岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

仕事を決めるとき
頭に浮かんだのは家族だった
仕事を介した地域貢献も
我が家のDNAの成せる業


ひだまりほーむ 株式会社 鷲見製材 常務取締役 経営企画部 部長
石橋明世(いしばし あきよ)さん(岐阜市)

【2020年8月 3日更新】

90余年の歴史を持つ鷲見製材の三代目社長の長女に生まれた石橋明世さん。独立心が旺盛で高校から両親の元を離れて暮らしましたが、自分にとって一番大切なのは家族、と地元に戻ってご主人とともに家業を受け継ぎ、住宅事業部「ひだまりほーむ」の大躍進に尽力。現在は広報や販促業務で経営を支えつつ、その仕事を地元や地域の活性化にもつなぎ、自社のモデルハウスやカフェにて子育てママの支援活動や地元の人々が憩うマルシェの開催も行っています。

寮生活や一人旅を経験し
家族の大切さに気づく

 郡上市白鳥町に生まれ育った私は早く都会に出たくて、バスケットボールの強豪校である岐阜の高校へ進学し寮生活を始めました。大学進学で高校生活とは一転し、厳しい規律や人間関係から解放されたら何をしていいのかわからなくなり、とりあえずバイクの中型免許を取得して各地へ一人旅に出ました。北海道でバイクが故障し、じゃがいも畑で働き、修理代を払って帰ってきたことも。
 ネパールをバックパッカーで旅をした際、危険な目にも遭いましたが、現地でいろんな人に助けられ、その地で頑張っている人に出会い、異文化や暮らしを肌で感じる中で、私はさまざまな人の生き方や価値観に興味を抱き、人が好きになったと思います。また、高校・大学と7年間、自由にやりたいようにやらせてもらい、自分にとって一番大切なのは家族だと気づくことができました。なので私は家族や家業の役に立ちたいとまずは住宅会社の営業職に就き、勤務地の金沢市で同期入社の主人と出会いました。

実家の住宅事業部に入職
自分が誇れるキャリアを取得へ

 1999年に鷲見製材では地域の木を活かし、森を守り、地元職人の技を活かす地域循環型の家づくりをする住宅事業部「ひだまりほーむ」を設立。主人と私は設立とほぼ同時に入社しました。親に甘えず、他の社員の倍は働こうと二人で努力し、木材の見分けもつかなかった私たちでしたが、必死で建築を一から勉強しました。前職では「女なんかに」といわれたことも。それが悔しかったので自分が誇れるキャリアがほしかった。だから勉強は辛かったけれどがんばれましたね。
 そして2003年には拠点を岐阜市に移して建物の完成見学会も開始。2005年に初の住宅展示場をオープンすると受注棟数が徐々に増え、社員も増員し、「ひだまりほーむ」の家づくりは多くの方からご支持をいただけるようになりました。

仕事と家事はタスク管理で
ストレスフリー

 そのさなか、私は2004年に二級建築士の資格を取得し、長男を出産。当時は岐阜市に引っ越しをし、アパート暮らしでしたから、両親や兄弟が側にいるわけでもなく、子育ては孤独だなあ、と思いました。その経験は現役ママのスタッフへのアドバイスにもつながっています。車での送り迎えをする15分で仕事、もしくは家事モードへと自分を切り換えることを覚えて子どもたちの幼少期を乗り切りました。
 2010年に本社が郡上市から岐阜市へ移転し、主人が四代目社長に就任。私も常務取締役、経営企画部部長に着任して現在に至りますが、中3と中1の息子のスポーツクラブや塾への送り迎えで、息子たちをクラブへ送って待つ間、喫茶店で過ごす時間で仕事や家事について頭の中の整理をしています。
 実はタスク管理好き。忘れないようにタスクはその場で書き留めますが、自分のスケジュールがわかっていないのが嫌なので、一週間分の自分と子どもたちの行動と、一週間分の食事の献立を考えてスケジュール帳で整理します。それが達成できるとスッキリ、ストレスも解消されます。
 夫婦の職場、職業が一緒なのでプライベートの会話も自然と仕事の話になりますね。趣味は特にないけれど、息子のクラブの試合は楽しみですね。そして最近のニュースは子犬の「つき」が我が家の一員に加わったことで、隣りにいるだけで癒やされています。

地域貢献の精神は脈々と
恩送りで人材育成に臨みたい

 創業者が娯楽のない郡上市白鳥町に大島座という芝居小屋を建てたのを始まりに代々、地域や地元を思うというDNAがあります。それは私にも脈々と受け継がれていて、岐阜展示場では「暮らしの陽だまり市」というマルシェを毎月8日に企画開催し、8周年を迎えました。自分の子育ての経験から敷地内には子育て中のママが集まり情報交換ができるカフェ「Hidamari café」をオープン。自然派離乳食づくりや味噌づくりのほか、梅干つくりなどの暮らしの歳時記にちなんだ教室や、化学調味料を使わない料理教室なども開催。散策が楽しめるお庭もあり、地下70mから組み上げた地下水で潤う池は夏になるとプールとして子どもたちに開放しています。ママたちは少しゆったり過ごしながら、子どもたちは自然が感じられるなかで伸び伸びとしてもらえたら、と思います。
 私は出来合いのおかずに抵抗があり、忙しくても食事は自分でつくります。でも化学調味料が少なく体にいいものだったら買いますよ、私も。そこでいま食べて安心安全な地産地消の惣菜屋の開業を構想中です。
 そして年内には「ひだまりほーむ」は名古屋へ進出し、岐阜展示場のような複合施設を開設します。今後は人材の確保と育成が課題ですね。また振り返れば、自分はお客様、スタッフや協力いただいた職人のみなさんに育ててもらいました。その感謝の気持ちは恩返しではなく、後進へ恩送りしたいと思います。