくださった方が「講座が楽しい」と言ってくださるのが励みです。

オンライン子育て支援で
母親の負担を減らす取り組みも

 最初にコミュニケーションを学んだ際に考えていた「悩む母親の力になりたい」という取り組みにも力を入れています。スマートフォンやパソコンからアクセスできるオンライン子育て支援「mamaライフバランスプロジェクト」、通称「ママバラ」です。代表の沖田厚子さんたちと立ち上げから携わり、2018年9月にクラウドファンディングを実施して、2019年3月からスタートしました。
 「ママである自分」と「個人としての私」の調和が目的で、母親の責任を果たしながら、一人の人間としての生きがいや充実感を得てほしいと考えています。
 ママバラでは、子育て経験のあるメンバーとのおしゃべりや悩み相談が在宅ででき、ウェブサイトでは子育ての情報格差をなくそうと、さまざまな情報を発信しています。児童虐待防止や産後うつの予防、そして少子化にも歯止めをかけることが目的。会話ができるオンラインテレビ会議の参加者からは「家族以外と話したのは1週間ぶり。リフレッシュできた」という声や、「専門家の指導とも違い、ママ同士で悩みを共有できた」という感想を寄せてもらっています。